表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ビビりのワタル? うん、そう、オレのこと。  作者: 伊藤宏


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/37

いろんなことがいっぺんに起きちゃって、もうわけわかんない。これからどうなるの? by 西園茜

美野里の裏切りがどうしても信じられない西園茜。

なぜ?

何があった…。

そのことを考えると、茜は、何にも集中することができなかった。

 信じらんない。

 ていうか、信じたくなかったよ美野里。


 でも、

 本当なんだ。

 ほんとだって分かったら、なんかやりきれない。元気印から元気取れちゃった。もう抜け殻だよ。

 

 あの日電話で「味方んなってくれるよね」って言ったら美野里、

 「うぅん」て口ごもった。

 あ、これウケ狙いだなって思ったし、まじちょっとウケたしさ。


 でもさ、反検見川の仲間集めはやってくれてた。

 うん。

 あれは振りなんかじゃない。ほんとだった。確認したもん。

 

 てことは何。

 逆転さしたときのショックが大きくなるように?

 それとも、ようす見てどっちにも転べるようにってこと?

 そんな狡猾(こうかつ)な女だっけ、中島美野里って。

 ……。 

 いや、違う!


 どっちかっていうと不器用だし、だからか、友達の数はそんな多くない。心を開くとめっちゃ明るいけど、そうでない子からは冷たく見えるくらいにそっけない。まあ、簡単にいうと人見知りってやつだ。


 で、内向的でちょい暗めっていうのが人見知りの定番だけど、美野里の場合はちょっと違う。内向的なくせに根がめっちゃ明るいっていう珍しいタイプだ。

 だから一緒にいて楽しかった。

 バカ飛び越えて怒りそうなこと言ってもぜんぜんオッケーで、分かり合えてるって思ってた。


 それだけにさ。

 


 「西園さん」

 あ、いけない。授業中だった。

 「ホームワークやってきたでしょ。問い7のA。答えてください」

 慌ててスクールバッグを開ける。

 周りの子が笑ってる。

 くそ、やってきたよちゃんと。社会・経済ってこう見えてけっこう好きなんだ。


 でも先生は待ってくれなかった。

 「もういいです。じゃあ大出さん、代わりにお願い」

 はい、と明るく返事した健太君が、朗々と模範解答を読み上げた。




 頭が授業に向いたのは結局その一瞬だけだった。やっぱり美野里のとった行動が頭から離れない。何をやってても上の空って感じ。


 友達が教室歩き回ってるの見て、初めてチャイムが鳴ってたって気付いたくらいだもん。

 「茜、終わったら翔太たちとカラオケ行くんだけどさ、行かない?」

 「げ、たちって何。野球部?」

 「そう」

 聞いただけで臭そう。

 「なに、練習さぼり?」

 ゆかりは「なに言ってんの」と言って笑った。で、

 「もう終わったよ、公式試合は全部。あいつらずっと練習漬けだったからさぁ、ぱあっとやりたいんじゃないの?」


 ゆかりは野球部とは関係ない。野球部にはちゃんと男子のマネージャーがいる。それも雑用っぽいんじゃなくて頭脳的スコアラーっての? 敵チームのデータ分析やったり、もちろん自分とこの選手の癖や状態なんかも把握して作戦に生かしたり。

 そういう面ではうちの学校は結構進んでるって聞いたことがある。

 で、ゆかり曰く。「あたしは癒し担当マネージャーなの」って、意味わからん。


 「せっかくカラオケ行ってもさ、男ばっかじゃ盛り上がんないじゃん。だからね、彩りってのにぃ、なってあげたいわけよ」

 今はそういう役割の決めつけはアウトだって、倫理社会の先生が言ってた気がするが。

 「ごめん、歌、だめなんだ」

 「ウソ、こないだのあれ、あの何とかってコンテスト、歌唱も入ってんじゃん」

 「あんなの、予選は動画審査だもん、多少盛ってるし」

 「でも通ってんだもんね、決勝メンバーに残ってるってことはさ、やっぱ上手いってことじゃん」

 「偶然だよ偶然」

 それはほんとにそう思ってるけど、決勝に残ったって知って、胸が高鳴ったのはほんとだ。

 もちろんそれ以上なんて望んでない。

 決勝メンバーはダンスもボーカルもスペシャルレッスンを受けてる強者ぞろいだし、美だってストイックなくらい追求してるのが分かる。


 でも。


 その最終メンバーに自分が入ったのは事実だ。とりあえず、入るだけは入った。

 今でも信じられない。

 いったい自分の何が光ってるんだろう。


 「いいじゃん行こうよ」

 「カラオケなんて誰でもいいじゃん。あ、早紀ちゃんとかは?」

 「もう誘った」

 「貴恵は? あの子塾ないよ」

 「ああもう。ノリ悪いな。こういうのってさ、茜を元気づけようってのもあるんだよ」

 よく言うよ。

 美野里の前は、先頭立ってあたしのことハブってたくせに。

 「ごめん、てかありがと。でも今ちょっと盛り上がる気分じゃなくってさ」

 突っかかてもしょうがない。平和が一番だ。

 「そっか。じゃあしょうがないか。また誘うねぇ」

 ゆかりはあっさり諦めて去っていった。


 知ってる。ゆかりが女子集めに張り切ってる理由。

 自分が翔太君の隣にいてラブラブしたいからだ。占有したいんだ。カラオケの個室では、男女のバランスがある程度とれてないと、そういうわがままは通らない。


 やだやだ、こんなお誘い。たとえ元気でも乗りたくないや。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ