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魔法銃士ルーサー、ドーラの町外周を巡回する

 俺は馬を走らせ、ドーラの一番外周、防柵の状況を見てまわった。

 案の定、今にも杭が腐り落ちそうな部分や、場所によっては人が入れる隙間が空いている箇所まであった。

 そういう箇所を見つけるたびに近くでバリスタを設置している工兵達に注意する。


「おい、あそこの防柵、人が入れそうな隙間が空いてるぞ。

 駄目じゃないかちゃんと防いでおかないと」

「すいませんルーサー様。

 でも正直思うんです。

 オークゾンビやオークスケルトンって斧を装備してるって言うじゃ無いですか。

 こんな木の杭で出来た柵なんて只の気休めにしかならないんじゃないかって。

 コンコンと斧でぶち破られたら終わりです。

 だったら隅っこの一か所開いてたって大差ないんじゃないかって」


「いいや。

 その一か所が重要なんだ。

 無音で1秒ですり抜けられるか、斧を振るって大きな音を立てて30秒間かけて通り抜けなければならないか。

 たかが30秒の差が防衛力には果てしなく大きな差を生む。

 防衛側に無自覚の一人の突入を許せば内部からすべてを覆す工作が可能になるが、音を立てて30秒足止めすれば巡回兵士が駆けつけて応援を呼ぶ猶予が出来る。

 そしてそのごくわずかな違いで町が崩壊するか、町が守られるかが変わる。

 お前達新入りが思っている以上に重要だ。

 そこをきっちりお前達工兵が仕上げるかは数時間に及ぶ血みどろの切り合いに勝る、重要な戦いなんだよ。

 しっかり気合を入れて穴を全て塞げ。

 いいな?」

「分かりました。

 このバリスタ設置が終わればすぐに塞いでおきます」


 ***


 俺はさらに防柵の点検を進め、チェスターの作戦に対して指摘した南西部、崖に挟まれた一軒家にさしかかった。

 そこでは2名の兵士が住人のお爺さんと言い争いをしていた。


「頼みますよテレンス爺さん!

 ここは危ないから戦いが終わるまで内側に避難して欲しいんですよ!」

「だがこの家を打ち壊すんだろう?」


「それは……仕方が無いんです!

 放っておけばアンデッド軍に利用されてしまいます!

 身を隠しての侵入に利用されるし、こちらの弓やバリスタで敵を狙う邪魔になってしまうんです!」

「嫌じゃ!

 嫌と言ったら嫌じゃ!

 ワシなど放っておいて、お前達は好きな場所に防柵を作ればいいじゃろう?」

「出来る訳無いでしょ? お爺ちゃん。

 お爺ちゃん、防衛線の外になるこの家に居たら殺されちゃうよ?」


「知るか、そんなものワシの勝手じゃ。

 別にお前らに助けてくれとも言っとらんわい!」


 俺は改めて周囲の地形を見回す。

 が、チェスターが広げていた地図は正確だ。

 間違いなくこの家、この崖に挟まれた道は突破の起点となる危険な地形だ。

 俺も馬を降りて歩み寄り、兵士達と一緒に爺さんに頼み込んだ。


「お爺ちゃん、彼らの言う事は本当だ。

 この家を残す事で、ドーラの町全てに危害が及ぶ。

 どうか一時的に避難して、家の撤去を許してほしい。

 必ず被害の保証はさせる。

 もうアンデッド軍が襲ってくるまで時間が無いんだ。

 頼む」

「だからワシは別に助けなど要らんと言ってるじゃろうがっ!

 この家にしがみ付いて生きようが、死のうがワシの自由じゃ!

 アンタ達はアンタ達で好きにすればいいっ!」


「どうしてそんなにこの家に残りたいんだ?

 教えてくれないか?」

「他人に話す義理など無いわいっ!」


 爺さんの目を見ていて分かる。

 この爺さん、本当に自分が死んでも良いと思っている。

 そして立ち退く意思がまるで無い。

 手荒な手段は……なんの罪も無いこのお爺さんに取りたくはないが……。

 だが時間が無い。

 俺は二人の兵士をお爺さんから離れた場所に呼び寄せて小声で言った。


「もう時間が無い、内側の防柵とバリスタの準備を進めろ。

 あのお爺さんが心変わりする可能性は低いが、万が一と言う事も有る。

 家の取り壊しが間に合うギリギリの時間にもう一度説得に向かえ。

 そしてお爺さんが従わなければ、手足を縛って担いででも中に避難させるんだ」

「仕方が有りませんねぇ……」

「……そうするしか無いんですかねぇ」


 ***


 ドーラ北東、防柵近くで騎兵一人と弓兵一人が言い争っているのに出くわした。


「絶対に居たんだって!

 お前騎兵なんだから偵察して来いよ!

 その馬は飾りか!?

 お坊ちゃんよ!」

「誰も防柵の外に出るなって命令されているんだよ!」


「チキンかよ!」

「馬鹿っ、そんな事あるか!」


 俺は二人の間に割って入った。


「おいおい、戦う相手はアンデッド軍だ。

 味方同士でいがみ合うんじゃない。

 いざという時はお互いがお互いを助け合う仲間なんだからな」

「でもルーサー様!

 道の向こうで大きな狼がこっちの様子を伺っているのを見たんです!

 例のインフェクテッド・ウルフって奴かも知れない。

 奥に敵が陣地を構築しようとしてたら大変でしょう?」


「インフェクテッド・ウルフが居たんならなおさら防柵の外には出るんじゃねぇ。

 で、この道の先はどうなっているんだ?

 地図とか持ってるか?」

「これです」


 ―――― ドーラの地図:北東、防柵の先 ―――


 森川森森森森森森森森森森森森森森森森森森森森森

 森森__塔_________________森

 森森_森森森森森森森森森森森森森森森____森

 川川川川川川森森森森森森森森森森______森

 森森_森森川川森森森森森森森森__森森森_森森

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 森森_森森森森森森川森森塔_森森森森森森_森森

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 柵____森森森森森森森森森森森森森森森_森森

 弩柵________________塔__森森

 _弩柵__森森森森森森森森森森森森森森森森森森

 __弩柵森森森森森森森森森森森森森森森森森森森


 森:うっそうと茂る森

 柵:防柵

 弩:バリスタ

 川:森の中を流れる小川。ほとんどが浅瀬で一番深い所で人の胸ほどの深さ。

 塔:監視塔。二階建ての家より高いくらいで、普段は駐在の弓衛兵が駐在して人の出入りを見張っているが、今は緊急事態なので全員防柵の内側に避難させており、無人。

 店:錬金術師の店。薬草採りに森へのアクセスが便利なのと、調合で立ち昇る嫌な臭いが原因で暗黙的に錬金術師の薬屋は町の外に店を出す風習になっている。しかし客は多いため、森の中に専用の道まで作られた結果、このような地形になった。勿論今は従業員全員が避難済みである。


 ―――――――――――――――――――――――


「……確かに北東には陣地を構築するには最適な広場があるな」

「ですよね!?」


「お前が見た狼、どんな見た目だった?」

「熊の様に大きくて、皮膚病に掛かったように体中の毛がはげ落ちてケロイドのような地肌が見えました。

 小川の向こう側に現れてこっちをしばらく眺めて、奥へと戻って行きました」

「小川!?

 お前あんなに遠くが見えるのかよスゲーな。

 レンジャーの息子って伊達じゃないな」


「ちょっと待ってろ」


 俺は魔導通話貝を取り出し、ドーラ防衛本部に居るクロリィちゃんにかけた。


「……という狼だったそうなんだが、どうだい?」

「間違いない、それはインフェクテッド・ウルフじゃ。

 ネクロマンサーが自分の血を媒介にして操る生物は、スケルトンと違って生の目を持つ場合、術者が視野を共有する事が可能じゃ。

 特にインフェクテッド・ウルフは素早くてスタミナも高い。

 ネクロマンサーがドーラの周囲を偵察させるにはうってつけじゃ」


「なるほど。

 つまり、ニールはこの場所を事前にチェックしたと言う事か。

 ありがとうクロリィちゃん」


 俺は魔導通話貝をしまい、兵士達に言った。


「ここは要注意ポイントだ。

 弓兵の君、君はドーラ防衛本部に言って伝書鳥を受け取って常に持ってここに張り付いて見張っていてくれ。

 そして北東の動向に異常が見られたら、直ぐに俺宛てにメッセージを書いて飛ばすんだ」

「分かりました!」


 ***


 俺はドーラの東に差し掛かった。

 そこでテイマーが4匹の幼体ワイバーンの首に掛けられた綱を引っ張っているのに出くわした。

 荷物配達用の飼いならされたワイバーンだが、まだ躾けがなっていないのか、異常事態を本能で察して怯えているのか、足を踏ん張って抵抗している。


「こらっ、急いで避難しないといけないんだから言う事を聞いておくれよ!

 ほらっ」

「ガルルルル……」

「クゥゥン……」

「少しでも戦力になりそうなら荷物配達用ワイバーンもレッドホーン前哨基地に送られたと聞いていたが、まだ残っていたんだな」


「こいつらまだ小さくて言う事を聞かないので、送っても足を引っ張って迷惑を掛けますからね。

 今も厩舎が防柵近くにあって、アンデッドを見て怯えて暴れ出したら兵士達に迷惑が掛かるから内側へ連れて行こうとしているんです。

 でもなかなか言う事を聞かなくて」

「こいつら、小さいと言っても一応空は飛べるんだろう?

 どのくらいの物を運べる?」


「そうですね、操縦テイマー一人、人間一人、後はタンスくらいの荷物ならコイツらでも運べます。

 壊れ物や形の崩れる生ものは運ばせられませんがね」

「丁度いい、どうしても今、戦闘に優れた実力者を呼べないか思案していた所だ。

 この4頭のワイバーンを飛ばして、連れてきて貰う事にしよう。

 だが時間的に選べるのは4人のみ。

 しかも軍人として最前線に出ている奴は呼び戻すわけにはいかない。

 あと、俺が呼びつけられる人な。

 さて、一体だれを呼ぶべきか……」


 ――――――――――――――――――――――――――

 >>>>> 戦いに参加するヒーローを選べ <<<<<


 〇魔法銃士ルーサー【選択固定】

 突出ステータス:素早さ、次いで賢さ

 傾向:勇者を守り、育てる技能に優れる。


 〇道士リンシンちゃん&キョンシーおちょうちゃん

 突出ステータス:力強さ

 傾向:壁となり、敵火力の受けに優れる。


 〇引退魔女ノーバちゃん

 突出ステータス:賢さを極めている。

 傾向:大魔法での敵の殲滅力に優れる。


 〇異世界転移者ミツールパーティー

 突出ステータス:素早さ、次いで力強さ

 傾向:今はまだ弱いが恐るべき成長性を秘めている。


 〇獣人グラップラー、ハーフワーキャットの王女ココナ

 突出ステータス:素早さ

 傾向:素早い立ち回りで単独で大勢に狙われても逃げ切れる安心感がある。


 〇筋肉魔法使い、カルーノ

 突出ステータス:力強さを極めている。

 傾向:岩投げ……ロックブラスト魔法を食らえばどんな敵も動けなくなるだろう。


 〇怪力弓使いのハーフドライアード、ピーネwith借り物ヘビークロスボウ

 突出ステータス:力強さ、次いで素早さ

 傾向:熾天使(セラフィム)稲妻渦サンダー・ヴォルテックス大砲(キャノン)を使えばどんな強敵もワンパンかも知れない。そのチャンスに恵まれればだが。


 〇テイマーのハーフドライアード、カメリア&ゴクスケ

 突出ステータス:力強さ

 傾向:ゴクスケの状況次第でドラゴン以上の化け物になり得る。ただ幼体ワイバーンで持って運べる=苦手な野菜を食って体が小さいはず、消化されて排出されるまで時間稼ぎが必要かも知れない。


 〇魔法銃士ミナ

 突出ステータス:素早さ、次いで賢さ

 傾向:散弾魔法銃を使った広範囲攻撃や、防衛的な魔法銃士スキルを使ったサポートを得意とする。なお、熱病で動けなくて最前線の招集を断ったと聞いているが、コイツの性格を熟知している俺には分かる。利用されるのが嫌だから絶対にサボっているので引っ張り出す。


 ――――――――――――――――――――――――――

感想にて呼びつける4人の仲間の希望を受け付けます。

期限はルーサーがクロリィちゃんを連れてスケルタルナイトの援軍を連れ、ドーラに戻って来るまで。

なお、まったく感想による希望が無かった場合は自動的にランダムに選択されます。

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