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魔法銃士ルーサー、ピーネ達と入念な準備を行う

 俺は地面に這いつくばりながらじっくりと周囲の魔力を探知していた。

 こういう時、あらゆる種類の魔法を極めた辺境の魔導士キャロルであればデテクト・マジックの魔法でフィールド全体の魔法トラップを一瞬で発光させて探知出来るが、俺の場合は地道な作業が必要だ。


「スキル・デンジャーマーカー」


 俺は魔導起爆壺が埋まっていると確信した地点に魔力の小さな旗を空中に出現させた。

 このマーカーは俺が能動的に解除しなければ一日くらいは持つ。

 そしてそれは魂の奥底から俺に敵対意思を持っていない者にのみ見える。

 要するに味方だ。

 表面だけの心での誤魔化しは効かない。

 本来は魔法銃士には魔導爆弾やそれを射出する砲を扱う者もおり、主にそいつらが取得するスキルだが、味方との連携時に便利なので俺も鍛えている。

 で、今の俺の周囲の状況を参考までに見せるとこうだ。


 ―――――――― ルーサーの周囲 ――――――――


 ※※※※※※※※※※※※一二三二一※※※※※※

 ※※※※※※※※※※※※二旗旗旗二※※※※※※

 ※※※※※一一一____二旗旗旗二※※※※※※

 ※※※※※一旗一____一二三二一※※※※※※

 ※※※※※一一一_________一一一※※※

 ※※※______________二旗二※※※

 ※一一一_____________三旗三※※※

 ※二旗三一______ル_____二旗二※※※

 ※三旗旗一____________一一一※※※

 ※二旗三一__________________

 ※一一一_____カ___ピ_________


 ※:危険か安全か判断が付いていない地帯

 ル:這いつくばって周囲の地面の魔力探知するルーサー

 旗:起爆壺が埋まっていると確信し、デンジャーマーカーでマーキングした箇所

 一:その地点の周囲に起爆壺1個ほどの魔力を感じる地面

 二:その地点の周囲に起爆壺2個ほどの魔力を感じる地面

 三:その地点の周囲に起爆壺3個ほどの魔力を感じる地面

 カ:心配そうに見守るカメリア

 ピ:心配そうに見守るピーネ


 ―――――――――――――――――――――――――


 こんな具合だ。

 俺は特定地点に心を集中することで、その周囲にどれほどの魔力が潜んでいるかは分かる。

 方角は分からないがな。

 特定地点のごく至近距離しか分からないのを逆に利用した探索法と言えるだろう。

 コップと茶菓子の乗ったお盆を持ち、ピーネが後ろから恐る恐る俺に歩み寄る。


「ルーサーさん、少しは休憩を取らないとずっと張り詰めているとかえって失敗しますよ?

 これをどうぞ、この一帯での名物のグリーンティーに蜂蜜を入れたドリンクと、小麦とソバ粉で作ったビスケットです」

「おう、有難う。

 助かるぜ」


 バリポリポリ……


 俺は時折休憩も取った。

 神経の張り詰めた作業では重要な事だ。


 ***


 午後を少し回った頃、俺はようやくピーネの畑の中央地帯へと入る安全な道を見つけ、作戦に必要なエリアの安全を確保した。

 中央の広大な安全地帯は調べる速度も早く済んだ。

 もちろん3キロ四方もある外周全てを調べ切ったわけでは無いが、今のところは十分だ。


「ようし、次は中央にピーネが入る為の柵と、動物の動きを誘導する柵を構築する。

 丁度いい丸太がそっちに一杯あるしそれを使えばいいだろう」

「分かりました。

 早速始めましょう」


 ピーネは自分の背丈の倍以上ある丸太を片手で軽々と肩に担ぎ、反対の手では巨大な木槌をもってスタンバイしている。


「さすがアーティファクトのヘビークロスボウを扱えるとカメリアが確信をもって言うだけあって力持ちだな」

「ピーネちゃんは力持ちなんで、私はいつも力作業は手伝って貰っていたんです。

 代わりに私が細かで根気の居る作業をするという役割分担ですね。

 私は蔓植物をかき集めて、丸太を結び合わせるロープを編み上げるほうをお手伝いします」


「そうだ、カメリア、この辺りに棘のある植物は有るか?」

「エルフスグリが有るわよね?」

「そうですね、エルフスグリは甘い果実を実らせるのでそれを取ってジャムを作ったりしますが、茎に3から5センチの硬く鋭いトゲを沢山生やします。

 果実目的だけでなく、動物除けの生垣にも使います」


「よし、じゃぁそのエルフスグリも一杯持ってきてくれ」

「分かりました」


 俺は杭打ちの場所を指示しながらピーネと一緒に柵を配置し、カメリアは何度も森に入ってはロープや様々な素材を作って持ってくる。

 そうして夕方になる頃、ようやくピーネの畑での準備が完了した。


 ―――――――――― ピーネの畑 ――――――――――――


            魔王領方向


 森森森森枯森森森森枯森森森森森枯森森森森森枯森森森枯森森森

 森___________________________森

 森___________________________森

 枯______________________棘____枯

 森____棘棘棘棘棘棘棘棘棘棘棘棘棘棘棘___棘____森

 森____棘柵柵柵棘棘__泥泥泥_泥__棘__棘____森

 森____棘柵_柵棘___泥泥_案_泥____棘____枯

 枯____棘柵柵柵____棘棘棘棘棘棘棘棘__棘____森

 森____棘棘_____棘__________棘____森

 森____棘__泥__棘______竹___棘_____森

 枯____棘_泥案_棘____竹____________枯

 森____棘泥泥泥泥棘__竹____竹__竹______森

 森_____棘泥泥泥_____竹____________森

 森___________________________枯

 枯___________________________森

 森森森森森森枯森森森森森木__ピル森森木森森森森森枯森森森

 森森森森森森森森森森森森森___カ森森森森森森森森森森森森

 森森森森森森森森森森森森森森森森森森森森森森森森森森森森森


            光輝の陣営領方向


 森:青々と茂った森の木々

 木:100歳級の老トレント

 枯:魔王軍によって切られたり、燃やされて枯れたトレント

 棘:エルフスグリの木をいくつも絡めて作ったトゲトゲの壁

 柵:ピーネが入る為の丸太を並べて作った頑丈な柵。

   ヘビークロスボウを撃ち込めるがモンスターが入れない隙間が開いている。

 泥:土を掘ってふるいにかけ、水を混ぜて作った膝程の深さの泥沼。

   魔獣の突進速度を弱める狙いがある。

 案:人型の案山子。

   いくらかの魔獣は人間と勘違いして攻撃を仕掛けて足を止めるだろう。

 竹:竹を直径2メートルの束になるくらい寄せ集めて立てた竹束。

   俺は外で魔獣を回避しながら戦うつもりなので、身を隠すのに使う。

   突進を主な攻撃手段とする動物を相手にする場合、障害物を間に挟むのはとても有効だ。

 ル:ルーサー

 ピ:ピーネ

 カ:カメリア


 ――――――――――――――――――――――――――――


「ついに出来ましたね」

「あぁ、ここで調達出来る物で考えられる限りの対策を仕込んだ。

 準備としてはベストを尽くしたと言えるだろう」

「ルーサーさんって本当に凄く賢いですね!

 最初は絶対に無理と半信半疑だったのですが、この仕掛けの配置を見たらなんだか勝てそうな気がしてきます」


「知恵で戦うのが人間だ。

 ま、賢いというか勇者パーティーと共にあらゆる戦場を乗り越えて来た経験だな」

「賢いですよ!」

「ピーネちゃんは柵の中でヘビークロスボウで迎え撃つ、ルーサーさんは竹束周辺で戦う。

 私はどうすればいいのでしょうか?」


「姿を隠す魔法とか使えるか?」

「はい。ハーフ・ドライアードは特性として自然に溶け込んで気配を断つことが出来ます。

 かなり高度な気配探知能力を持ったレンジャー相手でも、目の前で隠れてそのまま見つからずに過ごせる自信はあります」


「グッド。

 ピーネの畑周辺を走り回り、畑の中には入らずに動物達を挑発しまくって欲しい。

 そして追いかけられたら隠れて別の場所に移動するんだ。

 要するに、大勢の動物達に魔導起爆壺を踏みまくって貰って、除去するのさ。

 外周にはいっぱい埋まってるからな」

「なるほど!」


 ***


 その日の夜、俺は小川の傍でケルピーの背に乗る練習をしていた。

 ピーネは離れた場所で倒木に座って見学、カメリアはもう一匹のケルピーに跨って俺を見ている。


 ヒヒヒ――ン!

 ダタッ ダタッ ダタッ


「うわっ……と、こ、こら!

 暴れるんじゃねぇ!」

「やっぱり人間に慣れてないから厳しいかしら……」


「ピーネの畑に大量のエビルアニマルを誘導して来ないといけないんだ!

 わっ……と。

 ケルピーに乗るのは必須、人間の足じゃ追いつかれる」


 ヒヒ――ン!


 俺を載せたケルピーは一瞬大人しくなったかと思うと、今度は小川の深みに向かって直行し始める。


「畜生! 大人しくしやがれぇ!」


 ジャキン! ゴリゴリゴリ……


 俺はミスリルブーツのふくらはぎから拍車を下ろして踵の後ろに出した。

 それをケルピーの腹にゴリゴリ強めに押し付ける。


 ビヒィィン!


 鋭い痛みでびっくりしたケルピーは前足を浮かせて背をよじる。

 俺は手綱を強く引いて強い調子で命令する。


「止まれっ!」


 ビヒヒィ!


 ケルピーは足を止めた。


「はい、回れ右! カメリアの所に戻るんだ」


 ヒヒィン!


 ケルピーは観念して俺の指示に従い始める。

 ミスリル製の拍車を付けといてよかったぜ。

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