魔法銃士ルーサー、コボルド・シャーマンに遭遇する
俺とカルーノは隣町での食事を終えた後、カルーノお勧めのマッサージ店でマッサージを受けたり、古書喫茶でドリンクを飲みながら古書を読んだり、東洋からやって来た歌舞伎一座の歌舞伎を見たりして過ごした。
そして日が沈みそうになる頃、再び封鎖した坑道の前に立っていた。
「ルーサー殿、当然だが夜の坑道は完全な真っ暗闇。
灯りの準備は宜しいかな?」
「ああ。
俺はいつもこれを複数携帯している。
カルーノ殿にも一つ渡そう」
俺はマジックトーチの魔法がチャージされた指輪を指にはめ、もう一つ持っていたマジックトーチのチャージされたペンダントをカルーノに渡した。
体に装着することで、ランタン以上の光を放って周囲を明るく照らし出す。
「かたじけない。
有難く使わせて頂こう。
それでは扉を開けますぞ」
「ああ、開けてくれ」
カルーノは再び錠前の鍵を開け、重厚な扉を両手で開いた。
ギギギギギギ……
―――――――――――――― 坑道1F ―――――――――――
回回回回回回回回回回回回回回回回回回
回回回回回回回回回回回回回回回回回回
回回臭死_____溜___回回回回回
口_死死回回回回回回回回__回回回回
回回臭死回回回死__回回回__回回回
回回死死臭死_臭死_回回回回_回回回
回回死臭回_回臭死_回回回___回回
回回回回回_回死臭死______回回
回回回回回_回_死_回回回祈_溜回回
回回回回回_回回回回回回回___回回
回回溜___溜___回回回___回回
回回__溜___溜_回回回_溜_回回
回回_凹____________回回
回回溜___溜___回回回溜_凸回回
回回回回回回回回回回回回回回回回回回
回:硬い岩盤
口:坑道の入り口
凸:坑道の2Fへの階段
凹:坑道のB1Fへの階段
臭:俺がばら撒いた悪臭を放ち、毒マキビシの仕込まれた衣類
死:毒で死亡したコボルド・ウォーリア
溜:コアの入れ替えするコボルド・ウォーリアが死に絶えて時間が経ち、魔力切れで崩れ落ちた糞尿ゴーレムの残骸
祈:壁から恐る恐る顔を覗かせて様子を伺うコボルド・シャーマン
――――――――――――――――――――――――――――――――
「これは驚いた!
まさにルーサー殿の読み通り一網打尽でござるな!」
坑道入り口近くの広間は、散乱したフンドシや靴下、兜の下に付ける頭巾など、ドワーフの発酵仕掛けた汚臭の染みついた衣類にまみれながら、多数のコボルド・ウォーリアが死体となって転がっていた。
糞尿ゴーレム達も狙い通りに、魔力切れで崩れ落ち、あちこちに糞尿溜まりがあるのみである。
俺はホルスターからエイジド・ラブを抜いて慎重に坑道内に踏み込む。
「見たところシャーマンまでは仕留めきれてないようだ。
カルーノ殿、相手がユニーク個体なら本当の戦いはこれからだ。
足元に注意を払いながら付いてきてくれ。
自分で蒔いた毒マキビシを踏んで死んだら笑い話にもならないからな」
「あい分かった」
カルーノも慎重に床をペンダントの光で照らしながら俺の後に続く。
しばらく歩いても周囲に動く物の気配は無く、完全にシャーマン以外は壊滅したようだ。
そしてファブリ草でいぶしたかいがあり、臭いもマシになっている。
「ルーサー殿、あそこ、もしかしてあいつが……」
「ん?」
カルーノが坑道の奥の部屋の出口付近を指さす。
一見すると只の壁、曲がり角に見えた。
……チラッ、ササッ
……チラッ、ササッ
頭に羽飾りを付けたコボルドが何度もそぉっと壁からこちらを覗き込み、直ぐに顔を隠す。
「間違いない、コボルド・シャーマンだ。
カルーノ殿、挟み撃ちで追い込もう。
俺はこのまま中央の部屋からシャーマンを追う。
カルーノ殿はB1Fの階段がある部屋を通って回り込んでくれ」
「あい分かった。
それでは参る」
「追い立てるだけ、あまり刺激はしないように頼むぞ。
まだ相手の特殊能力が明らかじゃない内は、ユニーク個体に不用意に攻撃してはいけない」
「心得ている」
***
「撃っちゃうぞぉ――コラ! ほーら! ほーら!」
俺はエイジド・ラブを構えてコボルド・シャーマンに向けながらゆっくりと奥へ進んだ。
ビクッ ササッ トットットットットット……
シャーマンはこちらの動きに驚き、素早く引いて後ろへと逃げていく。
俺は慎重に周囲を警戒しながらさらに進み、坑道2Fの階段のある部屋へと踏み込んだ。
「ヴァフッ! ハッハッハッハッ」
飛び上がったシャーマンは自分の背丈の1.5倍は有るかという杖を持ったままさらに奥へと走り、B1Fの階段のある部屋へ入ろうとする。
「通しませぬぞっ! とっ捕まえてその首を捻り殺してくれる!」
カルーノに逃げ道を防がれて、シャーマンは後ずさる。
そしてキョロキョロ俺とカルーノを交互に見た後、2Fへ続く階段を駆け上った。
部屋の中央で俺とカルーノは再会する。
「逃がしてしまい申したな」
「いや、俺達はB1Fから3Fの4フロアあるダンジョンの中で、残り2フロアの所に敵を追い込んだんだ。
このまま追い詰めるぞ」
俺とカルーノはシャーマンの後を追い、階段を上がった。
***
―――――――――――――― 坑道2F ―――――――――――
回回回回回回回回回回回回回回回回回回
回___ル___________回回
回_凹_カ___回回祈_箱_箱_回回
回________回_箱____回回
回___回回回回_回回_回回_回回回
回回回回回回回回_回回_回回_回回回
回回回回回回回回_回回_回回__回回
回___回回回回_回回_回回回_回回
回_凸_回回回回_____回回_回回
回_______________回回
回回回回回回回回回回回回回回回回回回
回:硬い岩盤
凹:坑道の1Fへの階段
凸:坑道の3Fへの階段
ル:ルーサー
カ:カルーノ
祈:壁から恐る恐る顔を覗かせて様子を伺うコボルド・シャーマン
箱:狭い通路を封鎖してしまいそうな巨大な木箱。重い鉱石がいっぱい詰まっていて並みの人間には動かせそうにない。
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「あそこ!
まだシャーマンが居ますぞ!
まだこちらの様子を伺っているようでござる」
「たしか2Fの地図はっと……なるほど。
このまま追い込んでも通路が3本もあるからすり抜けて逃げられる可能性があるな。
ん?
あの箱、あれは何だ?」
「掘り出したミスリル鉱石を詰め込んだ箱でござる。
かなりの重量、700kgくらいはあろう。
普段は他の種族に比べて力の強いドワーフの炭鉱夫なら四人がかりでようやく持ち上げて運べるといったところ。
ひょっとしてあれで通路を塞ぐおつもりか?
だがさすがの某の筋肉魔法を用いても持ち上げるのは不可能。
せいぜい押して進むのが関の山でござる」
「引っ張ったりは無理か?」
「それは無理であろうな」
「ならばユニーク個体のシャーマンが逃げられない様に、俺達が3つの通路の奥へ進みつつ、3つの通路を封鎖し、なおかつ一本は帰り道として押して出られるように封鎖する必要がある。
作戦タイムだ」
俺とカルーノはシャーマンにチラチラ覗かれながら、地図を見て必死に策を練った。
***
「筋肉魔法・ヘビィクレート・プッシュ! フンフンフンフン――!」
ズリリリリリリ
俺はシャーマンが隙を見て1Fへ逃げ出さない様に1F階段付近で見張り、カルーノ殿は箱を押して通路を封鎖していく。
最終的には箱の周囲はこういう風に封鎖した。
どういう手順を取ったかって?
それはご想像にお任せする。
―――――――― 坑道2Fの封鎖箇所 ――――――――
_回回 回_回 回_回
_箱回 回箱回 回箱_
回_回 回_回 回回回
―――――――――――――――――――――――――――
「ルーサー殿、シャーマンの奴が3Fへの階段を上って逃げていきますぞ!」
「計画通り!
次のフロアでチェックメイトだ」