計画性は必要です③
「ごめんなさい、考えが足りなかったわ」
3回連続同じ席に通されたマリーは、椅子に座るなりジフにそう言って頭を下げた。
「辞表は取り下げることにしたの?」
ジフの問いにマリーはフルフルと首を横に振った。
「今さらそれはできないわ」
マリーはキッと眦をあげながらそう言った。
「じゃあ、どうするの?」
「就農する気持ちに変わりはないわ」
「そう…」
目を見開きながら決意を述べるマリーに頷きながら、ジフは2人分のサンドイッチと紅茶を注文した。
「果物って簡単には実はならないのね…」
マリーは紅茶を口にして一息つくと、シュンとしてそう言った。
「1ヶ月もあれば、実は採れるかと思っていたわ」
「まさか!」
ジフは少し呆れながらマリーを見た。
「じゃあ、果樹じゃないのにするんだね?」
「…果樹を作りたい、と言う気持ちに変わりはないわ。やっぱり作るなら自分が食べたいもの、好きなものがいいの。オレンジにしようかと思っているわ」
「ちなみに、ちょっと聞きにくいんだけど…」
ジフは少し声をひそめて尋ねた。
「マリーはどのくらい貯金しているの?」
「…100万マルくらい…はあるわ」
「3年働いてない割にはよく貯めているとは思うよ。でも、それじゃあ厳しいこと、わかるよね?」
マリーはコクン、と頷いた。
「早く稼がないと半年も過ごせないわね。でも、今からオレンジを植えても、半年以内に収穫できないのよね…。だから、何か仕事を別に探さないといけないわ」
困ったわ、とマリーは呟く。
「うん、生活費の問題もあるね。それに、新たに物事を始めようとするなら、そこに結構お金もかかってくるよね」
マリーは、はっと顔を上げた。
「すっかり抜け落ちていたわ。そ、そうよね。考えたら当たり前だわ。な、なんてこと!」
焦るマリーに、ジフは落ち着いて、と声をかけた。
「マリーは、お勉強はできるのに、結構肝心なところは抜けているよね」
ジフの言葉にマリーは反論できずに俯いた。
「ひとつ、提案があるんだ」
そう言って、ジフは一枚の紙を取り出した。
「少しここから離れてはいるけど、マリー、ここに行ってみない?」
そこに示されていたのは、マリーが就農を考えていた地区の隣の地区。
示された地図を見ながらマリーは不安げに首を傾げた。
「ここに俺の友人の知り合いがいるんだけど、果物を作っているらしい。何を作っているかまでは聞いてないんだけれどね」
ジフの言葉にマリーは顔を上げた。
「一回、見てみたらどうかな?」
「…ジフ、ついて来てくれる?」
「全くしょうがないね」
ちょっと心細そうなマリーにジフは笑いながら、いいよ、と応えた。
「ありがとう」
マリーが3日後のジフの休日に約束を取り付けると、その日は解散、となった。
お金は、1マル=1円のイメージです。
まだ、ダメダメなマリーですが、応援していただけましたら幸いです。