9、VSスティ
「さて、始めましょうかね。」
「いつでも構わない。」
「では・・・」
瞬時、スティの姿が消えた。気配はするものの、視認ができない。と、その瞬間、目の前に現れ、剣が振り下ろされる。俺はすぐに後ろへ飛ぶ。
「今のを避けるのか。能力だけでなく、単純な技術、戦闘経験も尋常じゃないんだな。」
「俺の世界では、もっと早く、殺傷能力が高い武器が多くあってね。そんなものに狙われると、ある程度の反射神経でもないと、生き残れなかったんだ。」
「エンジニアと同郷とは思えないな。犯罪はあるが、基本的に平和な世界だと聞いたんですがね。」
「俺とそいつは生きている世界が違ったんだろう。俺は裏の世界にいたもんで。」
「ほう。あなたは悪には見えませんがね。」
「さしずめ、悪の世界で悪を許さない存在といったところだ。」
「俺はそういう存在は大好きですよ。」
今度は複数人に分身する。
「どういった原理でそうなるんだ。」
「俺を倒すことが出来たら教えてあげますかね。」
5人になったスティが一斉に襲い掛かってくる。俺はその全てに拳を繰り出すが、手ごたえ無く消え去ってしまう。
「威力・速さともステータス以上だ。ここからは本気で行かせていただきますかね。」
スティは姿を見せ、剣を捨てる。
「俺は、エンシェントナイトとというユニークだが、過去にも同じユニークを持った人が居たらしい。そいつはエンジニアと同じ時代に生きていたらしいが、エンジニアはいうには、エンシェントナイトは侍や忍者というエンジニアが生きていた世界にいた職業に似ているらしいんですよね。」
「ほう。だが、お前が使っているのは魔法剣というスキルじゃないのか?」
「あぁ、それだけで戦おうかととも思ったが、伝えていないスキルがある。」
スティの雰囲気が変わる。語尾の特徴も無くなっていた。
「アサシンというスキルだ。悪いが手加減は出来ないのでな、頑張ってくれ。」
再度消える。今度は気配ごと消えた。俺は意識を集中させる。アサシンというスキルなのであれば、おそらく暗殺に適したスキルなのであろう。で、あれば。かすかな気配を感じ、俺はそこへ蹴りを繰り出す。確かな手ごたえがあった。
「まじか、さすがにさっきまでと違って感じ取れないはずだろう。」
「なぜかわかったんだ。」
「・・・俺の負けでいい。久しぶりに楽しかったよ。」
「いいのか。」
「いいんだ。ところで、そんなにお前ら今の時世にくわしくないだろう。俺が案内しましょうかね。」
「・・・ここを離れられないだろう。」
「さっき聞いた縄張り指定があれば問題ないでしょう。」
「・・・確かに。」
「ええ、何より楽しそうだからな。ついていったほうがね。」
「ぜひついてきてもらいましょう!強い人はいっぱいのほうがいいですよ!」
リンが急に口を出してくる。
「まぁいいか。」
「ありがとう。それと、俺も縄張り指定してもらっていいですかね。」
「なぜだ。お前にはいらないだろう。」
「いやいや、アサシンの時の俺は、魔法が苦手なんだ。魔法無効はほしいんですよね。」
「そうか。」
俺はスティとランドを縄張り指定した。
「よし、金は俺が持っているから、どんどん次の町に行こう。ここは大したものはないからな。一応白金登録だけしていきましょうかね。」
「次の町って、どこに行くつもりなんだ?」
「まずは仲間を増やしていこう。俺も何人心当たりがあるし、世界にはいっぱい強いやつがいるからな。」
「ん?なぜ仲間を?」
「ん?お前らクチナシつぶしに行くんじゃないんですかね?」
特に目的は考えてなかったな。
「リンさんもそうしたかったんじゃないんですかね?」
「いや、そうできるならそうしたいですが・・・とくには考えてませんでしたね。」
「旅には目標があったほうが楽しいだろ。仲間を集めてクチナシをつぶしましょうかね。」
スティの言う通りかもしれん。
「じゃあそうしよう。」
「リュウさん、スティさん。ありがとうございます。」
「よし、まずは三つとなりの町、ドルンに向かおう。俺の知り合いがいますからね。」
俺たちは目標を決めて、新たな気持ちで出発する。