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お世話係のメイドさん。

 

  吸血鬼と言うのは残念ながら夢ではなかった。


「私は、ロイゼ・クリスティアと申します。このアインハルト家にメイドとして雇って頂き、シャロット様のお世話係を申し付けられております」


 黒髪のショートヘアーの声と笑顔が可愛い、見た目的には16歳くらいに見える細身の少女は、ロイゼと言う名前だった。


 ロイゼの話を聞いて、自分の事と周りの事が少しわかってきた。


 私は、『シャロット・アインハルト』と言う名前で、アインハルトと言う貴族の中でも、少しは名が知れたお家柄のお嬢様らしい。


 と言っても、貴族として暮らしている吸血鬼の一族らしいのだけれど、ずーっと長い年月外にはバレていないと言うのだからびっくりする。


 そしてロイゼはまだアインハルト家に雇われたばかりの、新米のメイドさんのようだ。


 正直な所、お世話係と言われてもあまりピンとこない。


 従関係がどうのとか言われた所で、前世の私はごく普通の女子高生だ。はっきり言ってよくわからない。


 しかも、吸血鬼のお嬢様ってありえない。


 果たして前世が女子高生の私に、吸血鬼と言うお嬢様としてちゃんと生きていけるのかわからないし。


 けれど、今は足掻いたところで吸血鬼って現実は変わらなそう。


 でも、かといって人の血は絶対に吸いたくないし、飲みたくない。


 出来るだけ頑張ってみよう。ファイトだ私!


 ロイゼと出会ってから1日が経った。


 ロイゼはとても頭が良く、優しく、思いやりがあり、女の私から見ても魅力的な女性だと少し分かってきた。


 ロイゼは私のお世話係として、部屋の掃除や、私の身の回りの事を一生懸命やってくれている。


 だが、ロイゼは少し過保護すぎる面があった。


 なにかと心配してくれるのは嬉しいし、有難いのだけれど、些細な事に関しても過保護な面が出てしまっていた。


 それが嫌なのか? と聞かれれば、そうではない。


 けれど、なにせ私が前世で出会った人の中には、ロイゼのような過保護な性格の持ち主はいなかった為か、接し方がわからないと言うのが本音な所です。


 そもそもお嬢様って言うのはみんなこんな感じなんだろうか?


 お嬢様と言う物を私はリアルで見た事がない。


 見た事があるとすれば、前世で見ていたドラマに出てきた悪役お嬢様くらいだ。


 そのお嬢様にもお世話係がいたが、こんなにべったりな感じじゃなかった。やっぱりドラマと現実は違うのだろうか。


 その日の昼食後、ロイゼは私の部屋の窓際で白い小さな花瓶に花を入れていた。その花はオーシャンブルー色の綺麗な薔薇だった。


 青い薔薇なんて、珍しいなぁ。


 前世では見た事がないかも。


 私はその後ろ姿をベッドの上に座りながらずっと見ていると、ロイゼが視線に気がついたのかこちらを見るとニコっと優しく微笑んできた。


 やっぱり犯罪級だよねぇ、あの笑顔は。


 見ていると逆に恥ずかしくなってしまう。


 あの愛くるしい笑顔に、ドキドキしない日は果たして私に来るのでしょうか?


 そんな事を考えつつも私はロイゼに言ってみた。


「ロイゼって仕事熱心だし、笑顔がとても可愛いよね!」


「か、可愛いだなんて、そ、そんな……」


 ロイゼは、両手を口に当て、照れているのか目線を下に向けてしまった。


 うわっ、照れるロイゼも相当可愛い。


「私は、ロイゼの笑ってる顔が一番好きだよ?」


 私がそう言うと、何故か急にロイゼはその綺麗なライトブルーが印象的な瞳からポロポロと涙を流し、その場に泣き崩れてしまった。


「え!?」


 私はあまりにいきなりの事にびっくりし、ベッドからちょこんと降りると泣き崩れるロイゼに駆け寄った。


「ロイゼ!? ど、どうしたの!?」


 私が動揺を隠せずあたふたしていると、ロイゼは両手で涙を拭いながら言った。


「申し訳御座いません……シャロットさま……にそんな風に思って貰えていたのが嬉しくて……」


 私はこの時、ロイゼもお世話係と言うメイドさんだけれど、中身は16歳の私と同じ歳くらいの1人の可愛らしい素直な少女なんだなと、見てていて凄く微笑ましく思えた。


「ロイゼ? 私のお世話係大変かもしれないけど、無理はせず頑張ってね?」


「はいっ!! 私、もっともっと、頑張ります!!」


 私がニコっと微笑むと、ロイゼもパッと顔に明るさが戻り、可愛く微笑み返してくれた。


 少しは私も身の回りの事を自分でもやろうと思ってはいるのだけれど、それ以来ロイゼの過保護っぷりは更に増し、何をするにも私がやりますので! と、言われてしまい、ほぼ何もできないでいる。


 このままロイゼに全部何から何までやってもらっていると、将来きっと1人じゃ何もできない女の子になってしまいそうだ。


 それだけは、絶対に避けなきゃ。


 私は自分の将来のダメダメお嬢様の姿を想像し、苦笑いしてしまったのだった。


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