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本物の聖女が現れたので、ニセ聖女のお前はもういらないと辺境に追放されてしまいました  作者: 南野 雪花


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第13話 歓迎、聖女様ご一行


 そもそも、だ。

 先触れが訪れてから、二週間も到着しないなんてこと、あるわけがないのである。


 もう二、三日で到着するから先触れが走るわけで、まだ二週間もかかるなら先触れなんか出さない。

 となると、なにかトラブルに巻き込まれたと考えるのが普通だ。


「迎えに出た方が良いんじゃないですか?」

「無用だよ。ユイナールくん」


 私の提案にダンブリンが笑う。


「出迎えが必要とは書状に書いてなかったし。そもそも、極端に少ないコロナドの戦力を減らすわけにはいかんよ」

「少ないて。いつもモンスターを余裕で倒してるじゃないですか」


「結果としてはね。勝っているからといって戦闘員が十五人しかいないって事実が変わるわけじゃない。毎日モンスターが襲ってくる場所から戦力を割くなんて、正気の人間がやることじゃないよ」


 いわれてみればその通りだ。

 月影騎士団は一人一人が万夫不当の強者だから勘違いしがちだけど、数としては正規軍の一個小隊にも届かないのである。


 迎えに行っている間に、全員で戦わないとまずい状況になったりしたら、それこそ目も当てられない。

 遊びでコロナドを守っているわけではないから、「負けちゃいました。テヘペロ」では済まないのである。


「でも、聖女様を放置ってまずくないです? 政治的に」

「我々の立場はすでに最低だからね。これ以上評価の下がりようがない。あとはもう、この国から出て行けって言うくらいしかないからね」


 さすがに、迎えにこなかったくらいで国外追放はない。

 ど辺境に左遷ってのが定番なんだけど、ここが最強のど辺境でした。びっくりです。


「改めて、私たちって最低野郎なんですよねー」

「けど、私たちがやらなかったら、誰が人類の砦の役目を果たすんだって話だからね。こればかり仕方ないさ」


 さらっと格好いいことを言うダンブリンだった。


 本当にこの人、ナチュラルに好漢なのである。自然体に世のため人のためって考えられるのはとてもすごいと思う。

 自分を卑下することもないし、他人を羨んだり白眼視することもない。


 だからこそ、中央の政界では生きづらかったんだろうね。

 公明正大で義に厚く、筋を通す人なんだもん。


 こういう人物が才幹を発揮できる場所って、たしかに辺境しかないんだろうなーと思っちゃった。


「損な性格をしてますよね。ダンブリンさんって」

「それは君も同じだろう」


 くすりと笑いあう。

 と、そのとき警鐘が鳴りひびいた。


 またいつものモンスターの襲撃だろうと思ったとき、ブラインがノックもなしに執務室に入ってくる。

 緊急事態に際しては、マナーもへったくれもないからね。


「軍団が近づいてるよ。警戒して」

「軍団? 規模は?」

「第一報では千名以上と推測されるって。あと、魔の森からじゃないよ」

「馬鹿な……」


 ダンブリンがうめいた。

 魔の森からではいとすれば方向は反対側しかありえないわけで、すなわち聖都の方面ってこと。

 ようするに人間の軍隊が近づいているのである。


 しかし私たちはそんな話を聞いていない。先触れがもってきた書状にも書いてなかった。

 もし援軍として軍隊が派遣されるなら、絶対に書いてある。


「コロナドを攻めるつもりなんですかね」

「判らないよ。ユイナちゃん」


 冷や汗をにじませながらの私の質問に、ブラインが首を振る。


 現状、コロナドを攻める理由がないそうだ。

 もし月影騎士団が武勲をあげ続けて声望が上がり、多くの人が集い王国政府のコントロールを受け付けなくなるくらい肥大化したら軍隊を派遣して粛正してしまうって感じなんだって。


 むしろそんな時期まで放っておいたら手遅れなんじゃないかと思っちゃうけど、国っていうのは基本的に動きが遅くて、どうしても後手に回るもんなんだってさ。


「だとしたら、本気でなにをしにきたんでしょう?」

「さっぱりだね」


 私は首をかしげ、ブラインとダンブリンは肩をすくめる。

 そこに、やっぱり微妙な顔をしたアイザックが入ってきた。


「掲げているのは聖女の旗で。付き従ってるのは民衆二千名だ。軍隊じゃない」


 という、ろくでもない情報を持って。





「ジョンズ補佐官。お久しぶりです」


 聖女様ご一行のなかに見知った顔があり、私は駆け寄った。


「ユイナール。息災そうでなによりだ」

「ジョンズさんは、あんまり元気そうじゃないですね」


 すごく疲れきってる印象である。

 聖都にいたころは左大臣マーチスの腹心として辣腕を振るっていたおっかないおじさまだったのに、なんだか失業寸前のお父さんみたい。


「その顔は、また失礼なこと考えてるな? ユイナール」

「まさかまさか。そんなそんな」


 すごくわざとらしく身体の前で両手を振ってみせる。

 ジョンズは怒るどころか目尻を下げた。


「君が聖女だった時代が懐かしいよ」

「昔を懐かしむように言うのはやめてくれませんか? なんだか老け込んじゃいそうです。まだ一年も経ってないのに」

「ぶっちゃけ、五十年分くらい疲れた。この二、三ヶ月で」


 声を潜め、ちらっと視線を動かす。

 その先にいるのは、ダンブリンの挨拶を受けている聖女メイファスだ。


 なんだろう?

 彼女が問題児ってことなんだろうか?


 私はフリックに目配せをした。

 ごく軽い頷きが返ってくる。

 事情を聞きたいから場所を変えよう、って意味でのアイコンタクトだ。


「久しぶりに会ったんですから、私の部屋でお茶でもいかがです?」


 にっこりと笑って誘ってみる。 

 

 

 

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[一言] >「掲げているのは聖女の旗で。付き従ってるのは民衆二千名だ。軍隊じゃない」 やって来た調査隊は軍隊では無かった!?、魔物との戦闘はどうする気だったのか小一時間ほど問い詰めたい状況ですね、月…
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