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魔法銃士ルーサー、右手に愛を、左手に死を、悪党どもには鉛の嵐を

「ヒッ……、ヒッ……」

「め、メイちゃん、気にするなよ。たかが銃だ。その内素材なんてどこかで手に入るだろうし、そん時また頼むよ……」


 スミスハンマーを片手に持ったまま、メイちゃんは片手を目に当ててすすり泣き続ける。

 手は炭で真っ黒、当然こすり続ける目の周りも真っ黒でパンダ状態だ。

 まいったな……メイちゃんの事もそうだが、俺も銃が無いと色々辛い。

 そうこう考えていると、背後で扉が開く音がした。


「メイさーん?

 こんちわぁ~

 メイさん居っけ?

 ちっとばっかしお鍋を直して欲しいんだけっど?」


 入って来たのはおていちゃんである。

 両手で底の抜けた鍋を抱えてこちらを覗き見る。


「あら、ルーサーさん居たんさぁか。

 どうしたのメイさん?

 何かあったの?」

「ヒック……、ヒック……」

「じ、実は……」


 俺は事の顛末をおていちゃんに説明した。


 ***


 数十分後……メイちゃんの作業場には村中の老婆達が集合していた。


「ヒック……、ヒック……」

「メイさん、終わってしまった事はどうしようもないよ……ルーサーさん優しいから許してくれるって言ってるし元気だしなよ……」

「そうだよメイちゃん気にするなって……」


「メイさんや。これを使ってルーサーさんに新しい銃を作っておやり」


 背後から響く声に皆が注目する。

 老婆達が道を開け、出てきたのは大きな風呂敷包みを抱きかかえたカエデちゃんであった。


 ゴトッ


 カエデちゃんは歩み出て机に風呂敷包みを置き、包みを開く。

 中からは赤く輝く巨大な茶釜が現れ、眩い光を周囲に放ち、取り囲む老婆達が一瞬目を細めた。

 おていちゃんがそれを見て驚く。


「カエデさん! それひょっとして……」

「ヒヒイロカネの茶釜じゃ。まぁ10億ゴールドくらいの価値じゃの」

「い、いや待ってくれカエデちゃん、さすがに10億ゴールドの茶釜を溶かすなんで無茶だ。

 俺だって気が引けて受け取れねぇよ」


「ルーサーさん、この前家を買ってあげると言ったのに、あれから声を掛けてくれないじゃないか。

 まぁ薄々分かっては居たけどもね。

 おたゑちゃんの家が良いんじゃろう?」

「そっ、それは……」

「ヒューヒュー!」


「今度こそ受け取ってもらうよ。

 これは以前私の命を助けて貰ったお礼だよ」

「……すまねぇカエデちゃん。

 超希少な伝説の鉱石のヒヒイロカネ、銃の材料としてはこれほどいい物はねぇ。

 有難く頂戴するよ」

「わーい!」


 メイちゃんは素早く茶釜を手に取ると、カンカン叩き始めた。

 みるみる内に赤く輝くインゴットに形を変える。


「流石は天才鍛冶仙女だねぇ。オリハルコンよりも固いと言われるヒヒイロカネを軽々と……」

「フーファーファン(ルーサーさん!)」


 おたゑちゃんの声だ。

 老婆達の間を通り、おたゑちゃんが風呂敷で包んだ2本の一升瓶のようなものを抱えて現れた。


「フガフフホヘハンヘ(銃が壊れちゃって困ってるだってぇ? どうぞこれを材料に使ってねぇ)」

「ありがとうおたゑちゃん、本当に助かる」


 おたゑちゃんは風呂敷包みを開けた。

 中から現れた2本の瓶の中には金色に輝く粉がみっちりと詰まっており、周囲が黄金色の光に包まれる。


「これは南国のカンバス島の名物、カンバス金色砂だねぇ」

「島の名所の緑の洞窟をボートで抜けた先にあるという小さな砂浜の砂じゃのぅ」

「ヒヒホハホハハンフ(一郎さんと50年前に旅行した時の思い出の砂だけど、ルーサーさんの為にこれ使って頂戴ね)」

「大切な思い出の品なんだろ? ちゃんとしまっときなよ」


「ホホヒファフヘ(思い出ならちゃんとここにあるよぉ)」


 おたゑちゃんは片手を胸に当てて目を閉じた。


「悪いな……俺の為に……」

「おおぉ! 間に合ったか! ルーサーさん!

 これを銃を作る材料に使っておくれぇ!」


 遅れて駆け込んできたのはクロリィちゃんである。

 息を切らしながら走り寄り、両手で抱えていた大きな壺をドンと机に置いた。


「これは?」

「ひっひっひ!

 メイさんや、扱いには注意されよ。

 これは伝説の怨霊カダーコの骨じゃ」


 ポンッ


 蓋を開けるとまるで真冬のように冷たい空気が周囲に流れ、全員の肌を悪寒が襲う。

 作業場の壁に掛けられた大小さまざまな鍛冶道具は風も無いのにガタガタガタッと細かく勝手に動き始めた。


「有難いがこれ……呪われてるんじゃないか?」

「もちろんじゃ。そうでなければわざわざ出さんよ。

 怨霊の本体は地縛霊となって今でもミルトン王国首都の万年売家に噛り付いて入る人を襲い続けておる。

 わしはその家の裏庭の地中深くにあったこの骨の気配を感じ、夜中に掘り起こして貰って来たのじゃ」


「よくもまぁそんな恐ろしい物を触ろうと思えるな。クロリィちゃんすげぇ」

「ひっひっひ!

 板前が魚を恐れるかぃ?

 これは膨大な魔力を持っているから何かの素材に使えると思ってしまい込んでいたんじゃが、丁度いいグッドタイミングって奴じゃ。

 ルーサーさんの銃を作るのに使ってくれい」

「それじゃぁルーサーおじちゃんの新しい銃を作るね?」


 今まで泣いていたのがウソのようにワクワクキラキラとした態度のメイちゃんが材料をもって炉の方へ移動する。


「えぃっ! カーン! カーン! カーン! の カーン!」


 オリハルコンのヒヒイロカネのインゴットを火にくべた後、カンバス金色砂を振りかけては何度も何度も折りたたみ、あっという間に成型していく。


「えいっ! ゴッチーン!」


 ビシッと叩くと銃のフレームに波紋が走り、固まる。


「さらにこっちも、えいっ! えいっ! えいっ!」


 カダーコの遺骨をを少しずつ取り出してはオリハルコンの残骸に練り込むようにして叩きのばしていく。

 そのハンマーの一撃毎に、周囲に冷たい風とうっすらとした人魂のようなものが飛び散った。

 さすがは天才鍛冶仙女。

 金属だけじゃなく、呪われた骨ですら精錬しているのである。


「出来たぁ!」

「おおぉ、やったぁ!」

「おめでとう!」

「よかったねぇ!」


【ヒヒイロカネ魔法銃『エイジド・ラブ』 強化+8】

 攻撃力:250

 放熱効率:250

 精密性:240

 速射性ファイヤレート:270

 特徴:ヒヒイロカネの特徴、超放熱特性によりこの世に二つとない速射性能、フレームの安定による精密性、耐久性を誇る最高の銃である。

   銃身は赤く輝き、特殊加工された銃口の特徴で、発砲時に銃口の先に広がるハート型の発砲炎マズルフラッシュが特徴的である。


【カーズドボーン魔法銃『デス・オーメン』 強化+7】

 攻撃力:300

 放熱効率:90

 精密性:170

 速射性ファイヤレート:180

 特徴:死を欲する拳銃は銃弾をも操る魔力を持つ。

    弾丸の軌道を自由自在に曲げる……なんてことは無いが、運命力を操作して命を刈り取る隙を常に伺う意思を持つ。

    保管の際も所持の際も厳重に扱わなければ、偶然地面を転がり、偶然銃口が沸騰した鍋の方を向き、偶然落ちた隕石がトリガーを引いて偶然鍋に人が近寄ったタイミングで発砲。

    ぶちまけられた熱湯で大やけどを負わせた挙句、転がった鍋が跳ね上げた包丁が偶然その人の心臓に突き刺さって死亡。

    なんてことを起こしかねない。

    速射性は無いが高威力の弾丸を放つ。

    なお、属性弾じゃない通常弾を撃った際は、強制的に死属性を付与する力を持つ。


「すげぇぇぇ!」

「凄い? メイ凄い?」


「すげぇよ、こんな銃ならエビル・バッファローの大群に囲まれても怖くねぇぜ」

「やったぁ!」


 ズシン ズシン

 シャン、シャン、シャン


 俺が右手に『エイジド・ラブ』、左手に『デス・オーメン』を持って感激していると、鍛冶屋の外にズシン、ズシンという鈍い音と鈴の音が一定間隔で響き渡る。


「なんだ? 誰か外に来てるのか?」


 作業場の外に出るとそこには、道服を着て鈴がいっぱいついた棒を振るリンシンちゃんと、キョンシーと化したおちょうちゃんが居た。

 おちょうちゃんは頭に巨大な木箱を3つも載せてバランスを取っている。


「カエデさん、カエデさんの倉庫から言われた物を持ってきたよ」

「おおぉ、ありがとうリンシンちゃん、木箱をそこの地面に並べて置いておくれ」


 おちょうちゃんは軽くジャンプして木箱を頭からまっすぐ前に伸ばした両腕へと移動させる。

 そして重力に逆らうように前に倒れ込みながら地面に置いた。

 カエデちゃんは木箱の前に出ると俺の方を振り向いて言った。


「私からのもう一つのプレゼントじゃ。

 ルーサーさん、開けてみておくれ」

「おうっ!」


 俺は木箱の一つの蓋を開ける。

 そこには人の身長ほどもありそうな、金属の筒を6本束ねたような銃の化け物が緩衝材に包まれて横たわっていた。


「な、なんだこりゃぁ!」

「西国の軍事機密施設から裏社会に流れていた最新兵器だそうな。

 借金の返済の代わりにとある男が差し出してきたんじゃが、私には使いようが無いしの。

 『バルカン砲』というそうじゃ。

 なんでも船に添える大砲みたいなものとか」


【バルカン砲『M99α』】

 攻撃力:150

 放熱効率:200

 精密性:100

 速射性ファイヤレート:300

 特徴:台座が付いており、設置武器として使う。

    重さが100kg以上あり、とてもじゃないが持ち歩けるものでは無い。

    だがその分威力も速射性も桁違いである。


「すげぇ、だがこれどう使うんだ……、いや、使い方は銃の一種だけあって何となくわかるが、どういう時にどう使うんだ?」

「それは専門家のルーサーさんしか考え付かない事だよ。他の箱も開けてみな」


 残り二つの木箱も開ける。

 その中にはびっしりと魔法銃の弾丸のカートリッジが詰まっていた。

 各種属性分揃っている。

 バルカン砲用のベルトリンクまである。


「助かるぜカエデちゃん。

 実は弾丸のカートリッジの残りが心もとなかったんだ」

「喜んでもらえて私も嬉しいよ。

 ただその魔法銃のカートリッジ、保管用だったから魔力は籠っていないから、魔導士系の専門家に魔力を込めて貰う必要があるの」

「それでは」

「わしらの」

「出番よのう」


 リンシンちゃん、クロリィちゃん、ノーバちゃんが歩み出る。

この物語は肩の力を抜いて気楽に頻繁に連載しようと思ってましたが厳しいですね。

お話を気に入って戴ければ、待ちの間は

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等を読んでお待ちください。

それぞれの独特で個性的な世界の中で、様々な物語の中で、様々な個性的な主人公が貴方をお待ちしています。

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