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「……え?」
開口一番、慈雲から告げられた言葉に、黄季は思わず呆けた声を上げていた。
「長官、今、何って……」
「永膳は、冥翁と手を組んでいる」
対する慈雲の言葉は、どこまでも明瞭だった。
片手を卓に、反対の手を己の腰に置いた慈雲は、どこか迷いが吹っ切れた顔で黄季と氷柳を見据えながら、もう一度昨夜己が遭遇したという事態を端的に口にする。
「昨夜遅くに襲撃を受けた。場所は泉仙省から医局簡易休憩室まで抜ける間の回廊。襲撃者は貴陽だったが、中身が明らかに違った。それを質したところ、相手は己が冥翁であることを認めた」
「ちょっ、と、……そ、れは」
何度聞いても、何からどう反応すればいいのか分からない。
──襲撃? 長官が? 王城の中で? 煌先生に? いや、それよりも冥翁って……!
「お前は」
理解が追いつかない黄季は、碌な言葉も口にできないまま呆然と慈雲を見つめ返す。
そんな黄季を我に返らせたのは、傍らから聞こえた氷柳の固い声だった。
「お前は、無事なのか」
反射的に氷柳へ視線を投げれば、氷柳は凍り付いたように慈雲を見つめていた。その顔は常の無表情のままだが、強張った顔からは明らかに血の気が引いている。氷柳も慈雲の言葉に、少なくない衝撃を受けたらしい。
「この通りだ。かすり傷ひとつ負っちゃいねぇよ」
だが襲撃を受けた当人であるはずの慈雲は、言葉通りにピンピンしていた。それどころかその表情はケロッとしていて、むしろ昨日までよりも顔色は良いように思える。
──え? 襲撃されたんですよね? しかも、冥翁に意識を乗っ取られた煌先生に。
襲撃現場となった回廊の様子は、今朝ここに来るまでの間にチラリとだが見ていた。
まさに『大破』という言葉がふさわしいありさまに、黄季が『うわぁ、一体何が起きたんだ』と呑気に目を見開いた瞬間、同じ物を見た氷柳は無言で黄季の腕を取り、長官室へ足を向けていた。
恐らくあの時点で、氷柳にはあれを為したのが慈雲で、さらに言えば交戦跡だということも分かっていたのだろう。黄季を引っ張ったまま長官室へ足を踏み入れた瞬間、氷柳が上げた『慈雲!』という呼び声は、それを裏付けるだけの緊迫したものだった。
──それに長官が返した言葉がいつもと変わらない『おー、はよ』だったせいで、氷柳さんはしばらくそのまま固まってたわけだけども。
さらにその流れで付け加えられた説明により、黄季と氷柳は顔色を失う事態になっている。
「そ、その。長官、あの……」
『天業の乱』。その仕掛人こそが『冥翁』という名で呼び習わされていた呪詛師であったという話は、黄季も耳にしている。
その冥翁は郭永膳と刺し違える形で討伐された。討伐が成されたから都に蔓延っていた呪詛は打ち破られ、『天業の乱』は終結した。
そうでないと言うならば、この沙那の都が辿ってきた八年分の歴史が根底から覆される。……いや、郭永膳が蘇った、大乱の裏で暗躍していたという時点でかなり根底は揺らいでいたわけだが、これはそのこと以上に事の前提が覆る事態だ。
──郭永膳と冥翁が協力関係にあった? さらには郭永膳の陣営に引き込まれた煌先生の体を、冥翁が使っている?
一体いつから郭永膳と冥翁は協力関係にあったのか。一体どこからどこまで、あの大乱に郭永膳の思惑は絡んでいると言うのか。
それ以上に、貴陽の体を冥翁が使役していると言うならば、貴陽自身の意識はどうなってしまったのか。
──郭永膳が蘇ったのは、死者を復活させる禁術、反魂法を使ったからだって。
もしも冥翁も郭永膳と同じく、一度死んでいるならば。冥翁の復活が、貴陽の肉体を用いたものだとするならば。
──だったら、煌先生自身は……
何より、その事態を目の当たりにしてしまった、慈雲は。そのことを一体どう捉えているのか。
「貴陽のことは、一回頭から締め出せ」
そのことを何と口にすればいいのか分からず、黄季は結局中途半端に口ごもる。
だが誰よりも貴陽の安否に心を痛めていたはずである慈雲は、黄季の心配を切り捨てるかのように鋭く言い放った。
「その一件は、俺に任せろ」
その鋭さに、黄季は息を呑むと慈雲を見つめる。
慈雲の声には、不思議なほど悲壮感がなかった。己の感情よりも長官としての責務を優先した、といった雰囲気もない。
黄季と氷柳を見据える慈雲の顔には、むしろ現状を打開するための活路を見出したかのような、前向きな気迫さえ感じられる。昨日までの追い詰められ、憔悴していた慈雲とは、明らかに雰囲気が違った。
「……慈雲」
「俺だって腸煮えくり返ってるっての。相方に手ェ出されて黙っていられる比翼がいるかよ」
その変化が氷柳にも分かったのだろう。ハタハタと目を瞬かせ、何かを確かめるかのように声を発した氷柳へ、慈雲は語調を変えないまま言葉を続ける。
「冥翁には、俺が落とし前を付けさせる。……俺に何の相談もなくバカやらかしやがった、貴陽当人にもな」
──この状況で、こんな発言が出るってことは……
恐らく慈雲には、何らかの具体的な策があるのだろう。この状況下でも貴陽奪還を諦めなくて良いと確信できるだけの、……むしろこの状況だからこそ奪還できると確信できるだけの、何かが。
「目下一番の問題は、『天業の乱』の呪詛陣を一から創り出した冥翁に、こっちが王城に敷いた陣の詳細を調べられた可能性が高いってことだ」
慈雲が纏う空気と発言からそう感じ取った黄季は、無理やり思考を切り替えると慈雲の言葉に意識を集中させた。だが氷柳はそこまですぐには割り切れないのか、慈雲を見つめる顔にはいまだに困惑が色濃く漂っている。
そんな氷柳の意識を引き付けるかのように、慈雲は卓についていた手を浮かせるとトントンッと指先で卓の上に広げられた書類を示した。慈雲の手の下に敷かれていたのは、所々に朱墨で印が付けられた王城の見取図だ。
「最悪、今までの仕込みが全部相手方に割れた可能性まである」
さすがにその発言には、氷柳も意識を切り替えざるを得なかったらしい。
一瞬見取図に落ちた氷柳の視線が、次の瞬間には鋭さをたたえて慈雲に向けられる。
「……それは」
「ああ。正直言って、この局面でこれはかなりの痛手だ」
「痛手どころの話ではないだろう」
くっきりと眉間にシワを刻んだ氷柳は、腕を組むと真っ直ぐに慈雲を見据えた。その顔からは、先程まで氷柳を取り巻いていた困惑がかき消えている。
「最悪の場合、こちらは対抗手段を全て奪われた可能性まであるということだ」
──王城に敷かれた陣は、反転陣だって話だったよな。
慈雲達の予測では、郭永膳がまず発動させるのは、王城を焼き払うための呪詛だろうという話だった。
都中の忌地に溜まった陰の気を用いて呪詛を発動させ、ひとまず王城を焼き払う。そこから生まれる死や恐慌で陰の気をさらに増幅。そうして得られた莫大な陰の気を用いることでさらに大きな呪詛を発動させて都を焼き払い、皇帝の血筋とこの国をことごとく討ち滅ぼす。それが郭永膳の企みだろうと読んでいた。
そこから慈雲は、『ならば第一弾に当たる呪詛が発動しなければ、以降の呪詛も発動しない』と考えた。
その観点から構築された反転陣は、王城を焼き払うための呪詛が発動した際、その標的を王城から永膳が根城にしている異界へ丸ごと反転させるという内容のものであるらしい。形式上『反転陣』と呼称しているが、内容から言えば『呪詛返し』と言い表した方が正確な代物だ。
慈雲はこの陣の構築に貴陽を噛ませていなかった。王城は元から守護のために様々な陣が敷かれている場所だ。新たな陣がひとつやふたつ増えたところで、外部から感知することはできない。ましてや仕込まれているのは発動前の陣だ。永膳方に陣の存在を見破られる可能性は低いと慈雲は踏んでいた。
だが永膳に冥翁が手を貸しているとなれば、話は変わってくる。
「あれだけの呪詛陣を単身で構築し、起動させた呪詛師だ。結界呪やら呪詛陣やら、その辺りの技量は下手すりゃ貴陽を上回る」
「そんな人間が、『炎水白虹』の行使者だった永膳と組んでいるわけか」
貴陽の肉体を得て復活した冥翁は、泉仙省側の仕込みに気付いた。あるいは都の気の流れや、泉仙省の動き方から、何らかの不審を抱いた。だから当人が王城という泉仙省の本拠地まで直接潜り込み、調査をしていた。
そこにたまたま慈雲が行き合うことになり、成り行きから交戦することになったのではないか。それが慈雲の推測だという。
「そう思うと、むしろ遭遇できたのは運が良かったとも言えるな」
慈雲の言葉を最後に、三人ともの発言がフツリと途切れる。
慈雲と氷柳は何かを考え込むかのように、見取図に視線を落としたまま沈黙していた。冥翁についても、王城に敷かれた陣についても詳しく分かっていない黄季は、そんな二人を見つめたまま、張り詰めた空気にコクリと息を呑む。
「せめて冥翁に関して、もうちょい分かることがあればな……」
慈雲がそう呟いた時には、短くない時間が流れていた。
「分かること?」
「結局、全てが終わった後も、冥翁に関して分かったことが、ほとんどなくてな」
「つまり、術の手癖も、やつの真意も、こちらが勝手に推測したことでしかないということだ」
黄季が慈雲の言葉の真意を掴みきれずに困惑していることが分かったのか、氷柳が言葉を付け加える。そんな氷柳に問うように視線を向けると、氷柳は見取図から黄季へ視線を流した。
「今のお前の術の癖には、少なからず私の手癖が見える」
「え? はい」
確かに、それは事実だ。氷柳に師事してしばらくが過ぎた頃、その変化を慈雲に見抜かれ、氷柳との関係を暗に質されたこともあった。
「そして私の術の操り方には、根底に郭家の教えがある。そうやって系譜を辿っていけば、その術者の根底にある型が、おおよそ分かる」
同じ退魔術を行使していても、そこには術者の手癖が加わる。たとえば氷柳と慈雲で同じ退魔術を同じように行使していても、両者の間には微細な違いが見えるということだ。発現している結果は同じでも、そこまでに辿る経路が違う、という言い方の方が正しいのかもしれない。
万事において綻びがない、完璧な術式展開など存在していない。どの流派にも必ず『強み』と言える部分と『弱み』と言える部分が存在し、『弱み』は突き詰めれば解式の起点となる。
「まぁ、独自式を創り上げることができるような優れた術師は、我流でその弱みを潰していくっつー化け物じみた所業をやってのけてくわけなんだが」
『その点、貴陽の結界呪の手癖は、もはや完全に我流の域だな』と、慈雲は氷柳の説明に補足を加える。
そんな慈雲に一瞬チラリと視線を向けてから、氷柳は説明の言葉を続けた。
「それでも、礎となる部分はそう簡単には変えられない。冥翁の経歴が分かれば、そこから攻略点が見つかる可能性もある」
「あんなことをしでかしやがった動機も、結局推測でしかねぇしな」
最後に慈雲が添えた言葉に、氷柳は重々しく頷く。
そんな二人からの説明をしっかり自分の中に落とし込んだ上で、それでも黄季は困惑の声を上げた。
「でも、……今に至るまで、その辺りは結局、分からずじまいなんですよね?」
冥翁の存在が明るみになってから今まで、泉仙省や四鳥がその辺りの調査を怠っていたとは思えない。二度とあのような災禍を繰り返さないためにも、大乱終息後も調査は続行されていたはずだ。
「大乱で全てが焼けて、……八年が経っています。今更、出てくる情報なんて……」
「それが、あるんだなぁ」
『正直言って、ないんじゃないでしょうか?』と続く予定だった言葉が、場にいないはずである人物の声によって遮られる。さらにそこにシャランッという小鈴が立てる音が重なった瞬間、黄季は何かを考えるよりも早く声の方を振り返って身構えていた。
だが一瞬で張り詰めた緊張は、そこに立つ人物の姿が目に入った瞬間、困惑に変わる。
「ちょっとさぁ、無防備すぎるんじゃない? 防音対策もしないで、そんな重要なこと話し合ってるだなんて」
胸元に垂らして左耳の下でひとつにくくった髪が、差し込む光を反射して紫の艶を見せていた。
萌黄の袿に、医官装束。その片手には先に小鈴が結わえつけられた細身の杖が握られている。
華奢な体に、女性的な美貌。瞼は伏せられたままだが、顔は真っ直ぐに黄季達の方へ向けられていた。
──煌先生?
その姿はまさしく、『煌貴陽』そのものだ。
だが黄季の本能は即座に否という判断を降す。
『冥翁に乗っ取られた貴陽がここに現れるはずがない』という理屈から考えたわけではない。ただ本能的に『これは貴陽ではない』という確信が、なぜかはっきりと黄季の中にはあった。
「貴姫っ!?」
その確信を裏付けるかのように、慈雲が裏返った声を上げる。
耳慣れない名前に黄季が反射的に振り返ると、慈雲は声からの想像を違えない驚愕の表情を相手に向けていた。
「お前、そんな格好で何してやがるっ!?」
「あら嫌だ。お声が大きいですわよ、慈雲兄様」
乱入者は慈雲の絶叫を受けるとコロコロと上品に笑った。その声音を聞いた黄季は、思わずまじまじと乱入者を見つめる。
──え、女の人?
姿形は一切変わっていないが、袖先で口元を隠して笑う様は完璧に深窓の令嬢の所作だった。何より、先程よりも柔らかく高くなった声音は、明らかに若い女性のものである。
貴陽も中性的な容姿や声音をしているが、それでも女性に間違われることはない。だが今目の前にいるのは、間違いようもなく、完全に女性だった。
──え? え? こんなに煌先生にそっくりなのに?
「それにしても、まさか一目で見破られてしまうなんて」
笑みを含んだ声でそう口にした『貴陽のそっくりさん』がパチリと目を開く。その下から現れた紫水晶のような瞳は、声以上に笑みを含んでキラキラと輝いていた。
さらに『そっくりさん』は踊るような足取りで長官室の中へ踏み込んでくる。その様を目を瞬かせながら眺めていた氷柳は、踵のひと鳴らしで部屋を囲うように結界を展開した。
──これ、防音結界だ。
『氷柳さんのこの反応……もしかして、長官だけじゃなくて、氷柳さんもこの人が誰なのか知ってる?』と、黄季は思わず氷柳を仰ぎ見る。
「慈雲兄様はともかく、八年以上お目にかかっていない涼麗様や、初対面である黄季様には、見破られないと思っておりましたのに」
「んな手抜きな変装で騙せるはずがないだろ」
黄季の予想を裏付けるかのように、『そっくりさん』が目の前まで歩を進めてきても氷柳が警戒を示す様子はなかった。慈雲に至っては、まるで本物の貴陽を相手にしているかのように呆れを顔に出している。
そんな気安い対応に応えるかのように、泉仙省一行との距離を詰めた『そっくりさん』はぷくぅっと頬を膨らませた。
「でも、現にここに行き着くまでの間に、わたくしに不信感を抱く人間はおりませんでしたわ」
「そりゃあお前……。兄の変装をして王城まで潜り込んでくるような双子の妹が貴陽にいるってことを、今の泉仙省のやつらは知らないから……」
「双子の妹っ!?」
思わずほけらっと慈雲と『そっくりさん』のやり取りを見守っていた黄季は、慈雲の口から飛び出た思わぬ言葉に素っ頓狂な声を上げていた。そんな黄季の声に驚いた慈雲は『うぉっ!?』と肩を跳ね上げ、『そっくりさん』は口元にたおやかな笑みを広げてみせる。
「えっ!? 煌先生って、双子だったんですかっ!?」
「知らなかったのか?」
「初耳だと思うんですけどもっ!!」
さらに若干目を丸くした氷柳にまでそんなことを言われてしまった黄季は、思わずそのままの勢いで氷柳に食ってかかった。そのことに驚いたのか、氷柳はさらに目を丸く見開くと若干上体をのけ反らせる。
「ふふっ」
そんな黄季と氷柳のやり取りを見ていた『そっくりさん』から、柔らかな笑い声がこぼれた。反射的にキッと黄季が『そっくりさん』を睨み上げれば、『そっくりさん』は貴陽とまったく同じ仕草で口元に指先を添えながら、心底嬉しそうな笑みを黄季に向けてくる。
「お兄様から伺っていた通りの御方ですわね」
そのそっくり具合に、黄季は思わず息を呑んだまま言葉を忘れる。
そんな黄季にもう一度ニコリと笑みを落としてから、『そっくりさん』は氷柳を見上げた。
「得難き片翼を得ましたわね、涼麗様。お祝い申し上げます」
その言葉の真意が掴めているのか否か、言葉を向けられた氷柳はパチパチと目を瞬かせてから剣呑そうに瞳をすがめた。対する『そっくりさん』の方は氷柳の内心が読めているのか、氷柳を煽るかのように浮かべた笑みがわずかに深くなる。
「改めまして、ご挨拶申し上げますわ」
その笑みを残したまま氷柳から視線を外した『そっくりさん』は、一行をサラリと流し見ながら、両袖を重ね合わせるように胸の前で腕を構えた。
「慈雲兄様におかれましてはお久しゅう。涼麗様におかれましては長の無沙汰をいたしまして。黄季様におかれましてはお初に御目文字仕ります」
その上で浅く腰を落とし、小首を傾げた女性は、改めて名乗りを上げる。
「わたくし、煌貴陽の双子の妹で、煌家当主補佐役を担っております。煌貴姫と申します」
そう口にした『そっくりさん』……貴姫は、貴陽を模した姿をしていながら、もはや貴陽とはまったくの別人だった。
よりたおやかで、より毒々しい。貴陽が普段垣間見せる程度にしか滲ませていなかった毒気が、貴姫からはあふれんばかりに滲み出している。
考えなしに手を伸ばせば、その指先から全てが無残に爛れ落ちていきそうな。
危険で、それでいて無邪気な。目の前にいるのはまさしく『毒花』と呼ぶに相応しい人物なのだと、本能が警鐘を鳴らしている。
「『煌の双毒』の一葉を担う者として。暗がりの中で情報を司る『煌家』の当主として。お兄様がこの世を不在にしている間、我らの座を守護する者として」
そうでありながら、彼女はやはり、どこまでも貴陽の生き写しだった。
そう思えたのはきっと、貴陽がことあるごとに見せる執着の片鱗が、彼女の笑みの中にも見えたからだろう。
「我ら双子が八年かけて追い求めてきた情報を、慈雲兄様に献上すべく参上いたしましたわ」
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