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第7話 町の人々

「あら、あんたあの犬を連れていた魔女かい」

「シロちゃんいないの」

「犬はどうしたの。何かあったのかい」

「ねぇ、シロちゃんは、どこ」


 獣人と人が住む町に行く前、私は少し長くこの町に滞在していた。その間に町の人々は、私のことを、シロで覚えていたらしい。


 私がシロを連れていた魔女だとわかったとたん、遠巻きにしていた人々は、あれやこれやと困りごとを私に相談にきた。


 私は前、この町に滞在していたときと同じ生活に戻った。困りごとに応じて、膏薬や、薬草茶を渡し、対価をもらう。ときにはただ、話を聞いてやるだけだが、人は満足して、対価を置いていってくれることが多い。魔女とは不思議な商売だ。


「あの子がいないと、何か寂しいねぇ」

町の人達の言葉に、私は曖昧に頷くしか無い。シロは私と一日中一緒にいた。客の相手をしていようがいまいが、関係なかった。人懐こいシロは、町の人々になつき、甘え、撫でてもらって喜んでいた。


「ねぇ、シロちゃんは」

お使いに来た子供達は、お使いそっちのけでシロのことを私に聞いてきた。

「別の町に暮らしているよ」

「えー、つまんない」

文句を言う子供達に、シロと子供達が一緒になって走り回っていた姿を思い出した。


「そうだね。つまらないね」

シロは賢い犬だった。黄色い目でじっと私を見ながら、私の話を聞いてくれた。言葉を発することなどなかったけれど、全身で私と会話した。

「つまらないね」


 また、一人で旅をするだけだ。話しかける相手も居ない、私を見つめてくれる黄色い目と、目があうこともない。擦りついてきてくれる暖かい毛皮はいない。

「つまらないけれど、シロちゃんは、きっと遠くで元気だよ」


 身なりのよい獣人に(かしづ)かれる立場だ。どうして仔犬の時、雨に打たれてずぶ濡れで震えていたのかはわからないけれど。明日のこともわからない旅暮らしよりはましだろう。


「また連れてきてね」

どうやら、私の言っていることを理解していないらしい子供達に、私は苦笑した。



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