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魔法銃士ルーサー、カルーノと一緒にドローラを誘導する

 俺は一旦オーブ・ジェクトルの守る本陣まで走って引き返し、そのまま道沿いにカルーノのいる北側へと進んだ。


「おっと、道具の補充もしておかないとな」


 道中、無人となった錬金術師の店に立ち寄り、使えそうなアイテムを頂戴する。

 各種ポーションに身代わり人形、テレポートリングにインビジビリティリング。

 勿論、代金は後で払うつもりだ。


「カルーノ殿、無事でいてくれよ」


 素早く荷物を整理し、再び走る。

 そしてついにカルーノの居る場所へと辿り着いた。


「こりゃぁ、凄い激戦だったようだな」


 周囲の森の木々は尽く枯れており、下草も直線状に枯れた後が多数あった。

 ドローラが両手を前にかざす。


(スキル・幽霊の行列ゴースト・プロセッション!)


 両手から無数の霊体が出現し、行列となってカルーノの方へと突き進む。


「ふんぬっ!」


 カルーノは素早く転がりながら横に回避し、霊体の行列は背後の木々と下草から生命力を奪いながら突き進んでいった。

 俺はカルーノにヒールポーションを投げる。


「カルーノ殿! 待たせたな!

 とりあえずヒールポーションだ!」

「かたじけない!」


 多少の傷を負っていたカルーノだが俺から受け取ったヒールポーションをがぶ飲みして回復する。


「中央と南の連中は大丈夫でござったか?」

「あぁ、まぁなんとか。

 それより敵の全貌がようやく掴めた」


「危ないっ!」

「おっと」


 俺とカルーノが左右に飛んで避けた真ん中を、再び霊体の行列が通過する。


(それがし)も収穫があったぞ。

 あのドローラというモンスターの特性を一つ、暴きもうした!」

「それは凄い! 教えてくれ」


 カルーノはドローラの攻撃を回避し続けながら、道の端っこの枯草の陰を指さした。


 ガサゴソッ ガサゴソッ


 何かが動き続けている。

 俺は用心深く魔法銃を構えたまま近づいて枯草をすこしかき分けて覗く。

 そこにはスケルトン状態の小鳥が羽一つない骨をジタバタさせて暴れていた。

 飛ぼうとしているのかも知れないが、まぁ飛べるわけが無い。


「なんだこりゃぁ!」

「ドローラの攻撃の巻き添えで死んだ小鳥だ。

 可哀相なので穴を掘って埋葬してやると、そこから這い出てきてその状態でござる。

 多分ドローラの攻撃で死ぬか、もしくはドローラの近くで埋葬された生き物はアンデッドとなって復活する。

 ぶっ倒したオークスケルトンでも試してみたが、そいつは復活しない。

 恐らく初めからアンデッドであれば無効、生き物限定でござる」


「なんとまぁ、激しい戦闘中に器用な事を……」

「襲ってくる様子は無いので安心されよ」


「ん?」


 俺はスケルトンとなった小鳥がどこかに進もうとしているのに気が付き、さらに枯草をかき分けた。

 そこには小さな卵が落っこちていた。

 しゃがみ込んで卵を拾い、上を見るとそこには鳥の巣があった。

 一匹の小鳥が警戒しながら俺を凝視している。


「よっと」


 俺は背伸びしてギリギリ届く位置にあった巣の中に卵を戻す。

 そして再び下を見ると、小鳥のスケルトンは崩れ落ちてバラバラとなっていた。


「どうも埋葬された状態から蘇ったアンデッドは、ドローラの命令に従うんじゃなくて生前の執着心に従うようだな」

「執着心?」


「まぁ今はいい。

 それほど危険な能力では無さそうだ。

 俺達の敵はニール以外はアンデッドばかりだからな。

 それより一緒にドローラを誘導するから手伝ってくれないか?」

「あい分かった!」


 俺とカルーノは素早くドローラの横をすり抜けて背後に回る。

 そしてドローラの攻撃を回避しつつ、ニール本陣の方向へとおびき寄せながら進む。


 ***


 ミツール達は隊列を作り、森の中の中央の道を慎重に進んでいた。

 最前列はサーキ、ミツール、ダイヤ。

 二列目はピーネとエリックとフィリップ

 最後尾は念のために後ろからの襲撃を警戒してココナという布陣である。

 ミツール達は小川を越え、後ろから定期的にやって来るスケルタルナイトに先行させながら森の中をゆっくりと進む。


「ルーサーさんの言う通り、本当にニールとか強いアンデッドがいねぇな」

「ピーネさんがヘビークロスボウを落っことしたのはどの辺ですか?」

「まっすぐ行って、三又の所で右に曲がって50メートルくらいだと思います」

「フィリップさん、マジでインフェクテッド・ウルフ来たら頼むからね。

 体液に触れたらアウトなんてヤバすぎて、僕の最高の剣技を使っても回避しきれないから」

「任せて下さい」

「気を付けるニャッ! 正面から何か来るニャッ!」


 一番後ろに居たココナの鼻が、真っ先に敵の接近を探知した。

 後ろを向いてだべっていたミツールも慌てて剣を構えて正面に向き直る。


「ほんとだ、誰かいるぞ。

 何かローブを着て王冠を被ってるような……」

「分かったぞ! あいつウオラだ!

 あのカス野郎、何しに来やがった!」

「ウオラ元王!? 降伏の交渉でもする気でしょうか?」


 一行は恐ろしいアンデッドでは無さそうなので内心ほっとしながら前進する。

 ウオラはふったりとした服の袖で顔を隠しながらゆっくりと歩き、ミツール達に近づいていた。

 そして20メートル程手前まで来た時、袖を降ろして顔を上げる。


「うげっ!」

「きゃぁっ!」

「な、なんだあれ!?」


 ウオラの顔に既に眼球は無かった。

 肌色の皮膚も無く、乾燥しきったミイラのような顔と、辛うじて剥げ落ちずに残った髪の毛、むき出しの歯、骨と爪だけの手。

 右手の平を前に出し、喉ではなく怨霊の囁きのような詠唱が響く。

 それを見て、詠唱を聞いたフィリップは血相を変えて叫んだ。


「皆さんっ! 今すぐ散開して下さい!

 密集してたら壊滅しますっ!」


 ミツール達は慌ててお互いから距離を取る様に走った。

 ウオラは詠唱を続けながら少し迷うように右手の平をゆっくり動かしていたが、ミツールに狙いを定める。

 フィリップは狙われている先がミツールであることを確認し、素早く呪文を詠唱した。


「我はイオータ、精霊界、不帰の谷の守護者なり。

 不帰の谷の妖精たちよ、谷の守護者たる我が命に従い、旅人を惑わすマナの霧をかき集めよ。

 凝縮せよ、渦巻くマナのかがり火としてあの者を灯せ!

 マナ・シールド!!」


 ミツールの周囲に白い霧が現れて渦巻き、体を包む。

 その直後、ミツールの体が激しく燃え上がった。


「ぐわぁぁぁぁ――っ!」

「あつっ、あつぅ!」


 炎の高さは10メートル程まで上がり、火災旋風のようなものまで上空で渦巻いている。

 炎の半径は5メートル程で、逃げ遅れたダイヤも少し巻き込まれる。

 エリックは慌ててミツールとダイヤをヒールする。

 流石のサーキもあまりの炎の威力でビビって狼狽える。


「何だぁコイツ!?

 ウオラじゃねぇのかよ!?

 聞いてないし知らねぇぞこんな奴!」


 フィリップは答えた。


「スケルタル・メイジ等であればさっきの様なそこらのウィザードでもキャスト不可能な最高位の呪文、プロミネンス・ストライクなど詠唱出来ません!

 これはリッチです!!

 アンデッドの中の最上位種のキャスター!

 途轍もない魔力を持ち、パーティーが壊滅する規模の魔法をガンガン撃ってきます!

 今も私がマナシールドを張らなければミツール殿は即死していたでしょう!

 出来る限り、難しいかも知れませんがリッチの詠唱を潰し続けて下さい!」

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