1、会合・決断
目を覚ますと、何もない真っ暗な空間にいた。
人間は死んだあとに無になるだけだと思っていた俺は、死後の世界があることが信じられなかった。
声が聞こえる。
「・・・アーアー、聞こえるかな。聞こえたら、手を挙げておくれー」
明らかにふざけた様子の声に手を挙げる気になんてならなかった。
「アレー聞こえないのかなー。りゅうくーん。聞こえるー?」
馬鹿にしてるとしか思えない声が聞こえたが、心当たりはなかった。
だが俺の名前を知っている。
「聞こえてるよね?反応してくれないと僕さみしいよ。りゅうくーん。」
ここで反応するのも癪だったが、声を聞き続けるのも嫌だったため、手軽く振る。
「おーよかったよかったー。りゅうくんはねー死んじゃったのだー。でもねーりゅうくんは悪くないと思うんだよ。だからね、異世界に転生させてあげようと思うんだけど、どう?」
何を言ってるんだこいつは。頭がおかしいのか。
「頭おかしいとか失礼だなー。僕は神なんだよ。神だから別の世界で生き返らせてあげるって言ってるのー。」
こいつ・・・考えがわかるのか?
「わかるよー実は最初から聞こえてましたー!恥ずかしいねー!」
・・・くそが。
「人間は死ぬと無になると思っていた・・・キリッ」
・・・
「嘘だよ!嘘じゃないけどごめんね!からかうつもりはなかったのさ。でね!生き返る?生き返らない?」
「・・・異世界ってなんだ?」
「異世界はね!もといた世界とは全然ちがう、剣と魔法の世界だよ!きっと楽しいよ!りゅうくん強いしね!」
「・・・なんか必死だな。」
「そそそそんなことないよ!りゅうくんにはその世界で生きていくための術もプレゼントするし!きっと楽しいよ!」
「・・・一つだけお願いしてもいいか。」
「なになに?」
「俺はなぜ殺されたんだ。俺を殺す理由はなかっただろう。」
「・・・前の世界のことは話せないんだよ。ただ、りゅうくんが次の世界で10年生きられたらすべてを見せてあげる。これは約束。」
「俺が死んだ場合は?」
「たぶんそんなことにはならないけどね。まぁ死んだら約束は果たされないよね。」
「そうか。まぁいい。生き返らせてくれ。」
「いいんだね?本当にいいんだね?」
「お前が行ってほしそうだからな。」
「そっか・・・ありがとう。」
体が光に包まれる。
「りゅうくんはりゅうくんらしく、自分を曲げないでね。そうすれば必ず・・・」
最後にそんな言葉を聞きながら俺の意識は再度薄れていった。