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魔王城の前へ転移したようで、城の前にはさっきのカジノが移動していた。周りには魔族や獣人が何事かと集まっていた。
「ま、魔王様!ちょうどよかった!いきなり城の前にこんな建物が!これは人間からの戦線布告です!すぐにでも攻め入りましょう!」
3メートルはありそうな狼のような魔族3人組が魔王に駆け寄る。その顔は戦闘が出来るのかと生き生きしているようにも見えた。
「ケル、ベロ、スウ、落ち着け。これは我がここに転移させたのだ。」
「魔王様が!いったい何なのですかこれは。」
「我が人の国へ行っているのは聞いているか?」
「えぇ、ですからいない間に人族が攻め込んできたのかと・・・。」
「違う。我は人間の国で初めてカジノというものを目の当たりにした。それはこの国唯一の娯楽といってもよい闘技場をはるかに凌駕するものだった。」
「なんですと!?」
「そして我と、一緒に旅をしているこの男がリュウ、そして女がトレイル。3人でカジノの経営者と一戦交えることになってだな。結果、とりつぶしとなり、それならば我らの国をカジノを主体とする大娯楽国にしようと思い立ったのだ。」
「そ、そんなことが・・・?」
「できる。魔石との交易についても限度がある。それに我はこの度、短期間ではあるが旅の中で悪い人間ばかりではないと実感したところだ。人族をマカイに招待し、交流していけるようになればいいと考えている。」
そこにいる魔族がざわつく。人族と交流なんてできっこないという声も聞こえる。
「無論、すぐにできるという訳にはいかないだろう。時間はかかるだろうが、間違いなくできるようになると信じている。」
ざわつきは収まらない。と、急にトレイルが前にでる。
「あんたたちね!根性がないのよ!たいした食事もできてないんでしょ?交易で入ってくる食糧を当てにしてるんでしょ?考えてみなさいよ。もしここに人が多く来たらどうなると思う?はいあんた!」
トレイルはケルと呼ばれた魔族を指さす。
「あ、いや、俺達と人族の間でトラブルが・・・。」
「違う!マカイに直接商人が物を売りに来るのよ!マカイでも貨幣があるでしょ?それで直接食べたいものを買って食べたりできるのよ?限られた食料を分け合って過ごさなくていいのよ!さらにどうなる!?そこ!」
今度はベルと呼ばれた者を指す。
「い、いや、食料をめぐって争いが・・・。」
「論外!マカイは強力な魔物が多いでしょ!?今はどうせ、魔石発掘と食堂とか大した職しかないでしょうが!それが商人の護衛や各娯楽施設の経営、たくさんの仕事が増えるのよ!それに闘技場もかなりの実力を持つ魔族が戦うなんてかなりの人気がでるわよ!殺し合いじゃなくて試合で審判もつければ間違いなくみたいという人間は沢山いるわ。戦いたい奴は戦って、それでさらにお金が入って、さらにさらにおいしいものいっぱい食べられるなら最高の環境じゃないの!」
たしかに、すげぇな、といった声がかなり聞こえてくる。トレイルが頭脳派というのはなかなか本当なのかもしれない。そこまで考えていたとはな。
「で、でもそこまでうまくいくかは・・・魔物を怖がってしまうんじゃ・・・。」
スウと呼ばれた男が言う。
「護衛すればいいって言ったじゃない!もしくはあんたら魔族なら転移魔法が使えるやつもいるでしょ?もしくは魔法陣でも作って通行料でもとればいいのよ!それを国の財政に回せば国も潤うわよ。転移できない大荷物の商人だけ護衛したらいいのよ。簡単でしょ魔王?」
「うむ、出来るだろうな。」
魔王が出来るといったことによって魔族たちの雰囲気が変わる。
「じゃ、じゃあ人族の持ってくるうまい肉をたくさん食べることも?」
「できる。」
「まずい魔物の肉と交易で入ってくる少量の食料で過ごす日々も・・・?」
「終わる。」
「「おおおおおおお!!!!!」」
その場にいる魔族が歓喜で叫びだす。泣き出す者までいた。
「さっそく準備を開始する。まずは運んできたカジノの改修をする。そして人の国にはさらに今後使われなくなるカジノがたくさんあるからすべて我が転移させていくから重力魔法や転移魔法が使える種族を集めて新たな町を作る。さすがに城の前にあっては邪魔だから、少し離れたところに城下町として設置しよう。まずは全魔族を集めて説明でもするか。」
「ではすぐに手配を!」
先ほどの狼の魔族三人がすごい勢いでその場を後にする。そしてたいした時間もかからずに全ての魔族が集まった。その数二千ほどだ。魔王は城の天辺で全魔族に対して先ほどの話を宣言する。