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隣町の古本屋  作者: sima
4/5

店長


こんにちは。

あ、こんにちは、いらっしゃいませ。

あれ、今日は店長さんじゃないんですね。

今日は、店長用事があるとか何とかでお休みするみたいですよ。

そうなんですか。

何か、用事でもありました?

あ、いえ、ただ、いつも来るといらっしゃたので、少し気になっただけです。

そうですか、ごゆっくり。コーヒーお持ちしますね。

ありがとうございます。


にゃーといつもの猫がすり寄ってきた。君もなんだか少し寂しそうだね。

ああ、今日は少し材料が足りないから物語はあまり進めることができなさそうだ。

コーヒーもいつもより少し香りが薄い気がした。

少しだけ、物語を進めよう。



それから、店長が月に一度決まったタイミングでお店にいないことに気づいた。


今日は何か特別な日なんでしょうかね?

なぜですか?

いえ、店長がいつも同じタイミングでいらっしゃらないなと思って。

さすが、常連さんですね。実は、この日は店長の奥さんが亡くなられた日なんですよ。お墓参りに行っているみたいですよ。

ええ、毎月ですか?

そうですね、もう長いですよ、奥さんが死んだ3年前からずっと。

仲が良かったんでしょうね。

そうですね、僕は奥さんが亡くなる2年前からここで働いていますけど、喧嘩したところなんて一度も見たことなかったですよ。

そうなんですか・・・

いつも、奥さん座って本を読んでいらしてました。ああ、ちょうどあなたがいつも座っているあの席で。



それからというもの、なんだか私は物語にうまく入り込むことができなくなってしまった。

人生の中で、唯一楽しかったはずの時間が、だんだんともやもやとした気持ちの悪いものに変わっていってしまった。


なんだか、最近さえない顔してますね。体重でも増えました?

あら、ひどい。私太ったように見えます?

いや、定期的に見ているけど、僕が見た限りでは変わりないよ。

だって、変わってないですもん。

じゃあ、どうして最近は浮かない顔をしてるの?

そんなに、顔に出ちゃってました?なんだか最近、本を楽しめなくなってきて。

ええ、あんなにいつも本に吸い込まれるように読んでいたのに?

そうなんですよね。いつもなら意識しなくても、勝手にスーッと本の中に入っていけるんです。最近はあと少しのところですぐに現実に戻ってきてしまうんです。

なにか、現実に気になることでもあるんですか?

どうなんでしょうね。

僕でよければ、いくらでも話聞きますよ。

あら、店長さんはじっとしていられないから、すぐに飽きてどこか別の場所に行ってしまうわ。

あれ、ばれてましたか?どうも、じっとしているのは苦手で。あ、じゃあ、歩きながらでもお話ししますか?

店長さんがいいのなら、私もお散歩したい気分ですし。

よし、じゃあ行きましょう。ちょうどお客さんも今少ないし。

今日は気持ちのいい天気ですしね。


遠くの方で猫の鳴く声がした。


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