20
俺はトレイルを呼ぶためにカジノ内を探す。トレイルはスロットコーナーにいた。
「なによこの台、ぶっ壊れてるんじゃないの!?」
そこにはガンガンと台を叩きながら喚いているトレイルの姿があった。
「トレイル、行くぞ。」
「は?何よ?まだ時間はあるでしょ?もう少しで出すのよこの台は。」
完全にギャンブル中毒者の常套句だ。
「・・・ドラグが稼ぎすぎて裏に呼ばれた。」
「・・・まじ?」
俺がぼそっと言うと事態を察したのかトレイルは急に熱が冷めたようだった。
「いくら稼いだの?」
「とりあえずついてこい。歩きながら話す。」
しょうがないと思ったのかスロットを辞めて付いてくる。
「で、いくら稼いだの?」
「ルーレットで3600万だ。」
「まじ!?360万チップってこと!?」
「・・・3600万チップだ。」
「ハァ!?それはやばいでしょ!?」
「正当に勝ったものだから、なんとも言えないな。」
そんな話をしながら、先ほどの場所に戻ってきた。
「では、こちらへ」
黒服に案内されるまま、カジノの裏手へと入る。普通のオフィスといった感じだ。
「こちらへお入りください。」
言われるまま、入室する。部屋に入ると男が2人と女が1人左右に立っており、正面には偉そうに社長イスに座っている男がいた。
「すいませんね、お客さん、わざわざ裏に来てもらっちゃって。」
「構わない。要件だけ頼む。」
「いやーすごい目をお持ちのようで、こちらのディーラーでは相手になりませんよ。もちろん勝ち分はお支払いいたします。ただ、もうここにはこないほうがいい。」
「・・・どういう意味だ?」
「・・・意味がわからないほどバカではないでしょう?」
「あんなに荒稼ぎするつもりはなかったんだ。次回も遊ばせてもらう程度なら構わんだろう?シノギをつぶすつもりはねぇよ。」
「シノギ?よくわかりませんが、荒稼ぎしないというのならかまいませんが、次はないですよ?」
「あぁ。」
「それと・・・半分は置いていきなさい。」
「あ?」
「今後も遊びたいということなら、半分は置いていけと言ってるんですよ。」
「それは筋が通らねぇだろ。それに他行けばいいだけだ。」
「他も何もここらのカジノは全て元締めが同じですから、全て出入禁止にさせてもらうだけですよ。」
「・・・お前ら、技量で上回ろうとは思わねぇのか。だらしねぇな。」
「あなたにわかってもらおうとは思いませんね。」
「全て持っていく。」
「あなた、実力差もわからないんですか?私はお願いしているんじゃありません。命令しているんです。」
「小物が。てめぇみてな奴がいるから・・・。」
「・・・はい?いるからどうです?」
「こんなヤクザな商売はつぶしてやりたくなる。てめぇらがつぶした人間は一人や二人じゃねぇだろう。ギャンブル依存は自己責任とはいえ、金のない人間を追い込むのはよくねぇな。」
相手の顔色が変わる。
「雑魚がいきがるんじゃねぇぞ!てめぇら俺らを誰だと思ってんだ!?え!?」
「知らねぇよ。お前らなんか。」
「ここらのカジノを仕切ってんのは13騎士の第12席、カネナリ様だぞ!?知らねぇじゃもう済まねぇんだよ!」
「知らねぇもんは知らねぇが、ちょうどいい。そいつはどこにいるんだ?」
「雑魚が!てめぇらごときカネナリ様が相手にする必要もなぇんだよ!俺達がつぶしてやるよ!」
部屋にいるカジノ側の4人が殺気立つ。この感じだと俺一人で十分だな。
「ついてこい!殺してやる!」
「わざわざ移動するのか?ここでいいだろう。」
「うるせぇな、こっちにもルールがあるんだよ!」
4人は部屋から出ていく。
「リュウ、ここでつぶすか?」
ドラグは話す。
「いや、着いていこう。あいつらをつぶして13騎士を呼ばせれば、一石二鳥だ。」
「なるほどな。」
着いていくと一階から更に下に降りる階段があった。階段を下りるとそこには地下闘技場になっていた。一階にあった闘技場とは違い、血の匂いがする。
「さて、やろうか諸君。ここでやるのは表の甘い戦いじゃねぇぞ。」