よぞらのほしの おひめさま
むかしむかし
せかいのまんなかに
やみのくにが ありました。
よぞらにうかぶ たくさんの
きらきらひかる ほしのように
そこではひとと ひといがいとが
なかよくいっしょに くらしていました。
でもそのうちに ひとがたくさんにふえて
じぶんたちだけのくにを ほしがりました。
たくさんのひとの あつまりは
そのうちおおきな ひかりになって
やみをはらい ひかりのくにになりました。
やみのくにの さいごのおうさまには
ちいさなかわいい おひめさまがいました。
おひめさまは とてもちいさくかよわく
いまにも しんでしまいそうでした。
おうさまは むすめをたすけたくて
くにじゅうに ふれをだしました。
すると あるものが いいました。
きたのにしの はてにあるやまの
ふもとのみずうみの ふるいしろには
じゃあくなあくまが すんでいる と。
あくまは いのちとひきかえに
なによりだいじなものを すくうのだ と。
おうさまは じぶんのいのちより
むすめのことが だいじでした。
そこであくまに おねがいしようと
くにいちばんのきしを つかいにだしました。
くにいちばんのきしは ながいたびをして
きたのにしの はてにあるやまの
ふもとのみずうみの ふるいしろにすむ
じゃあくなあくまに あいました。
くにいちばんのきしは じゃあくなあくまに
おうさまのおねがいごとを つたえました。
じゃあくなあくまは いいました。
「その王とやら、娘が何より大事なら
どうして自ら頼みに来ないのだ。
娘より王の責務や体面が大事かね?
半端な願いを聞いてやる気はない。失せろ」
くにいちばんのきしは
じゃあくなあくまの いったことを
もどっておうさまに つたえました。
おうさまははずかしくなって なきました。
そしてくにとおしろと けらいをすてて
おひめさまをかかえ ながいたびにでました。
とおいとおい はるかとおい
きたのにしの はてにあるやまの
ふもとのみずうみの ふるいしろにすむ
じゃあくなあくまに あうために。
おうさまは だいじなむすめをかかえ
くるひもくるひも あるきました。
くるひもくるひも あるいたけれど
きたのにしの はてにあるやまの
ふもとのみずうみの ふるいしろは
ずっと とおいままでした。
それでもおうさまは あるきつづけ
やがておひめさまを かかえたまま
いっぽもうごけなく なりました。
おうさまはいのり さけびました。
わたしのむすめを かわいいむすめを
このこのいのちを たすけてくれ と。
おうさまは ずっと さけびつづけ
やがて こえが かれてしまいました。
おうさまは ずっと いのりつづけ
やがて めが みえなくなりました。
それでもおうさまは おひめさまをかかえ
ずっと ずっと ねがいつづけました。
「王よ。そなたの願い、聞き届けよう」
どこからともなく こえがして
「だがその子の肉体はとうに寿命だ。
今の私の力ではその子の魂しか救えない。
宿るべき肉の器を失って
魂だけとなったその子が果たして
『生きている』と呼べるのかは判らぬ。
だが魂だけでも残っていれば
遠い先、時の彼方のその果てにて
新たな器を用意してやれるかも知れん。
そなたと共に今旅立つもよし、
未来に懸けて永らえるもよし。
選ぶのだ、王よ。
望み通りにしてやろう」
じゃあくなあくまは そういいました。
おうさまはこころから ねがいました。
「この子に生きて欲しい。
この子に幸せになって欲しい。
喜び、怒り、哀しみ、楽しみ、
心に様々の彩りと思い出を宿し、
この世に生まれて来て良かったと
心の底からそう想い、笑って欲しい」
そしておうさまは ちからつき、
じゃあくなあくまは いいました。
「王よその願い、叶えよう。
そしていつかきっと、
この子に伝えよう。
そなたの父は命を懸けてそなたを救ったと。
そして心からそなたの幸せを願っていたと」
じゃあくなあくまは おうさまのかかえた
だいじなおひめさまに てをかざしました。
おひめさまは きらきらと ひかりかがやく
あおいほうせきへと すがたをかえました。
こうして やみのおうこくの
さいごのおうさまの おひめさまは
ひかりかがやく よぞらのほしのような
あおいほうせきに なりました。
そしてほうせきになった おひめさまは
とおいさき ときのかなたの そのはてまで
ながいながい ねむりにつきました。
いつのひかふたたび めをさまし
しあわせになる そのときまで。
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