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魔法銃士ルーサー、限界集落へ

「フイハフェンフェ(すいませんねぇ)、ファファフハヘヘホヘ(わざわざ手伝っていただいて)」

「気にするな」


 俺は放り出されたキャベツを5つほど拾い、立て直された荷車に積み込む。

 すぐ横で、一緒に魔獣に襲われていた娘も大根を3、4個抱えて荷車に積み込んだ。

 そして俺のすぐそばで俺に振り向いて言った。


「ルーサーさんって、恰好いいですね」

「おいっ! 婆さん! 無理するな。俺が積んでやるからそこの切り株にでも座ってな」

「フイハハハ(いやぁぁ)、ホホハハイホホハハヘホ(ここは若い方にお任せするかね)」


 俺はさらにイモ類が詰まった麻袋をズンッ、ズンッと積んでいく。


「そういやまだ、名前を聞いてなかったな」

「ワラヒハ(私は)、ホハヘホホーイ(おたゑと申します)」

「私はおたゑお婆ちゃんの孫で、ナオミ……」


「そうか、おたゑちゃんかぁ」

「イハハ(いやぁねね)、イイホヒハヒヘ(いい年なんだからちゃん付けなんて)」

「ルーサーさぁぁぁ――んっ!」


「何だよいきなり大きい声だして?」

「何でさっきから私の事無視するんですかっ!?

 虐め? 虐めですか?」

「ハホヒヤ(ナオミや)、ソンハホホイホヘハ(そんな事言うもんじゃないよぅ)」


 そうか……。

 虐めと受け取ってしまっていたか。

 俺自身、自覚無く人を傷付けてしまっていたようだな。

 ハブられる事の辛さ、俺はさっき身に染みて感じたばかりじゃないか。

 人のふり見て我がふり直せ……か。


「ナオミ」


 俺はナオミの肩をポンポンと叩いた。


「誤解させて済まない。

 俺はナオミの事もちゃんと愛してるぞ」


 愛。

 愛だ。


「へっ? え?」


 俺は黙ってナオミを抱きしめた。


「愛してるぞ。(人類として)」


 人類愛。

 勇者のパーティーの必須条件だ。


「ちょっ、そんな……急に……」


 ナオミは真っ赤な顔でモジモジしている。


「それより早く最前線のメイウィルドに食料と物資を届けてやれ。

 皆がまっているからな。

 ほれっ」


 俺はナオミから離れると、小さなワンドをナオミに渡した。


「もし道中でまた魔獣に襲われたらそのワンドを空に向けて使え。

 魔法の花火が出て遠くから見える。

 そうすりゃ駆けつけるよ(誰かが)」

「あ、有難うございます!」


 俺はおたゑの方へと歩み寄り、おたゑを背負った。


「ハハフハ(あらまぁ)」

「おたゑちゃんよ、その年で物資輸送の荷物運びは厳しいだろ。

 家でゆっくり休めばいい。

 俺が送ってやるよ」


 荷車を引く馬の横でナオミがポ――っとした顔で俺を見ている。


「何してる。早く行け!」

「はっ、はい!」


 ナオミは馬に飛び乗ると、荷車を引かせてメイウィルドへと走り去った。


「おたゑちゃん、ようやく二人きりになれたね」

「ホウヘェ(そうねぇ)、フハヒヒフヘ(二人だけだねぇ)」


 ***


 俺はおたゑちゃんを背負ってドーラの町の方向へとしばらく歩いていた。


「ホヒヘ(こっち)、ホヒヘフベラ(こっちですよ)」

「そっか、ドーラの町じゃなく、外に住んでいるんだな」


 おたゑちゃんに示されるまま、街道から横にそれて獣道と見間違えそうな細い道を進む。

 森の中をしばらく進むと、幅5メートルほどの小川へ出る。

 小さいとはいえ、蛇行したカーブの端辺りは腰ほどの深さは有るだろう。


「困ったな。いつもどうやって渡ってるんだい?」

「ハホホハヘ(あそこから)、ハイハフヘホヘ(対岸へいきます)」


 おたゑちゃんは上流の方を指さした。

 岩場が露出した高さ3メートルほどの滝が有り、その上に浅瀬があるようである。

 だがその滝の上まで登っていくのは急な坂道を上る必要があった。


「おいおい、町の奴らは橋も作ってくれねぇのか?

 俺に任せな」


 俺は魔法銃マジック・ピストルを取り出し、風霊弾ウィンド・シェルの入ったカートリッジを装填した。


「あそこ、対岸にちょうどまっすぐで手ごろな二本の木があるだろう?」

「ホヘ(何を?)」


「まぁ見てな。スキル・速射クイック・ショット!」


 ズバババババン!

 ズバババババン!


 凄まじい速度で風の精霊の力を纏った弾丸が飛び、巻き起こす風のカッターが二本の木の根元を切り裂いた。

 俺の速射クイック・ショットは片手で一秒間に15発は撃てる。


 ギギギギギ……

 ドサッ!

 ドサッ!


 二本の木が根元からへし折れるようにしてこちら側へと倒れ、小川の上に橋を作り上げた。


「ハンヘハフホヘ(あんれまぁ――)」

「ま、コスト3万ゴールドといったところか」


「フヘアホハイハ(ふぇぇ、勿体ない)」

「おたゑちゃんの為だ、安いもんだよ」


 俺は再びおたゑちゃんを背負い、自分が作り上げた丸太橋を渡る。


 ***


 しばらく草ぼうぼうの道を歩き続けると、ようやく空を覆う木の無い開けた場所へと出た。

 あちこちに質素な家が建っている。

 6、7軒は有るだろうか。


「ここかい? 結構人がいそうな集落じゃないか?」

「ホホホハヒハホヘヒハフ(男は皆、魔獣との闘いで死んじまってねぇ)、

 ホフハホヘヒホヘホヘ(女も若い者はみんな都会に出てしまって)、

 ホフハ(残っているのは私のような年寄りのおばばばっかりだよ)」


「ほぉぅ? そいつは楽しみだなぁ」

「ハフハハヒヘハ(なぁんも無いところだけども)、フヘヒヘヘ(ゆっくりしてってぇ)」

仕事で忙しい合間に時間を捻出して小説を書いているので、更新が滞ることが有るかもしれません。

申し訳ありませんがその時は、私の別作品を替わりに読んで待っていただければと思います。


2115年、アンドロイドの救世主 ……サイバーパンクSFが好きならこれ

マジックナイト・ストーリー 魔法剣闘士と盗賊フェアリーの放浪英雄譚 ……号泣。王道ファンタジー

世紀末悪役令嬢伝説 悪役令嬢として転生した冴子はモヒカン野郎共を導き異世界を征服する ……笑い死に注意、コメディ。

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