魔法銃士ルーサー、天才鍛冶仙女メイちゃんに魔法銃を強化して貰い、そして・・・
エビル・アナグマの騒動の翌日。
まだミツールの訓練を初めて何日も経っていないが俺は休暇を貰う事となった。
あの戦いで受けたダメージはクレリックの家系に生まれた新兵、エリックに緊急治療をして貰ってある程度は治った。
だが俺の命に別状がない所で神聖魔法での治療はストップされた。
本来、治癒魔法というものは人間の体の新陳代謝を促進させ、体内の時間を加速させるようなものであり、緊急時以外に推奨されるものではない。
高速で新陳代謝が行われるという事は、栄養補給無しの自然治癒を行うに等しい行為。
体への負担も大きい上に、長期的に見れば自然治癒よりも効率が悪く、万が一傷口にもし毒物が付着すればそれを高速で全身に巡らせて重症へ追い込む事になる。
この世界、どんな緊急時でも毒を受けた味方に対してヒーラーが解毒の前に回復魔法を絶対に掛けないのはそういうことだ。
なお、スラールさんのメイウィルド移動は延期となった。
最前線の膠着により、まだ本格攻勢に出れる状態ではないとの事。
そしてミツールは新兵として2、3日訓練してくれる。
甘えた幻想ではなく、『現実』を見て、ミツールは少しはしおらしくなったと聞いている。
エリックに『なんでもする』と言った借りがあり、彼が今は手綱を引いてるような状態だそうだ。
ま、放っておく訳にはいかないので明日当たり様子を見に行くつもりだがな。
ぶっちゃけ信用ならんし。
……背後から全力で弓を撃ちやがって……。
「フファーファン、アファフォファンファフェ(ルーサーさん、朝ごはんの準備が出来たよぉ)」
「悪いなおたゑちゃん。今行く」
俺は今へ向かい、朝ごはんの用意されたちゃぶ台に向かい、座布団に座る。
今日はご飯、シジミの味噌汁、ナスの揚げびたしにサワラのサイキョー焼き。
「凄いな、おたゑちゃんの作る料理は一流の旅館並みだぜ。
毎食楽しみでしかたがないよ。
それじゃぁ頂きます」
「ホファファフィ(お上がりィ)」
俺は茶碗からご飯をかき込み、隣ではおたゑちゃんがニコニコしながらお茶を入れてくれる。
そして黙って俺の顔を見ていたおたゑちゃんが言った。
「フーファファン、フィフェンヒフィハハ(ルーサーさん、眉間に皺が出来てるよぉ)」
「えっ?」
俺は慌てて箸を置き、自分の顔の眉毛と眉毛の間を人差し指でさする。
「な、なんじゃこりゃぁ!」
いつのまにか皺が出来ていた。
思い当たる事、言うまでもない。
あの糞ミツール、アイツを相手にしてて、自然と色々なストレスが体に現れてしまったのだろう。
「オフィホヘハ、ホウホウ、フハホヘハ(お仕事大変なんだねぇ。
そうそう、銃が壊されたって言ってたでしょ)。
ハヘホフォフハヘホ、フハッフフヒヘハ メイ(たけのこ村にもブラックスミスが居るのよぉ。
天才鍛冶仙女と呼ばれるメイさんがね)」
「天才鍛冶仙女!
凄そうだな。食事を終えたら向かわせてもらうよ。
どこに居るんだい?」
***
俺は朝食を終え、たけのこ村の裏手からさらに先、竹藪を抜ける細道を進んでいた。
300メートルほど行くと、切り開かれた場所に出る。
そこには一軒の家、それに隣接する資材小屋、作業小屋があった。
資材小屋には炭や鉱石などが雨ざらしにならないように積み上げられており、作業小屋の煙突からは黒い煙がモクモクと立ち昇り、カーン! カーン! と甲高い音が断続的に響いている。
「こんにちは!」
作業小屋の前で俺が声を上げると、金属音が止まり、ドアがギギッと開く。
顔を出したのはセミロングで中分けパーマのお婆さん。
なお、耳は尖っていてエルフ族であることが分かる。
片手にはハンマーを持ち、胸にはあちこちに焦げ跡の付いた皮のエプロンを付けている。
「よう、天才鍛冶仙女というのはあんたかい?」
「おじちゃん、だあれ?」
うむ。間違いない。
事前におたゑちゃんから聞いていたが、天才と言う物は変わり者が多い。
そして何十歳になっても、例え老婆となってもまるで子供の頃のような好奇心や遊び心を忘れない。
天才鍛冶仙女のメイ。
彼女は実はエルフ族で300年以上生きている。
だが言動は一見、幼女のようだとのこと。
つまり、ババアロリと言えるだろう。
……そういうのも、中々いいじゃねぇか。
しかし腕は超一流とのこと。
「俺は魔法銃士のルーサー、数日前からおたゑちゃんの家で世話になっている」
「ふぅん。おじちゃん、何しに来たの?」
「メイちゃんが超一流の鍛冶仙女と聞いてな、ひょっとして俺の壊れた銃も修理出来るんじゃないかと……」
「見せて?」
「実はこれなんだが」
俺はエビル・アナグマにかみ砕かれた魔法銃のバラバラの部品が詰まった袋を渡した。
「そっちにも持ってるでしょ? 見せて? 見せて?」
「こ、これか? こっちは大丈夫なんだが」
俺はホルスターにつけていた無事な方の魔法銃もメイちゃんに渡す。
メイちゃんは銃のあちこちを見ていたが、突然、作業場の方へと走り去る。
そして思い出したかのように作業場の入り口から顔を出して手招きする。
「ルーサーおじちゃん、こっち! こっち!」
「お、おぅ」
俺はメイちゃんに誘われ、作業場へ入った。
作業場の一角には赤赤と炭が燃える炉があり、あちこちにカナテコやハンマー、火箸やペンチやらが置いてある。
メイちゃんは手早く無事な方の銃を分解すると、目を輝かせながら言った。
「ねぇルーサーおじちゃん、この銃強化してないでしょ? 強化していい?
ねぇ強化していい?」
「強化? 確かに普通の武具なら金属部分を精錬して強化したりするが、その銃はオリハルコン製。
ドワーフ族の長老が作った地上最硬度金属、どこの鍛冶屋でも強化は無理だと断られたんだが、出来るんならそりゃもちろんやって貰いたい」
「やったぁ! 触媒ポイポイ! 灰をポイポイのぉ――!
キメラの血とリッチの灰をマゼマゼしてぇ――!
グールグルゥ!」
メイちゃんは分解された魔法銃のフレームに白い粉を掛け、近くのボウルに血や灰を入れてかき混ぜ始めた。
そしてフレームをジャブジャブとそこに付け込んだ後、火挟みで掴んで炉に入れる。
「ボゥボゥボゥのぉ――カンカンカン―――!」
真っ赤に焼けたフレームを取り出し、ハンマーで叩くとあっという間に四角いオリハルコンのインゴットに代わる。
それを何度も繰り返した後、目にも留まらない早業で成型していく。
「最後に、ゴッチ――ン!」
最後のハンマーで衝撃波のような物がフレーム全体に広がり、反動でオリハルコンが高質化する。
【オリハルコン魔法銃 強化+1】
攻撃力:105(+15)
放熱効率:35(+5) ※銃は連続射撃するとオーバーヒートする。放熱効率が高い程それに耐性を持つ。
精密性:80(+10) ※命中率に影響
速射性:150(+25) ※トリガーの軽さ
「おぉぉ! 凄ぇ!」
「ねぇスゴイ? メイ、スゴイ?」
「すげぇよ、この世の最高硬度のオリハルコンをこんな一瞬で成型するもの凄ぇが、作りの精密さも、ライフリングの刻みも完璧だ!
本当に天才鍛冶仙女というのは伊達じゃないんだな!」
「よぉし! +2行ってみよ――!」
メイちゃんは再び銃を分解し、フレームを溶かし始めた。
カンカンと音を響かせて瞬く間に強化していく。
「出来たぁ!」
【オリハルコン魔法銃 強化+2】
攻撃力:120(+30)
放熱効率:40(+10)
精密性:90(+20)
速射性:175(+50)
「うおぉぉぉ!」
「ルーサーおじちゃん、もっと行っとく? 限界まで行っとく?」
「た、頼むぜ!」
「ホイサー!」
カーン! カーン! カーン!
【オリハルコン魔法銃 強化+4】
攻撃力:140(+20)
放熱効率:50(+20)
精密性:100(+30)
速射性:200(+75)
「おおおぉぉ! すげぇええ!」
「おじちゃん、これ以上は壊れるかも知れないけどギャンブル行っとく?」
「頼むぜ!」
カーン! カーン! カーン!
「もいっちょ行っとく?」
「おうよっ!」
「もいっちょ――!」
カーン! カーン! カーン!
「まだ、まだ強化出来る可能性が微レ存。どうする?」
「限界まで行こうぜぇ!」
「限界まで行こうぜ――っ!」
カーン! カーン! バキッ!
「……」
「……」
「め、メイちゃん?」
「……ヒッグ、……ヒッグ」
「だ、大丈夫だよ。元々強化なんてしてなかったんだ。元に戻してくれたら問題ないからね?」
「精錬し過ぎてオリハルコンの素材が無くなっちゃったの……うえぇぇぇ」
「仕方ない、エビル・アナグマに砕かれて壊れた方の銃の素材を使えば少なくとも一丁は……」
「そっちのオリハルコンを使って今まで強化してたの。
精錬して素材の分量は擦り減っていくんだもの。
当然でしょ?
ルーサーおじちゃんの馬鹿ぁ――!」
……やべ。
どうしよう。
物語というものは難しいですね。
私は『こういうシーンが有ればカッコイイ』という状景をキャラクターと場面、状態を配置して作るのは割と得意だと思うのですが、キャラ作り、キャラ立てと言う物にまだ慣れきっては居ません。
(マジックナイトストーリーの方も、シーンの組み立ては格好いい物を一杯用意していますが、演者がまだ弱い気がします)
良いキャラってのは別にリアルである必要は無く、決して人生経験や人間経験を積み上げて無ければ作れない物ではないとは思ってます。
例えばル〇ン三世のル〇〇と次〇と五〇〇〇を使って小説を書けと言われれば、大体のなろう作家はそれなりの物語を作れると思います。
何故なら彼らはキャラが立っているから、勝手に物語を作ってくれるんですね。
ある意味キャラって発明品ですね。