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魔法銃士ルーサー、畑で野菜栽培を始める

 俺はクロリィちゃんと別れ、とりあえずは今日おたゑちゃんの家に泊めて貰えることになっていたので、おたゑちゃんの家へ向かって畑のあぜ道を歩いていた。

 ふと横を見ると畑の向こうの50メートルほど先で、紫に染めた爆発ヘアーのファンキーな老婆がしゃがみこんで農作業をしている。

 確かあれは、ノーバちゃん。

 昔は戦争で地平線を埋め尽くす軍隊を単独で撃退して、自国の人々も敵国の人々も思いっきり引かせたソーサレスだったとか。


「よぅ、ノーバちゃん、何してるんだい?」

「ルーサーしゃんかい。今野菜ん手入ればしとるんちゃ」


「野菜?」

「しっかり雑草ば抜いてやらんけんっち、大根も大きく育たなかねらね」


 近寄ってみると、幾筋ものかまぼこ状に盛られた土の上に、大根が30センチおきくらいに植えられており、大きな実の頭を土から覗かせている。

 もちろんその上には青々と大きな葉が茂っていた。


「野菜かぁ、俺も育ててみたいなぁ」

「そいやぁ、ルーサーしゃんにいしょこん畑ば貸しちゃるちゃ。

 どげんしぇ今は手の回らなくなっちきんしゃい、放置しよったからね」


 ノーバちゃんが指さす方向には、雑草がぼうぼうに茂った30メートル四方ほどの畑があった。

 元々使っていたと言うだけあって、一応平らにならされており、あぜ道で四角く囲われている。


「おおっ! ありがとうノーバちゃん。

 じゃぁ早速草を引っこ抜いてみるか」

「うちはここでちょこっとの間畑作業しとるから、なんかあったんよら言うてね」


 俺は与えられた畑に入り、次々と雑草を掴んでは引っこ抜く。

 そして引っこ抜いた雑草を畑の隅に積み上げていく。

 それを見ていたノーバちゃんは作業の手を止め、俺の畑の仕切りのあぜ道に立った。


「ルーサーしゃん、そんやり方や土に残った雑草ん根が再生して、いたちごっこになるちゃ。

ちょーどいちゃんない」

「ん? そうか……」


 俺は畑の外へ出た。

 ノーバちゃんは両手を開いて天を仰ぐようなポーズを取り、呪文を詠唱し始める。


「我は天なり。我は地なり。我は世界の超越者なり。

 大地の奥、流れ出でる溶岩の源流、黒き深淵の世界よ。

 今ここに精神と霊魂と肉体の門を開け。

 炎の精霊、サラマンダーよ。

 我が呼びかけに答えよ」


 ノーバちゃんは両手を前に出し、左右の掌を上に向けて揃える。


「我は命ず。

 炎の精霊、サラマンダーよ。

 盟約に従い、その力を示せ。

 ささやく息吹をここに現出させよ」


 突如畑から強烈な熱気が放たれ、俺は思わず後ずさる。

 俺の畑全体から強烈な炎が吹き上げ、高さ3メートルほどの火柱が上がった。

 野焼きというかもう大火事状態である。

 だがその状態は10秒ほどで鎮静化し、炎は消えた。


「これで雑草は根っこまで皆死んだばい」

「すげぇなノーバちゃん。

 つーか呪文詠唱は標準語なのな」


「精霊に言葉が通じなければ魔法発動せんからね。

 若い時、ソーサレスん修行中は苦労したばいちゃ。

 召喚しゃれた精霊の困惑して帰っちなおすからね」

「なんか状況が目に浮かぶよ。

 それより何を育てるか。

 やっぱり葱と玉ねぎ、ニラは外せないよな。

 あと、ニンニク」


「臭い物ばっかりやね」

「いやぁ、そういうのが色んな料理に合うんだよ。

 俺臭いの大好きだしな。

 そうそう、あと唐辛子と胡椒とワサビとショウガも……」


「今はネギっちニンニクっち玉ねぎん種しか手持ちになかねぇ。

そいはルーサーしゃんにいげるばってん、他はどっかで入手せなねぇ」

「そうか、首都で食べて美味しかったから育てようと思ったけど、入手は難しいんだな」


 ノーバちゃんは畑の近くの納屋に入り、しばらくして袋を三つ持って出てきた。

 一つは葱の種、一つはニンニクの種、もう一つは玉ねぎの種である。


「有難う。じゃぁ早速植えるぜ」


 俺は鍬を借りて畑を耕し、かまぼこ状のうねを作った。

 そして一つ一つ、種を植えていく。

 ほぼ全部植え終わったころ、ノーバちゃんが別の種をもって歩み寄る。


「ルーサーしゃん。

 今は空いとる場所にこれば植えたらよかよ。

 高く売れるからね」

「ん? これは何だい?」


「キュアハーブ、ホワイトフラワー、マンドラゴラ。

 これはポーションん材料だから町で買い取っちくれるちゃ。

 いっちこれはスモールトレントん苗やね」

「スモールトレント? トレントってあの? モンスターの?」


「スモールトレントは育っちもしぇいぜい2メートルくらいたい。

 70年以上育てない限り魔法ば覚えたりせんし、野生動物ば追い払っちくれるから便利ばい」

「なるほど動物の食害避けか。

 じゃぁこれはここに配置してっと」


 俺は貰ったものを全て畑に植えた。


―――――――――――― ルーサーの畑 ―――――――――――――

拡張レベル:1

土質:黒土

追加肥料:無し


□□□□□□□□□

□葱葱葱□□□□□

□葱 ト葱□玉玉玉□

□葱葱葱□玉 トニ□

□□マ ママ玉ニニ□

赤赤赤赤赤白白白白


ト:スモールトレント。現在は苗。

  育つと射程2で侵入する動物をぶったたいて追い払う。

  射程5に近づいた動物には顔と声で威嚇する。

葱:葱

ニ:ニンニク

玉:玉ねぎ

赤:キュアハーブ

白:ホワイトフラワー

マ:マンドレイク

「2110年、百鬼夜行と怨霊ハンター」

比較的初期に執筆した短編小説です。

一応起承転結、切りのいい所で纏まっていますが、下手なおふざけが興をそぐ部分もあるかなぁと、長い時間がたってから読み直すと思ったりもします。

「2115年、アンドロイドの救世主」の登場人物カムイの物語ですが、カムイはカムイで主役を張れるキャラクターだと思います。

なお、私の小説の登場人物の名前が大体ボカロをもじっているのは、最初はMMDドラマとして作りたかったからというのもあります。

なのでキャライメージは大体そのボカロだったりします。

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