15、願い
「現在我が国は独立しておる。ただでさえ種族が違うからな。人族が交流できないなのもわかる。」
「たしかに魔族というものは今まで逢わなかったな。」
まだ二つの町しか行っていないが、人しか見ていなかった。
「そうだ。我は今、アキナイとだけ交流しているが、それも貿易、食材等をこちらが買って、かわりに魔石を売るというだけの形になっている。この国は濃密な瘴気が発生しているため、まともな食材は出来んのだよ。」
「なにか問題があるのか?」
「国民がいろいろな国を見て周りたいというのだ。マカイは広いとは言え、大した娯楽もなく、そこら中に強力なモンスターがいる。それに比べ、人族の国は自由で平和なのだろう?我も行ってみたいと思う。」
「それで、俺に出来ることがあるのか?」
「人族は魔族を危険であると認識していると聞く。ただ、マカイの王たる我が人族と一緒に旅をしていれば、その感覚も薄れていくと思ってな。」
「なるほどな。それでなんで俺なんだ?」
「ダンジョンの最下層にたどり着けるほどの実力がある人族ならそれなりの地位も持っているのではないかと思っていままで待っていたんだ。」
「わっちはお主なら魔王様が求めている人族にふさわしいと思って来てもらったでありんす。」
「そういうことか、だが、俺は来たばかりで連れくらいしか知らないぞ。」
「転生者なら勝手に目立っていくだろう。とりあえず、我が国の現状を一緒に見てもらいたい。」
「だが、連れを放ってというのはな・・・」
いきなりいなくなっては、あいつらも探すだろうし、簡単に返事をするのはためらわれた。
「そうか、ならば一言伝えてくるがよい。我も同行しよう。転移が使えるであろう?」
「あぁ、決められたところだけだがな。」
「そうか、我は複数人でも、ある程度の場所がわかれば好きに転移できるぞ。我が送っていこう。」
俺はドラグとともに元居たダンジョンの付近に転移をした。