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魔法銃士ルーサー、最後の粘りを見せる

 一人の有志の男が屋根の上に立つ俺に後ろから叫んだ。


「ルーサーさん!

 第二防衛線に隙間が有ってミツールさんやエリックさんやサーキさんが奮闘して何とか食い止めています!

 でも早急に対処しないといつまで持つか分かりません!」

「なんだって!?

 案内しろ!」


 有志の男は防衛線の裏側の路地を走り、俺は彼について屋根の上を走った。

 道幅程の隙間も飛び越えて隣の屋根に移る。


 ――――― シルフィルド北門 第二防衛線 ――――――


 壁壁壁壁壁壁壁壁壁壁壁壁壁壁壁壁壁壁壁壁壁壁壁壁壁壁壁

 障障_______豚__障障障障___________

 回回豚__回回回____回回回回_豚__回回回回回回回

 回回_豚_回魔回__豚_回回回回__豚_回回回回回回回

 回回___回回回_豚__回回回回_豚__回回回回回回回

 回回___回弓回__豚_回回弓回___豚回回回回___

 障障___障障障____障障障障_豚__回回回回___

 回回_豚_回回回___豚回回回回____回回回回衛__

 回回豚__回回回____回弓回回____豚穴穴穴豚ミ_

 回回_豚_回弓回_豚__回回回回豚_豚_穴穴豚穴_豚エ

 回回___回回回____回回弓回____回回回回サ衛_

 ___豚_回弓回__豚_回フ回回_豚__回回回回___

 豚____回回回_豚__回回回回____回ル回回___

 回回回回回回回回______豚___豚_回回回回___

 回回回回回回回回___豚____豚___回回回回___

 回回回回回回回回塁塁塁塁回回回回塁塁塁塁回回回回___

 回回回回回回回回弩投衛弩回回回回弩投衛弩回回回回___

 回回回回回回回回兵衛衛兵回回回回兵衛衛兵回回回回___

 回回回回回回回回____回回回回____回回回回___


 壁:城壁

 回:二階建ての建物

 障:岩やレンガを積んだバリケード

 塁:人の胸程の高さまで積んだ土塁

 弩、兵:バリスタとそれを操作する元兵士のおっさん達

 衛:槍で必死に槍衾やりぶすまを作ってオークの侵入を食い止める衛兵

 投:小型投石機。目の前の通路に岩やレンガ、オークの一回目の襲撃から回収した武器類を進撃するオーク達に投げつけている。

 魔、フ:合唱して呪文を唱え、両手を左右に広げてライトニングの呪文を発動する冒険者の魔法使いとマジシャンのフィリップ。

 同時にオーク2体攻撃を繰り返しているが、本当にマナはギリギリで厳しい戦いをしている。

 弓:屋根の上から必死にオーク達に弓を射る弓衛兵。

 ミ、エ、サ:第二防衛線の穴に押し寄せるオークを迎え撃つミツール、エリック、サーキ。

 穴:防衛線の穴。俺が持っていた地図上は本来ここは防火壁となる土を持った土手だったはず。

   その後ろにも通路や建物など無かったはずだ。

 豚:突撃するオーク兵達。こちらに有利になる様に制御しているから辛うじて優位を取れているが、まともに正面からぶつかり合えば数十秒と持たずにこちらは壊滅したであろう。


 ―――――――――――――――――――――――――――


「なんてこった!

 地図と違うぞ!」

「ハァ……ハァ……、その地図古いらしいですよルーサーさん!」

「次来たぞぉ! オルァァア!」

「うお――っ!」


 ミツール達の激闘で何とか持っているが、こういう穴は早急に塞がねば今この町をコントロールしている俺の注意が釘付けになってしまう。

 かと言ってオークが次々と切り込んでくる中、町の有志にブロックを積んで貰うわけにもいかない。

 他からこちらへ回せる兵力も無い。

 それほどにギリギリの状態なのだ。


 どうにもならない膠着状態、こういう場合経験の浅い軍師ならばその場だけを黙って見守り続けてしまう。

 ジリジリと両者が削れ、事態が変化するまで、場合によっては味方の敗北が決定するまで見守り続けてしまうのだ。

 だがそれでは軍全体が機能不全に陥ってしまう。

 俺はミツール達を信じる事にした。


「ミツール! エリック! サーキ!

 何とかしてお前達でそこを抑え続けろ!

 応援を送る余裕は無い!」

「まじすか!?

 鬼っすよルーサーさん!」


「たった今南門から火矢の合図が打ち上がった。

 町の人々は7割ほど逃げ終わった所だ。

 全員が逃げ終われば退却に移る。

 それまで耐えろ!

 いいな!?」

「……」


 俺は心を鬼にしてそこを立ち去り、元のT字路へと戻る。

 道中も押し寄せるオーク兵には目を配り、遠隔攻撃をしそうな奴、オーク工兵、そして腕が立ちそうな奴を選んで上から狙撃して始末する。

 元の建物の上へと辿り着いた時、空からバサバサと音を立ててドレイクに騎乗した兵士が一人、隣に降り立った。

 ドレイクはドラゴンよりは小型だが空を飛んで火を吐ける飛竜であり、それに騎乗するドレイクライダー部隊も存在する。


「ドレイクライダー部隊か?

 助かる!

 どこの所属だ?」

「ミルトン王国の衛星都市ノームピックから参上した竜騎兵団……の斥候部隊です。

 他の者はあそこの上空に待機させている32騎のみ」


「32騎? 他の奴らはどうした? 他の兵は?」

「竜騎兵本体は3つ隣の国に遠征しており、ノームピックの駐屯兵も自分の都市を守るのでギリギリの数しか居ません。

 これでも我々は最も機動力のある部隊、ここが保っている間に間に合う他の増援は期待出来ないでしょう。

 ところで魔法銃を使う貴方が指揮をしているルーサー殿ですな?」


「そうだが」

「我々は城壁の外に襲撃を掛ければ宜しいかな?」


「16騎ずつに分かれ、城壁の外左右に飛んでくれ。

 ここは膠着して時間が経っている。

 そろそろ裏回りを試みる魔王軍の部隊が出始めているはずだ。

 ケンタウロス兵達とかがな」

「ケンタウロス兵、奴らは対空攻撃が出来る集団、軽装の我々斥候部隊では相手にするのが厳しいです」


「放っておけば逃げる町の人々が襲撃されてしまうんだ。

 何もたった16騎で1000を超える相手を殲滅しろとは言わない。

 安全な距離を取りながらも背後からプレッシャーをかけ続けてくれ。

 自分達を無視して逃げる町の人を襲うようであれば背後から襲撃するぞってな」

「分かった!

 外の事は我々に任せよ!」


 ドレイクライダーの竜騎兵は竜を羽ばたかせ飛び上がった。

 そして上空で待機する部隊に戻り、左右に分かれて飛んでいく。


 ピュゥ~~


 南の方で鏑矢の音が響き、俺はそちらを振り返った。

 3本の火矢が遠くの上空に打ち上がっている。

 どうやら町の人の9割は町から脱出を完了したようだ。

 そろそろ俺達の撤退も考え始めなければならないだろう。


「ようし、皆頑張ってくれ!

 あと少し、最後の踏ん張り所だ!」

「変ですルーサーさん、オーク兵の突入が止みました」


「何?」


 確かに城門から雪崩のように突っ込んでいたオーク達の後続が来ない。

 俺は屋根の上を走って城門側へ移動し、尖塔の中を駆け上って外の様子を伺った。

 城門の300メートル程先に、オーク兵が担いだ神輿のような物に据えられた王座に、フルプレートを着た爬虫類系の亜人が座っている。

 その亜人は声を張り上げた。


「異世界転移者を出して下さい!

 そこに居るのは分かっています!

 殺されて肉片になってしまう前に、同じ異世界転移者として顔くらいは拝ませてくれてもいいでしょう?」


 俺は銃を構えてしばらく迷った。

 魔王軍全体が攻撃の手を止めている事からして、恐らく今回の襲撃の総司令官級の奴だろう。

 司令官の狙撃が二度も成功するか?

 流石に総司令官には何らかの護衛がついて対策しているだろう。

 それよりも、時間を稼げるのであれば、生かしておいた方がいいかも知れない。

 俺は尖塔の影に隠れたまま大声で返した。


「異世界転移者のミツールとサーキはここに居る!

 今連れてくるから大人しく待ってろ!」

「早くしてよね。

 僕は気が短いんだからね」


 俺は再び町の方へと降りて走った。

 オークの襲撃が止まって首を傾げている人々に全員撤退を指示しながら。


「非戦闘員から順番に撤退しろ!

 南門からな!

 ナオミ!

 俺やミツール達が逃げれるように馬車を南門に待機させておいてくれ!」

「分かりました!」


「シルフィルド錬金術師協会のアルケミストのルイーズさん!

 居るか!?」

「ここに居ます」


「頼んでおいた爆薬は準備出来ているか?」

「はい。既に」


「オーケー。君達も早く逃げるんだ!」

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