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魔法銃士ルーサー、カフェーでエビル・シオマネキを撃退する

 俺がおたゑちゃんを背負って集落の中へ入ると、畑を耕していた別の老婆が手ぬぐいで汗を拭きながら顔を上げた。


「あんれぇー。おたゑさん、お帰りぃー。かっこいいお兄さんと一緒だねぇ」

「フォフォヘファフェ(この方は)、フォフェファファ(ルーサーさんと言うんだよ)。

 カファエフェアヘアヘ(街道でモンスターに襲われていた所を助けて貰ったんだよ)」

「どうも、ルーサーと呼んでくれ」


 畑仕事をしていた老婆は鍬を置くと、ルーサー達を手招きする。


「わたすは『おちょう』と呼んでねぇ。

 長旅ご苦労さぁん。

 この集落はさびれてるけんども、カフェーがあるのよ。カフェーが。

 一緒にそこで休んで、お話聞かせてぇ」

「そうか、おたゑちゃんも疲れてるだろうし、そこで休ませてもらうとするか。

 いいかい?

 おたゑちゃん」

「フゴフゴ(そうねぇ)」


 俺はおたゑちゃんをおぶったまま、おちょうちゃんの後に続いてあぜ道を進む。


 ***


 カフェーは赤レンガの壁で出来た、この集落に似つかわしくないオシャレな外観だった。


「ここがカフェー、『ライオン』よぉ。どーぞ、入って入ってぇ」

「へぇぇ、これがカフェーか。始めてだな」


 ギィィィ


 俺はおちょうちゃんの後に続いて、中へと入る。

 カウンターでは、サザ〇さんを白髪にしてモコモコにしたような髪型の老婆がティーカップを拭きながらこちらを見てほほ笑んだ。


「いらっしゃぁぁい。

 いや、待ってたよぉ。

 やっとお客さんが来て……」

「ちょ、ストォ――ップ!」


「どうしたのぉ?」

「いっ、いや、何か不穏な気配を感じてしまっただけだ。

 だが、只の杞憂だったようだ。

 申し訳ない。

 さっ、おたゑちゃんもこの席に座って」

「フホフホフヘ(どうもありがとねぇ)」


「ねぇ、なに……」

「よしっ! カフェーを3つくれ。

 俺と、おちょうちゃんと、おたゑちゃんの分。

 俺が奢るよ」


「いいよいいよ、久々の村のお客さんだし、おたゑさんもおちょうさんも顔見知りだもの。

 代金はいらないよぉ。

 それじゃぁカフェー3つね。

 ちょっと待っててねぇ」


 カフェーの主人の婆さんは鉄瓶に水を入れ、火鉢の上に載せた。

 おちょうちゃんがカウンターに両手を置いて、俺とおたゑちゃんの方を見る。


「そういや、おたゑさん。

 街道でモンスターに襲われたんだってねぇ。

 お話聞かせてくれるかい?

 このルーサーさんってお兄さんに助けて貰ったとか……」

「フガフガフガ(それはねぇ……)」

「ア――ッハッハッハ!」


 突如、カフェーの主人の婆さんが両手を叩いて大笑いを始めた。


「おていさん、おたゑさんはまだなぁんも、話しとらんがねぇ……」

「ッハッハッハ、ごめんねぇ」


「じゃぁ、おたゑさん、続きを」

「フゴフガ(えぇとねぇ……)」

「ハッ、ハッ、ア――ハッハッハ!」


 再びカフェーの主人、おていちゃんは手を叩いて大笑いを始めた。

 おちょうちゃんは呆れる。


「これじゃ何も進まないがね……」


 ガチャリ


 不意にカフェーのドアが開き、店内の一同は入って来る新しい客に注目した。

 が、それは人ではない。


 カタカタカタッ、カタカタカタッ


 横ばいになって入店してきたのは体高2メートルほどは有りそうな巨大なカニであった。

 赤い目が爛々と輝き、人の半分程は有りそうな巨大な爪をギシギシを動かしている。


「皆後ろに下がれっ! こいつはエビル・シオマネキ。

 危険度レベル75の魔獣だ。

 その殻はダイヤモンドよりも固く、高度な知性を持って人語を理解し、攻撃魔法まで使う強敵だ」

「ひえぇぇ、お、おたゑさん、こっちへ急いで」


 おちょうちゃんが慌てておたゑちゃんを抱え上げ、カウンターの裏側へと避難する。

 俺は素早くホルスターから魔法銃マジック・ピストルを取り出した。


「ハヒホヘヒヘホヘア(大丈夫かい? ルーサーさん。今度もあの時の凄い銃でやっつけてくれるのかい?)」

「いや、こいつには黒曜石オブシディアンシェルも通用しない」


 俺の額に冷や汗が流れる。

 エビル・シオマネキとの距離5メートル、カフェー内での突然の至近距離登場。

 正直分が悪い。


「くそっ、こいつらは普通、海の浅瀬や海岸沿いに生息しているはずだ。

 なんでこんな場所に……」


 エビル・シオマネキは口をモシャモシャさせながら言った。


「フシュルシュルシュル、勇者のパーティーのルーサー。

 貴方が馬車から追い出され、一人になったのを私は見ていました。

 後を付けさせて貰いましたよ。

 さぁっ、ついに勇者のパーティーメンバーのルーサー、最後の時が訪れました。

 覚悟なさい」


 おていさんが手を叩いて大笑いする。


「アッ……ハッハッハッ。大きなカニだねぇ。これじゃ鍋に入らないよぉ」


 鍋……。

 カニ料理……。


「!」


 俺は有る事に気が付いた。


「お前……その腹の形、メスか?」


 エビル・シオマネキは口をモシャモシャしながら答える。


「フシュルフシュル、答える義務は無い」


 エビル・シオマネキの腹は雄のような「人」型ではなく、メスの「Д」型。

 明らかにメスだ。

 そしてエビル・シオマネキは高度な知性を持ち、メスが着飾ってオスを魅了する習性がある。


「おいっ、お前!

 さっきちらっと見えたが、お前の背中。

 カニビルの卵が一杯付いてたぞ」

「フシュル! え? 嘘? 嘘だといってよ!」


「いや、本当だ。間違いない。

 ぞわぞわっときた」

「いやぁぁ、本当に? 本当に?」


「間違いない。間違いないよな?」


 俺は後ろを振り向いて目配せをする。

 おていちゃん、おちょうちゃん、おたゑちゃんは3人同時に黙って頷いた。

 エビル・シオマネキは焦り始める。


「いやぁぁぁ! 気持ち悪いぃぃ!

 脱皮!

 脱皮しなきゃっ!

 ふんっ!」


 エビル・シオマネキは動きを停止し、体全体が白く変わった。


 ピリピリピリ……


 少しずつ殻に亀裂が入り、中から白いフニャフニャの体。

 脱皮したての体が這い出す。


「待ってたぜ……。

 この時をよ……」


 パパパパン!

 パパパパパパン!


 俺は脱皮したてのエビル・シオマネキに魔法銃マジック・ピストルを乱射した。

 いかに最強の殻をもつきゃつとて、脱皮したての状態で俺の放つ魔法弾マジック・シェルを防ぐことは出来ない。

 体中を穴だらけにされ、エビル・シオマネキは泡を吹いてその場に倒れ、動かなくなった。

「マジックナイト・ストーリー 魔法剣闘士と盗賊フェアリーの放浪英雄譚」の売りはやはり王道ストーリー、なろうテンプレではないファンタジーの王道の英雄譚にあります。

最初は未熟な主人公が出会う人々に生きる上での大切な物を学び、成長していきます。

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