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転生初日その1

 「(くはぁっ! 痛てぇ! 俺死んだんじゃないのかよ! しかも心臓じゃなくて腹が痛てぇし!)」


 少年が腹部に激しい痛みを感じて目を開けると、そこは野戦病院のような所だった。


 「(ああそうだった、これは……自分の状態異常をすべて治せ!)」


 すると、少年の体は淡い黄金色の光にポワァっと包まれ、腹部に致命傷を負い、腸がはみ出ていたにもかかわらず、あっという間に傷が塞がり、まったくの健康体になった。


 「ふう、なんとか死なずにすんだな……あとは……」


 少年は立ち上がり、ここに居る負傷者全てを治癒すべく言葉を紡ぐ。


 「この場にいる人達の状態異常をすべて治せ!」


 すると、野戦病院のような所全体が淡い黄金色にに包まれ、負傷者たちの体がポワァっと光り、腕や足がちぎれて欠損していたりしていた腕や足が再生し、全員が健康体になった。



 『えええええええええ!?』



 驚きと喜びの叫びが上がる。


 「き、君はいったい……?」


 少年の近くにいた看護要員が問う。


 「死の淵を彷徨い、魔法を授けられました」


 少年はそう答える。


 「この状況はどうしてこうなっているんですか?」


 「二日前に西門の近くの森から魔物の氾濫が起き、半日ほど前に門が突破され、魔物が街に入り込んで暴れているんだ」


 少年は近くにいた看護要員と話す。


 「はっ! そうだ、母さん、僕の母さんはここに居ませんか!?」


 あたりを見回し、自分の母親がいないことに気付き、少年は尋ねる。


 「ここは重傷者だけ優先して運ばれてくる所なんだよ……」


 看護要員はそう答える。


 「西門は狭く作ってあるから魔物の侵入は少しずつだが、棍棒を振り回して暴れるオークや、突進力のあるフォレストファングボアなんかのせいで、西門付近は壊滅状態だ。俺が覚えているところまででは死亡者はそのまま放置、無傷の一般人なんかは重傷者の後送をしていたぜ」


 少年の魔法で回復した、隣で横たわっていた30歳位の男が立ち上がりながら、そう教えてくる。


 「坊主のおかげで抉れた脇腹も治ったし、もう一丁いってくるぜ!」


 そう言う男の姿を見ると、右脇腹部分から背中にかけてレザーアーマーが欠損していた。


 「僕も母さんを探すために一緒に行きます!」


 「おい坊主、次は死んじまうかも知れねぇぞ」


 「大丈夫です!」


 少年はそう言って、男の後に続く。


 野戦病院のような所から出ると、そこは広場だった。


 振り返って見ると大きな天幕が張られていた。その近くには多くの一般人が避難して来ていた。


 天幕から出たことでかなり眩しく感じて手でひさしを作り、空を見上げると、太陽が真上にあり、正午くらいの時間かと思わせられる。


 「(この世界にも太陽があるんだな……)」


 「ここは?」


 「ここは街の北東の奥にある領主館近くの広場だ。なんだ坊主、記憶がぶっ飛んじまったか?」


 「あ、はい…そうみたいです」


 男と話しつつ街をぐるりと見渡すと、高さ10メートル位の防壁に囲まれた約3キロメートル四方の街が脳裏に浮かぶ。


 領主館は男の言ったようにすぐ近くにある。広場というより、領主館の回り50メートル程が空白地になっており、侵入者を発見し易くする為のものだと容易に理解できる。


 「(領主館のすぐ近くに負傷者収容所を作ってくれるなんて、良い領主じゃないか)」


 少年は避難民の方に駆け寄り、大声で問いかける。


 「母さん! 僕の母さんは居ますか!? 誰か僕の母さんを見かけませんでしたか!?」


 「おぉバーツ! バーツ!!」


 「お前生きていたのか!? 良かった!!」


 60代とおぼしき男二人が声を上げて近寄ってきた。


 「……ゲルグさん! ラフトさん!」


 少年の記憶で二人の名前は分った。


 「バーツ、わしら二人でお前をここに運んだんじゃ」


 「お前の母ちゃん、アリアは、お前を庇ってボアの牙に……お前諸共串刺しに……そのあと近くに居た男衆が鉈や短剣でボアを仕留めて……まだ息のあったお前だけわしら二人でここまで担いで来て……」


 「それで母さんは!?」


 「すまない……心臓も止まって、息もしとらんかったから集会所に置いてきた……それで生き残った者達はここへ避難してきたんじゃ……」


 「そうですか……僕は魔法でこの通り元気に回復しました。母さんの生死を確認するため、集会所に戻ります」


 「なんだって! そりゃ本気か!? やめるんじゃ!!」


 「もうかなりの数の魔物が侵入してきてるんじゃ! 死にに行くようなもんじゃ!」


 「僕なら大丈夫です! それじゃ!」


 少年の名前はバーツというらしい。バーツは西門に向って歩きはじめていたレザーアーマーの男の方に向かって走りだした。

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