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第21話 迎え

 二匹と一人と一頭で、旅をするつもりだったが、突然同行者が増えた。リンクスさんの仲間、シロの両親の依頼でシロを探していた獣人達と、合流した。


 私が見た、黒髪の痩せた男達は、皆兄弟で漆黒の毛皮が美しい犬の獣人達だった。


「知らないとこに行くのは嫌」

私の抱きついて我儘を言うシロに、スラリとした体躯の彼らは脱力してしまっていた。


「知らないじゃなくて、覚えていないだけでしょう。シロちゃん、ね、お家まで一緒だから、ね」

狼の姿で我儘を言っていたシロが、私を見上げた。


「魔女はシロちゃんと一緒にいてくれる」

「はいはい。シロちゃんが、お家に帰るのに、ちゃんとついていってあげるから」

シロが、自分をシロちゃんというときは、私に甘えたいときだ。鼻を鳴らして、擦り寄せてきたシロの頭を撫でてやる。


 意識して、帰ると私は繰り返しているが、シロは、いつまでたっても、行くという。シロは、家族が暮らす国に、本来シロが居るはずの場所に帰るのに、帰ると思えないのだ。シロを攫った人々が、シロから奪ったものを思うと、私は少し悲しくなった。


 彼ら、漆黒の犬の獣人達は、人で言うところの、騎士や護衛といった立場らしい。馬車を用意してくれていて、私とシロは、馬車に乗ることになった。リンクスさんは、御者台の横で丸くなっている。時々乗せてもらう荷馬車とは、比べ物にならないくらい快適な乗り心地だった。


 驢馬と離れがたい私の気持ちを汲んでくれた彼らは、驢馬も旅の一行に加えてくれた。彼らが乗る馬の後ろを、驢馬がついてくるのは可愛らしい。


「魔女、魔女、どこかに行かないよね。シロちゃん置いていかないよね」

シロの故郷である国に近づくにつれ、シロは、ますます私に甘えるようになった。一度置いていったのが、よほど堪えたらしい。


 馬車に乗るようになり、シロは人型を選ぶようになった。それでも夜は、狼になる。冬毛のシロはとても暖かくて、手触りも良い。私はシロで暖を取った。毎晩、シロは私の寝床に潜り込んできて、私がどこかに行ってしまわないかと確認する。


 旅に生きる魔女が、一つ所に留まることなどないのに。人の国にすら定住できない魔女の居場所が、獣人の国にあるわけがないのに。シロが甘えて繰り返す言葉に、私は勝手に傷ついていた。


「行かないよ」

シロを落ち着かせるために、私は嘘を繰り返した。

「魔女は、シロちゃんと一緒」

「そうだね」

シロを仔犬と思っていたころからの付き合いだ。


 シロは、もうすぐ終わる関係を信じている。申し訳なく思いながら私の口がつむぐ嘘に、シロは嬉しそうに鼻をならし、私の顔を舐めた。


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