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ビビりのワタル? うん、そう、オレのこと。  作者: 伊藤宏


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周りが勝手に動いてく。亜由美は忠告してくれるけど、正直、なんかどうでもいい。取り巻きなんて、迷惑なだけだ。 by 検見川美貴

陰の支配者、検見川美貴。

誰もが恐れる美貴にも、対等にしゃべりかけてくる友達がいた。

寺澤亜由美だ。

彼女は美貴に、藤木伸也の “おかしな動き” を伝えにきた。

 「本気で見張ってるようには見えなかったね」

 亜由美はそう言うと、まっすぐに私を見返した。

 真意はわからないけど、嘘を言っている目じゃない。こいつは嘘を吐くとき、ほんの少し右の瞼が震える。

 なぁんてね。

 そんな簡単に見抜ける技、あるわけがない!


 「じゃあどう見えるっていうの」

 「どうって……、何か企んでる」

 「って、何を」

 亜由美が目を外した。

 視線を移した先は精巧な人体模型。普通の女子なら気味悪がって目を背ける、内臓が露わになった、あれ。


 「藤木たち、茜サイドに付く気だと思う。でなきゃ、あんなゆるいチェックしない。まあちょこっと修正はしといたけど」


 私のことを「検見川さん」って苗字で呼ばないのは亜由美だけだ。

 中学んとき少し仲がいい時期があって、名前で呼び合ってた。今でもこうして情報くれたりするから、友達関係が切れたってわけじゃない。でも親密ってほどでもない、微妙な関係が続いてる。


 ふうっとため息を吐いてみる。

 どうとでも取れるように。

 裏切られた悲しみ、拗らせた何か、或いは哀れみ? それとも残忍な仕返しへのためらい、とか、いろいろ。

 それをどう解釈したのか、亜由美が口にしたのは伸也のとった行動への不審、そして不満だ。


 「藤木は、美貴を裏切ろうとしてんのよ」

 「私は別に」

 ……。

 それならそれでいい。

 困るのは伸也自身だ。

 「あいつ、普段から美貴にぺこぺこしてるくせに」

 「私は何も言ってないわ」

 「だから余計に腹立つの」

 あれ?

 もしかして。

 そういうこと?

 亜由美は、伸也のことが好きなの?

 思わず笑ったら思いっきり睨まれた。

 こわ!

 やっぱり違う……、逆? 軽蔑してる?

 わかんないんで、私だけが知ってることを言ってみる。

 「伸也って意外と堅実派なのよね、知ってた? あれで大学目指して、家じゃ真面目に勉強してるんだって」

 亜由美は何を思ったかすうっと胸を膨らませて立ち上がった。

 そして試薬の保管棚の前に立ってふうぅぅぅっと長い息を吐いた。

 「だったら真面目に優等生してりゃいいじゃん」

 放課後の理科準備室に亜由美の声が響きわたった。

 「青春に悩みは付き物でしょう」

 「なんか藤木伸也って、好きじゃない。美貴には悪いんだけどさ」

 どうやら伸也に抱いてる気持ちは()()の方だ。

 亜由美は私を見てゆっくりと首を振り、試薬の入った棚を見つめた。こわ。


 亜由美は思い込むと内にこもる癖がある。

 昔からこうだ。

 誰も信じなくなる。

 周りを全部敵にして、敢えて孤立する。そうしないと自分が立っている場所が分からなくなるんだ。

 

 亜由美が話を元に戻した。

 「茜が調子づいてんのは、あたしも気に入らない。あんな浮ついたオーディションだかコンテストに出て、決勝に残ったからって」

 「そうよね」

 「うん、みっともない」

 「そうね」

 亜由美は、カワイいを目指して見た目を磨く女子を蛇蝎(だかつ)のごとく嫌う。私だって見た目だけの女なんて、嫌いだ。


 でも。


 私が予選で落ちたのは本当だ。

 でも、別に悔しくない。これは決して強がりではなく。あんなの亜由美の言い分じゃないけど、みっともない。

 応募するんじゃなかった。

 改めて歴代の優勝者見たらちゃらっちゃらのアイドル系ばっかりだもの。あれじゃ優勝したって仕事はテレビの賑やかしだし、写真集だってきっと、意味もなく水着だ。決勝まで進んで辞退っていうのはやってみたかったけど、まあ落ちたものはしょうがない。


 私が目指しているのは世界で活躍できる王道のファッションモデル。

 だからスタイルだって見かけだけじゃない。

 アスリート並みに体幹を鍛えてるから重い衣装を着てもターンで軸がぶれることはないし、ウォーキングやポージングだってプロの先生に習ってる。

 憧れの(たちばな)琉生(るい)さんだって、イタリアで認められるまではオーディションに落ちまくった。日本の、かわいい子コンテストに落ちるのは、むしろ勲章だって思ってる。


 「美貴だっておもしろくないでしょ」

 茜なんて別に、どうでもいい。茜潰しにいきり立ってるのはゆかりや早紀だ。

 でも。

 少しだけ口元に笑みを乗せて見せたら、亜由美は納得したみたいだ。


 ルリーGは私が本命で狙ってるワールドスターコンテストの冠スポンサー・渚エンタープライズのブランドなんだ。

 渚が運営するルリーシリーズのセンスを理解しようと思って身に着けてただけなのに、それをあいつら、「メンバー以外着用禁止」なんてくっだらないルール作って。

 本当はいい迷惑なのよ。

 なんか小さい女みたいでさ。


 「まあ、一応、忠告はしたからね。藤木ひとりじゃ何もできないとは思うけど」

 亜由美はそう言って理科準備室を出ていった。

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