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魔法銃士ルーサー、エビルサーバルと対面する

 ルーサーはケルピーを走らせながら大声で叫ぶ。


「ピーネぇぇ!

 左側からもういっちょ行くから俺を撃つんじゃないぞおぉぉ!」


 ブヒヒィィ~~ン!

 フゴオォォッ!

 オウッ! オウッ!


 大勢のエビルアニマルを引き連れて、茨の壁で仕切られたピーネの射線が通る通路に駆け込む。


 ドドドドドドド……


 必死でクロスボウを構えるピーネの前までケルピーを走らせ、通路の反対側へと駆け抜ける。


「アッハッハッハ!

 カモーン、カモ――ン!」


 ドゴォ――ン! グチャブチャクチャビチャ!

 ドゴォ――ン! グチャブチャクチャビチャ!

 ドゴォ――ン! グチャブチャクチャビチャ!


 ピーネのクロスボウが多数のエビルアニマルを粉砕し、周囲に血の雨を降らせ、地面を赤く染め上げる。

 カメリアも必死でケルピーを走らせ、農場の周囲を走りまくる。


 ド――ン! ボワツ! バリバリバリィ! バシュッ! シュバァ――ン!


 エビルアニマル達は様々な種類の起爆壺を踏んで次々と倒れていく。

 最初は無理かもと思えるほどのエビルアニマルの大群に圧倒されていたが、その数は徐々に減って俺を追うエビルアニマルの群れが補充される速度が落ちていく。

 既に畑はエビルアニマルの死体が絨毯を敷き詰めるようにあちこちに横たわり、畑の土は隙間なく蹄で踏まれてボコボコ状態である。


「ふぅぅ、どうやら終わりが見えてきたようだな……」


 ――――――― 混戦状態のピーネの畑 ―――――――――


 森森森森枯森森森森枯森森森森森枯森森森森森枯森森森枯森森森

 森______死_____死___死死__死_死____森

 森__死_死_死__死____死____死___死_死_森

 枯_死____________________棘____森

 森__死_棘棘棘棘棘棘棘棘棘棘棘棘棘棘棘___棘_死死_森

 森_死__棘柵柵柵棘棘__肉__肉肉_肉_肉肉棘____森

 森死_死_棘柵ピ柵棘_肉___肉_肉__肉_肉棘_死__回

 枯_死__棘柵柵柵__肉_棘棘棘棘棘棘棘棘__棘___死森

 森_死死_棘棘__肉肉_棘__________棘_死__森

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 枯_死__棘_肉肉_棘________回猫__回____枯

 森__死_棘肉肉肉肉棘_____ル___回_回__死__森

 森_死____肉肉________________死死_森

 森_死___肉_死________死__死死__死死__枯

 枯____死____死__カ_____死__死___死_森

 森森森森森森枯森森森森森木____森森木森森森森森枯森森森

 森森森森森森森森森森森森森____森森森森森森森森森森森森

 森森森森森森森森森森森森森森森森森森森森森森森森森森森森森


 森:青々と茂った森の木々

 木:100歳級の老トレント

 枯:魔王軍によって切られたり、燃やされて枯れたトレント

 棘:エルフスグリの木をいくつも絡めて作ったトゲトゲの壁

 柵:ピーネが入る為の丸太を並べて作った頑丈な柵。

   ヘビークロスボウを撃ち込めるがモンスターが入れない隙間が開いている。

 ル:そういえばユニーク個体が居たことを思い出したルーサー。

 ピ:獲物を殆ど狩りつくして名残惜しさを感じ始めたピーネ。

   実はこの戦いで既に10くらいレベルアップしている。

 カ:ルーサーとエビルサーバルと親衛隊を遠巻きに見守るカメリア

 死:起爆壺を踏んで死んだエビルアニマルの死体。

 肉:ピーネのアーティファクトのヘビークロスボウを受けて爆発四散したエビルアニマルの痕跡。

 回:ひときわ体の大きいエビルアニマル。

   エビルサーバルの親衛隊。

 猫:怒りのオーラを滾らせるエビルサーバル。

   体格が元の10倍、既にルーサーが見上げる程の恐竜サイズになっている。


 ――――――――――――――――――――――――――――


「やっぺ」


 巨体のエビルサーバルと対面してフリーズしているルーサーにカメリアが近寄る。


「途中から何か大きいのがウロウロしているなぁとは思っていたのですが、取りあえず周囲のエビルアニマルを起爆壺へ誘導し続けて片付けていってたんです。

 気が付いたらあれだけグングンと成長してたみたいで……。

 私何かマズい事しちゃいました?」

「いや、俺のミスだ。

 群れの対処に必死で肝心のユニーク個体の事を忘れていた」


 ズシン……ズシン……


 エビルサーバルはルーサーの方へ向いて歩いて前進した。


 ブチッ


「ピギヒィィ……」


 既に体高5メートルを超え、足元への注意がおろそかになっていた事もあり、エビルサーバルはうっかり親衛隊のエビルヘラジカを踏みつぶして殺した。


「おのれっ! よくも!

 よくも親友のエビルヘラジカを殺してくれたなぁあああ!

 ゆ・る・さ・ん!」


 エビルサーバルの全身を包むオーラが一瞬燃え上がり、ズニュニュッと体格がさらに大きくなる。


「ちょ、ちょっと待て。

 今のはお前自身が踏み潰して殺したんだろう?」

「貴様ぁあ! エビルヘラジカの恨み! 必ずやこのサーバルパンチではらしてくれるぅぅ!」


 エビルサーバルは右手を振り回してエアー猫パンチをして見せた。


 ブゥゥン!

 ボゴォォン!


「ブヒィン!」


 エビルサーバルはうっかり隣に居た親衛隊のエビルヌーにサーバルパンチを当て、エビルヌーは吹っ飛ばされたあげく内臓破裂により死亡した。


「おのれえぇぇ!

 よくもよくもよくも!

 親友のエビルヌーを殺してくれたなぁああ!」

「いや、だからそいつもお前が今殺したろ」


 しかし理不尽にもエビルサーバルの全身を包むオーラが再び燃え上がり、ズニュニュッと体格がさらに大きくなる。


 ***


 柵の中のピーネはヘビークロスボウを構えて二方向の通り道に向ける。

 しかし前には見渡す限りの血と肉の沼が広がるのみで、入って来るエビルアニマルは居ない。


「あーあ、もう終わりかなぁ」


 ふと視線を上に上げると、茨の壁の向こうに恐竜のようなサイズのエビルサーバルが見えた。


「よぅし、ここは私の秘技の出番ね!

 スキル・流星曲射カーブド・メテオ・アロウ!」


 ガイン!

 ガイン!

 ガイン!

 ガイン!


 ピーネはヘビークロスボウを大空に向けて構え、連射をし始めた。


 ***


 ルーサーにカメリアが震えながら囁く。


「どうしましょう? ルーサーさん」

「奴は今、1000%近くパワーアップしてるから一発攻撃受ければこっちが即死する。

 既にグレータードラゴン並みの強さになってるだろう。

 くそっ、何か策がないか……」


 魔法銃士マジック・ガンナーの強さにも限界はある。

 相手がスキルや戦術を駆使して戦うタイプであれば、そのカウンターの策で戦う事も出来、実際それで魔王軍幹部とやり合って倒したこともある。

 だが今目の前に居るような純粋な体格とパワーだけの怪物相手ではどれほどの打撃が与えられるか怪しいし、相手の攻撃を受けてくれる壁役と有り余るほどの弾薬が必要になる。

 俺は一瞬自分の腰回り、ガンベルトを見た。


「群れ相手に最大限節約して使ったが、既に魔法銃のカートリッジも使い切ってる。

 今装填されてる合計12発のみで倒せる相手じゃねぇ」

「ピーネちゃんの方へ誘導して撃って貰いましょうか?」


「ユニーク個体はデフォルトで知性も普通のエビルアニマルより3~5倍上がってるからな。

 誘導に乗らずに直接ピーネを叩きに行く可能性がある。

 あの柵程度ではこの化け物の攻撃を防ぎきれないだろう。

 ん?」


 俺は空の彼方から何かが降って来るのに気が付いた。

 エビルサーバルは俺の視線に気づき、上を見上げる。


「ふん! その程度の攻撃をかわせないとでも?」


 ババッ!


 エビルサーバルは上空を見つめたまま素早く身を屈め、横へ小さく飛んだ。


 ドゴォン!

 パリパリパリ……


 ピーネが放った矢がエビルサーバルが元居た場所、畑の土に命中して土煙を噴水のように上げ、稲妻の小さな竜巻が少し起きては消えた。


 ブチッ


「プヒィィィ!」


 上空を見上げたままのエビルサーバルは、うっかり別の親衛隊のエビルジャッカルを踏みつぶして殺したが気が付いていない。

 そして矢は次々と降って来る。


「ふんっ! いくら撃っても同じ事だぁ!」


 ブチッ

「プヒィィィ!」


 ブチッ

「ブモォォ!」


 ブチッ

「ピギィ!」


 ブチッ

「クピッ!」


 ブチッ

「プヒィィィ!」


 エビルサーバルは上を見上げたままバックステップやサイドステップでの回避を続け、その度に親衛隊のエビルアニマルをうっかり踏み潰し、ついには全滅させた。


「ふぅぅ、ようやく攻撃が収まったようだな……。

 うおっ!

 エビルインパラぁぁ!

 エビルオリックスぅぅ!

 みんなっ! みんなぁ――っ!

 貴様ぁぁぁぁ!

 よくもよくもよくもぉおおおお!」


 エビルサーバルの体が怒りのオーラに包まれ、さらに体格が大きくなる。


「ちょっと待て! そいつらをやったのはお前自身だぞ!」

「許さんぞ貴様ぁ! 今からギッタギタに踏み潰してくれる!」


 エビルサーバルはズンズンと地響きを立てながら俺に迫る。


「くっ」


 フリーズしている俺の前にカメリアが走り出た。


「まってエビルサーバルちゃん!」

「俺の名はゴクスケだぁ!」


「ゴクスケちゃん、怒らないで!

 ほら、貴方の大好きなダイコンよ?

 大きく育ったとれたての新鮮なダイコン。

 お詫びにこれを上げるから機嫌を直して!

 ね!?」


 カメリアは震える手でエビルサーバルにダイコンを差し出す。


「あぁんっ!?」

「ひっ」


 エビルサーバル、個体名ゴクスケはカメリアを一瞬睨み付けるが、身を屈めて口を開き、カメリアの前にベロを出した。

 カメリアはダイコンをその上にポイッと投げる。


 コリッ、コリッ、コリッ


 ゴクスケはダイコンの乗ったベロを引っ込めてモグモグ食べ始める。


(そうか!

 ユニーク個体とは言え所詮は動物であることを忘れていた。

 人間なら憎悪している敵兵の施しなど受けずに、死を選ぶ事さえあるが、こいつは人語を解して軍隊以上のパワーを持っていようとも所詮動物なのだ!

 そしてカメリアのこの動物の挙動を知り尽くしたような態度。

 カメリアは恐らくテイマーだ。

 気位が高くて気難しく、飼いならす難易度の高いケルピーを手懐ける程の高いスキルを持つ。

 これはいけるかもしれん)


 俺は小声でカメリアに言った。


「カメリア、難しいだろうが何とかしてこのエビルサーバルを手懐けてくれ。

 奴を俺達の仲間ポジに持っていって欲しいんだ。

 頼む」

「や……、やってみます」

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