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side:ステイ
俺達はリュウが先に進んでから少し経った後、ダンジョン内から出されていた。
再度ダンジョンに入ろうと試みるが、入口は固く閉ざされ、入ることができなかった。
「リュウ・・・あいつ、何があったんだ。」
「最悪の場合、ボスを倒すと崩壊する仕組みとかあったのかもしれないわね。」
「そんな・・・リュウさん・・・」
リンが今にも泣きだしそうだ。
俺達はただ待っているしかできなかった。
一時間ほど座り込んだのち、さすがにトレイルはしびれを切らしたのか、
「ここで座っててもしょうがないじゃない。とりあえずあたしの家に行きましょう。」
「そうだな。」
「いやです!ここで待ちます!」
「あんたね!リュウが生きていれば転移で戻ってこれるでしょうが!」
「トレイルさんはリュウさんが死んでるっていうんですか!」
「わからないわよ!」
「落ち着け、あいつがそんな簡単に死ぬようには思えない。とりあえず戻ってこれからのことを考えよう。」
万が一、リュウが死んでしまったと考えると、俺はなぜかクチナシに行く気が急激に無くなってしまっていた。俺まで叫びだしそうだったため、冷静になるためそう提案したのだった。
「なんか殺伐としているな。」
ふいに後ろから声が聞こえた。
「ふむ、こ奴らがリュウの連れか。なかなか人族にしては実力がありそうだ。」
「あぁ、たぶん強いぞ。」
そこにいたのはリュウだった。フードを被った見知らぬ男を連れている。
「リュウ!どこ行ってたんだお前!」
俺は柄にもなく叫んでしまっていた。
「そうですよリュウさん!心配したんですから!」
リンは泣きながら叫んでしまっている。
「一時間くらいしか経っていないじゃないか・・・いや、まぁ悪かったが・・・」
リュウはダンジョン内で一時間行方知れずという意味がわかっていないらしい。そういった場合、最悪の事態が起きているということがほとんどなのだ。
「まだリュウはこの世界に来て、日が浅いからな、わからなくともしょうがない。とりあえず今後はあんまり心配をかけないでくれ。」
「あぁ・・・悪かった。」
リュウが申し訳ない顔になる。初めて見た顔だった。
「ところで横の明らかに怪しいですって言ってるような方はどなた?」
「俺も気になっていた。ダンジョンの奥深くには人が居たのか?」
「ドラグラド・フレードだ。よろしく頼む。」
「ドラグラドさんか。あんた何者だ?」
「我はマカイの王だ。訳あってリュウに同行したと考えている。」
「魔王!?魔王がなんでこんなところに!?」
「リュウよ。普通のものはこういった反応なのだ。お前のようにいきなりドラグなんて呼ぶ奴はおらん。」
「俺は魔王と言われても、しっくりこないんだよな。」
「そうか。だが、ドラグと呼んでいいぞ。我とお前の仲だしな。むしろ呼べ。」
「おう。」
なんだか、リュウと魔王がすごく仲がよさそうだ。過去には人類を滅ぼすかのようだったという魔族。200年前に魔王が変わってからほとんどの魔族は穏健派にとなったというが、いまだに魔族は畏怖の対象だった。
「実はかくかくしかじかでな。」
魔王から事情を聞いた俺達は、驚きを隠せなかったが、敵対していない現在はそういうこともあるかと納得し、魔王を受けいれるのだった。