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魔法銃士ルーサー、ミツールの意外なユニークスキルに驚愕する

「勇者辞めます!」

「……はぁ」

「えぇっ!?」

「…………」


 ミツールの声にため息をつく俺と、動揺する木の大賢人タカーシ。

 早く終わらないかなーと沈黙を続けるダイヤ。

 だがエリックが顔を上げて言った。


「木の大賢人タカーシ様、失礼ながら貴方は嘘を付いておられます」

「う、嘘だと? わしがどんな嘘をついたというんだね?

 申して見よ。

 下らぬ言いがかりであれば許さんぞ」


「私の家系は代々クレリック、私の家系のみ伝わる秘術もいくつかあります。

 その中にはアンデッドの毒に犯された重症患者を治療する秘術があるのです。

 やり方は……タカーシ様のおられる大賢者の木、世界各地には何本も生えている所があり、洞が出来ている物もいくつかあります。

 患者をその中へ閉じ込めて治療するのです。

 確かに大賢者の木には邪なる物、毒や異物を除去し、生命力を活性化させる効果がありますが、人に不老不死の力を与える効果はありません。

 大賢人タカーシ様の不老不死の力は、大賢者の木による加護ではなく、タカーシ様自身の力によるものでしょう。

 つまり、この世界へと転移する際に女神より特別な力を授かっておられるのです」


 木の大賢人タカーシは、『えっ?』という驚愕の表情をしてフリーズしていた。

 だが髭を整え直しながら答える。


「よ、よくぞわしの嘘を見破った。

 クレリックのエリックよ。

 もちろん自分自身の能力じゃ、十二分に認識しておる。

 そなたたちを試させて貰っていたのだ。

 ミツールよ、そなたはステータスと言う物を見たことが有るか?

 異世界転移者のみに使用可能な魔法だ」

「いや、無いけど」


「ならばそれで己のスキルを確認して見よ。

 こう唱えるのだ。

 『ステータス・オープン』」


 木の大賢者タカーシの声と共にタカーシの前5メートル程の位置に半透明な四角いプレートが出現した。


 ―――――――――――――― タカーシのステータス――――――――――――――

 レベル:1

 種族:アイドル ※特殊種族

 筋力:12

 知力:53

 俊敏さ:13


 【スキル】

 話術:レベル32

 詐術:レベル15


 【ユニークスキル】

 酒の密造:レベル11

 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「流石は異世界転移者のタカーシ様、この知力は賢者級だ。

 ……レベル1としては」

「タカーシ様、お酒好きなのね」

「流石大賢人タカーシ様、この表示を見てご自分の不老不死能力を看破しておられたとは。

 恐らくアイドルというのが異世界の不老不死能力者にあたるのでしょう」

「ステータスオープン」


 ミツールの声と共に、ミツールの前にもステータスが表示される。


 ―――――――――――――― ミツールのステータス――――――――――――――

 レベル:2

 種族:人間?

 筋力:17

 知力:8

 俊敏さ:15


 【スキル】

 剣術:レベル1


 【ユニークスキル】

 屁理屈:レベル32

 ティッシュ・スローイング:レベル45

 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「ぎゃぁ~~っはっは! 馬鹿じゃぁ! 大馬鹿じゃぁぁ!」

「レベル1に言われたくないなぁ」

「ふむ、やはりミツールは戦士系、そちらを伸ばす事を重視すべきだな」

「屁理屈レベル32って、うっざ。もうまともに会話するのやめよっかな」

「『人間』ではなく、『人間?』と?が付いている部分が重要ですね。

 恐らくそこにミツール殿が授かった力の秘密があるはずです」


 まじまじとステータスを観察していた俺はふと、ある表示が気になった。


「ミツール、ティッシュ・スローイングのレベルがカンストに近いように見えるが、ティッシュって何だ?」

「いや、それは、えっと、武器の一種で」

「ぷっ……ひゃっひゃっひゃ」


「スローイングなんだからお前の世界の投擲武器の一種か?」

「そうです。投げる武器なんですけど、あいにくこの世界には存在しない武器なんですよ」

「くっくっく」


「タカーシさんは黙ってて!

 この世界に似たような武器は存在しないし、どんな武器か説明をしても貴方達には理解出来ないですよ」

「いや、スキルにはシナジー効果と言う物があるからな。

 剣術のスキルの影響は長剣スキルにもシナジー効果としてブースト補正を与える。

 だから戦士は似たような種類の武器スキルを沢山極め、モンクはあらゆる格闘技を覚えようとするのだ。

 お前に投擲武器のスキルがあるなら、それに似た武器をこれから並行して鍛えるべきだ。

 そのティッシュとやらを投げるのに何か道具を使うのか?」


「……素手かなぁ」


 ブー、グズグズ


 突如、木の大賢者タカーシは懐から鼻紙を取り出し、鼻をかんだ。

 そして蔦の格子窓から手を出し、それをミツールに受け渡す。


「うわっ、汚なっ」

「勇者ミツールよ、それを向こうの木の幹に止まってるカブトムシが見えるな?

 カブトムシに向けて投げて見よ」


 ミツールは上から投げ下ろすようなフォームで鼻紙を投げた。

 グシャグシャに丸められた鼻紙は綺麗な軌道を描いて空中を飛び、10メートルは離れた木の幹に止まるカブトムシに命中、角に突き刺さる。


「おおおっ!」

「やるなぁ」

「器用ね」

「凄いですよミツール殿! ダガーを投げたりする人は居ますが、こんなに軽くて不均一な形で、風に流されてしまうような鼻紙をあんなところに命中させるなんて普通出来ませんよ!」

「ほれほれ、もうちょっと投げてみるんじゃ」


 ミツールはポイポイと木の大賢人タカーシから丸めた鼻紙を受け取る。

 それを内からのサイドスロー、外からのサイドスロー、アンダースロー、果てはターゲットに背中を向けた後ろ向きスローで投げ、全てを命中させた。


「フム、間違いないのぉ。そなたのユニークスキルの力は本物じゃ」

「さすがレベル45だ、これは間違いなく戦力になり得る。

 今度町で武器屋に寄ったとき、何か投擲武器を買ってやろう」

「凄いわね。ちょっと見直したわ」

「投擲が出来る戦士って万能ですよミツール殿!」


 ミツールは鼻の穴を膨らまし、得意げな顔で向き直った。


「そう? まぁ芸は身を助けるってやつかな」


 俺は木の大賢人タカーシに再び頭を下げた。


「有難うございました。大賢人タカーシ様!

 勇者ミツールは貴方様のご助言により大幅に戦力アップが見込めるでしょう。

 ここに来て本当に良かった、タカーシ様に感謝しております。

 お礼に今度ここに来たときは何か、お酒をお持ちしましょう」

「よい。

 ま、酒は頼んだぞ。

 あと何かつまみもな。

 この木の中ではそれくらいしか娯楽が無いからのぅ」

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