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魔法銃士ルーサー、影から襲い来る敵の襲撃に備える

ご愛読ありがとうございます。

126部の後書きで募集した、ルーサーが呼びつける4人の仲間、まだ感想欄にて受け付けています。


 ドーラ東、ケニーと呼ばれる新米兵士がリーダーとなって守っていた箇所は、今正に絶体絶命の窮地に陥っていた。

 ケニーは他の入って2週間程度の新米兵士に比べれば兵士としての経験が長い(と言っても5か月程)というだけでこのエリアの防衛のリーダーに任じられていた。

 だが武力も知恵も人並み以下、いやそれどころか足を引っ張られたり自分が尻ぬぐいするを嫌がって同期の兵士達が同じチームを組まされるのを拒絶して押し付け合う程の、何と言うか残念な男である。

 そしてその残念さ故に現実の認識能力にかけ、常に相手を甘く見るきらいがあった。

 防柵の一部に隙間が空いている事をルーサーに注意されながらも、いつもの様に自己判断で状況を甘く見て放置をしていた。


 ――― ドーラ東・ケニー防衛箇所 ―――


 ___________崖崖崖崖崖崖崖崖死

 _____________弩槍冊死_死死

 ________泣______冊死死__

 ______泣ケ______槍冊死死死死

 ________泣____弩_冊死死死死

 ______________槍冊死死死死

 援援_援援__________冊死死死死

 _援援援援援_______弩槍冊死死死死

 援援_援援_________槍⊥死死死死

 ___________槍死死⊥死死死死死

 _援援_______死死死弩死死死死死死

 援援________死槍死死死崖崖死死死

 _________死死崖崖崖崖崖崖崖崖死


 崖:高い崖の障害物

 冊:木の防柵。既に押し寄せたアンデッドの群衆の圧力でギシギシ揺らいでいる。

 ⊥:破壊されて倒壊してしまった防柵

 死:押し寄せるオークゾンビ、ケンタウロスゾンビ、オークスケルトンの視界を埋め尽くすような大群。

 槍:必死に戦う新米槍兵。もうだれ一人自分が生き残れるとは思っていない。二回目の襲撃を受けてチェスターが20名余分に配置していたが、その何割かは既にアンデッドの大群に飲まれて消えた。

 ケ:あんぐりと口を開けて何もできずに棒立ちするケニー。

 泣:ケニーに詰め寄って泣きながら抗議しつつ指示を仰ぐ新米兵士達。

 援:まさに防衛線決壊直後の状況を見て決死の救援に向かう、チェスターが送った残り全ての待機兵達。

 弩:バリスタ。この防衛における最大戦力だが既に一機と操作する弓兵がアンデッドに飲まれて無力化、連鎖的に他も崩壊するのは明らかの状況である。

 ――――――――――――――――――――


 入って1週間の新米兵士3人がケニーに詰め寄り、泣きながら抗議していた。


「ケニーさん! 私達は一体どうすればいいんですか!?」

「貴方がここの指揮者でしょう? 何とかしないと駄目じゃないですか!?」

「…………」


 ケニーは驚いた顔で口をあんぐりと開け、今にも一人、一人と死んでいく槍兵を眺めている。

 詰め寄る新米兵士に肩を揺すられても何も答えず、身動き一つしない。


「駄目だよこの人!

 ちゃんとルーサーさんに従って防柵を強化して、本部からの命令に従って追加の防柵や落とし穴を掘っていれば良かったんだ!」

「だって仕方が無いだろう?

 俺達は新人でこの人を信じて従うしか無かったんだ!

 堂々として偉そうだったから、ちゃんとしたプランと確信があるんだと誤解しちゃったんだよ!」

「早くケニーさん! 私達よりも経験があるんだからこういう状況で皆がどう動くべきか知ってるでしょ?

 早く指示を下さい!」


 ケニーは何も言わず、あんぐりと口を開けっぱなしである。


「無理だよ!

 この人は多分、全部周りの人にお膳立てして貰って生きて来たんだ!

 未知の状況で判断出来る人じゃないんだよ!

 俺達で何とかするしかない!

 ドーラ防衛本部に援軍を呼びに行く!」

「何言ってんだよ。

 お前が本部へ行って応援を呼んで帰って来たころにはアンデッドの大群がドーラの中へとなだれ込んでいるよ。

 もう終わり!

 お終いだよぉぉ――!!」

「見ろ!

 援軍が来たぞ!」

「嘘だろ……俺達何も連絡を出せてなかったのに。

 まじかよ、援軍だ!

 援軍だぁぁ!」


 兵士の一人が指さす先には、チェスターの送った待機兵全員、総勢50名が援軍としてこちらへと走っていた。

 援軍を率いるケニーの同期の兵士は一目で状況を察し、大声で全員に指示をする。


「槍兵は右から入って来るアンデッドに対し、3列の陣を組んで迎え撃て!

 弓兵はケンタウロスゾンビを優先して狙え!

 バリスタを撃ってる奴ら!

 焦らずに一発一発、大事にしながら心を集中して撃て!

 諦めるな!

 俺達はここを守り切れる!」


 ***


 森の中の空き地に設けられたアンデッド軍本陣。

 ウオラ元王と従者二人に見守られながら、ネクロマンサーのニールは宝珠に手をかざしてコントロールに集中し、宝珠に映る映像を見ていた。

 ウオラがニヤけながら尋ねる。


「どうだ?

 本体による襲撃は上手く行っていると見て良いのだな?」

「大勢には影響はないが、思いの外ヒヨッコ共が粘りを見せている」


「何!?

 失敗は許さんぞ」

「なぁに、奴らが壊滅し、町がアンデッドに蹂躙される運命に変わりはない。

 ただ……」


「ただ何だと言うのだ?」

「俺が本気で襲撃をかけた3箇所にまるで予め予想したかのようにピンポイントで防衛戦力を合わせられている様な気がする。

 本来ならば今頃は町の女子供共が悲鳴を上げているはずだ。

 ……まぁ、気にし過ぎか。

 何十とある防衛ポイントの中から、俺が選んだ3つをピンポイントで当てるなど、有り得ん話だがな。

 だが二度も防柵の穴を突かれて尚も塞ごうとしなかった馬鹿が指揮していた場所。

 ドーラ東はもうすぐ突破するだろう。

 ここはインフェクテッド・ウルフを突っ込ませてやれば僅かな防衛兵など瞬殺して、ドーラの連中にとっての地獄の門が開く。

 丁度2匹とも最前線からの援軍を警戒する為にドーラの東の街道に偵察にやってたところだしな」


「そうかそうか!

 ではすぐにとりかかって貰おう」

「言われずともだ。

 ……ん?」


「どうした?」

「聞いてなかったぞ。

 お前達、光輝の陣営にネクロマンサーが居るなど」


「ネクロマンサーだと?

 そんなのは私も知らん。

 お前達、聞いた事が有るか?」

「いえ」

「聞いた事が有りませんし、仮に居たとしても人間の町では迫害されて普通には生きられないでしょう。

 魔王軍のアンデッドは全ての人間が忌み嫌います。

 仮にいたとすれば誰にも知られずにどこかに隠れ住んでいたのだと思いますが、そのような世捨て人がドーラを救う理由など有りません」

 

「俺のようにアーティファクト級の宝珠を使わずにこれだけの数のスケルタルナイトを操っているのだとすれば相当な使い手だ。

 ……見つけたぞ。

 馬に乗ってドーラへと向かっているこのババァが術者に違いない。

 ネクロマンサー特有の臭いを感じる。

 そしてその後ろに一緒に乗っているのは……コイツを知っているか?」

「おのれ……邪魔をしに来おったか。

 コイツはルーサー、魔法銃士という飛び道具使いだ」


「そうか。

 コイツがシルフィルド防衛を指揮し、シルフィルド奪還でのアドバイザーをしたと言う魔法銃士ルーサーか。

 どちらも放っておけば厄介そうな相手だ。

 このまま始末しよう」

「大丈夫か?

 大勢のスケルタルナイトを連れておるのだろう?

 それにルーサーもグランドマスタークラスの戦闘職だぞ」


「多少は強化しているようだがスケルタルナイトなど只の雑兵に過ぎん。

 それに魔法銃士とやらも生きた敵を殺す専門家だろう?

 アンデッドの恐ろしさを見せつけてくれる。

 しばらくインフェクテッド・ウルフの操作に集中して、ドーラを襲撃中のアンデッドのコントロールが少し甘くなるが、この二人をここで殺す事が最優先だ。

 やむを得まい」


 ***


 スケルタルナイトを引きつれ、クロリィちゃんと一緒に馬に乗って俺はドーラへと急いでいた。

 ふと瞬間的な殺気を感じ、俺はそっとホルスターからエイジド・ラブを抜いていつでも対応出来るように構える。


「クロリィちゃん」

「分かっておる。

 さっきから周囲をウロチョロしておる。

 2匹の人造魔獣の邪気を感じる。

 恐らく、ニールとやらが放ったインフェクテッド・ウルフじゃ」


「ニールが操っている化け物か。

 俺の索敵範囲や射程距離をきっちり見切っているのか中々姿を現さない。

 それに術士のくせに熟練アサシンやバーサーカーを相手にしているような気配を感じる。

 こいつぁ、楽には勝たせて貰えないぞ」

「これだけのスケルタルナイトを見て、尚も恐れずに付きまとって付け狙おうとするとは、ワシを舐めておるなと言いたい所じゃが。

 完全にネクロマンサーとして間合いが把握されておると言う事。

 ルーサーさん、悪いがインフェクテッド・ウルフ程の魔獣相手にはスケルタル・ナイトなど通行妨害にもならん。

 ワシはボーン・マジックを使う故……」


「俺は魔法銃で戦う。

 これでクロリィちゃんとの初の共同作業になる訳だな」

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