第一話 獣の唄
この小説は東方projectの二次創作であり、以前私が別アカウントで書いていた小説東方紅蓮録のリメイク版です。
リメイク版とは書きましたが、正直同じ名前でフランがヒロインな以外は別物となっています。
さらにはグロ表現がリメイク前よりも増しており、主人公秋山慧のズタボロ具合も高まっています。
そのためグロ描写が苦手な方、最強系主人公が好きな方は別の作品を読む事をお勧めします。
人は生まれるまでは十月十日、されど死ぬのは一瞬。
誰の言葉か忘れたけど、そんな言葉が頭を過ぎった。
正直俺はこんな哲学じみた言葉が頭に浮かぶようなお利口な頭なんざ持ってない。だけど今の俺の状態はそんなクソったれな言葉が思い浮かぶくらいに、俺…秋山慧はヤバい状態だった。
「ねぇもう終わり?もう終わりなの?こんなんじゃフラン満足できないよぉ!」
俺の目の前にいる少女…とは言っても絶対俺よりもメチャクチャ年上なんだろうが…ソイツが全力で殺しにかっかってきている。だけどこんな状態でそんな事言われてもどうしようもない。
右足と腹の一部の肉が抉れてるわ、左腕は千切れそうで文字通りの皮一枚だわ、左目も潰れて見えなくなってるわで今現在意識があるどころか生きている事そのものが不思議なくらいだ。
だけどそれも続かない。目には見えないけど肋骨の殆どは折れて肺に刺さってるだろうし、内臓もいくつか破裂し出血も凄まじい。自分が急激に冷たくなっていくのがはっきりと解るくらいに。
あぁ…本当になんでこんな事になったんだ?
そんな事を考えながら俺は少し前の事を思い返していた…
「あぁ…頭が痛ぇ…て、ここどこだよ!」
俺が幼女(?)にずたぼろなぼろ雑巾にされる少し前のこと。なんというか目を覚ましたら見知らぬ場所にいた。
本当にチープなのだが、本当にそうとしか表現できない。第一俺の部屋は風呂無し六畳のボロアパートではあるが、こんなに豪華で天蓋付きベッドが置けるような広い部屋なんてテレビの中でしか見たことがないぜ。
それにどうにも昨日家に帰ってからの記憶が曖昧だ。家に帰ってパソコンで某アイドルアニメ観ながら生ハム醤油ペッパーパスタ(400g)を食ってた所までは覚えているけど…そういえばなんか急にパソコンがブラックアウトした気が…
「ねぇ…」
「まさか!ここは夢にまで見たDワールド!?確かあのアニメ今年で15周年だしあり得なくも…って事は俺も選ばれ「ねぇったら!お兄さん聞いてるの!?」」
俺が妄想爆発かつ楽観的な予想をしていたら俺のすぐ真横に女の子がいた。
背は140もないくらいで、大体10歳くらいか?だけど髪は金髪だし、身なりも明らかにいいとこのお嬢様って感じで俺の近所でもバイト先でも見たことがない。勿論怪獣みたいなのが生息してるあのアニメの某島や大陸でもいなさそうだ。
「お兄さんだぁれ?どこから来たの?ここフランの部屋なんだけど」
「あぁ悪いな、俺は秋山慧っていうんだけど、どこから来たかって聞かれてもなぁ…目が覚めたらここにいたから、ここがとこなのかもさっぱりでなぁ」
俺のどう考えても不審(とは言っても事実なのだからどうしようもない)な答えにその女の子…フランは特に疑った様子もなく「ふーん」と言って俺をまじまじと見ていた。
正直この時の俺は身なりから、この子は所謂箱入り娘ってヤツで他の人と会った事がないんだろうなとしか思っていなかった。手遅れになった今改めて思えばこの時点で気づけたのだ、自分の周りに他人″全く″と会ったことのない身なりの良い箱入り娘なんて存在しえないということ…つまりは自分自身がとんでもない異常事態に巻き込まれている事実に。
「ところでフランちゃんだっけか?」
「うん!本当はフランドールって名前だけど、みんなフランって呼ぶよ!」
「そうか…じゃあフラン、正直俺はなんで君の部屋にいるのかさっぱりわからないんだけど、とりあえず自分の家に帰りたいんだ、だから出口の場所を教えてくれないか?」
そんな事にも気づかずに、とりあえず家に帰ることしか考えていなかった俺はフランから出口の場所を聞こうとした、しかしフランはなんだかつまらなさそうな顔をして。
「えー!お兄さんもう帰っちゃうの!?暇で退屈だったから遊んでよ!」
と言ってきた。
俺はポケットに入れた携帯で時間を確認する。夜の8時過ぎ、まぁこのくらいの年の子だったらまだ寝るには早いだろうし、何より可愛い女の子の頼みを断るのは″紳士″としては抵抗がある。
だけどフランの家族が来たら間違いなく″公共の守護者″を召還されて、当分臭い飯生活だよなぁ…そう思っていたら。
「遊んでくれないの…?」
なんだかフランが涙目になっていた…あぁ…駄目だ…泣き落としには弱いんだ…
「OK!時間もあることだし、少しくらいなら大丈夫だ!」
結局俺はフランに付き合うことにした。それを言うと、フランも「本当!?」と言って可愛いらしい笑顔になっていた。
うん、やっぱり女の子は笑顔が一番だ。泣いてる姿が良いとか言うヤツはクソだと思うね。
しかしまぁアレだ。これで俺は完全にチェックメイトだったのだ。ここで断る、せめてご家族に挨拶してからにしていれば少しはマシな結末だったんだろうが…
「それで、何をして遊ぶんだい?」
「うーんとねぇ…弾幕ごっこ!!」
弾幕ごっこ?聞いたことがない遊びだ…もしかしてSTGでもやるのかね?そう考えていたら、突然何かが弾ける音と共に俺の足下の床が砕けた。
「へ?」
正直何がなんだか解らなかった…
目の前にいたフランはいつの間にか右手を前に突き出し空中に浮いていた。しかもよく見たら背中から宝石の付いた枝みたいなのが生えている。
「えっと…フランさん?」
「なぁに?」
「あなた…何者?」
「吸血鬼だよ!」
「あと弾幕ごっこってなに?」
「これで…撃ち合うことだよ!!」
そう言ってフランは無数の光弾を俺に向かってバラまいてきた。
そこでようやく理解した。俺がいるのは某デジタル世界でも、ましてや俺のいた世界でもない…所謂ファンタジーな世界だということに。そして…
「ノォォォォォォォォォ!!」
只今絶体絶命の大ピンチだということも…
ヤバい!避けなきゃヤバい!本能がそう警告する。
殆ど無意識の内に横に飛び出し光弾の嵐を避ける。だがまた直ぐに新たな光弾が放たれていた。
こちらも体制を整えて全力で走り回避する。
「スゴい!スゴい!お兄さん人間でしょ!?今のは結構本気で当てるつもりだったのに避けちゃうなんてスゴいよ!」
「へっ!吸血鬼に誉められるなんて光栄だねぇ!こちとら体力と胴体視力には自信があるんだよっと!」
フランの感激に答えながら俺は光弾の嵐をかいくぐる。
余裕とはいかないが、避けられなくもない…というよりこの光弾の嵐には必ず″穴″のような場所がありそこを見つけて潜り込めば確実に直撃は避けられる。
だがそれも長続きはしない。
フランは自分の事を吸血鬼と言っていたが、もし本当なら既に体力の時点で差がありすぎる。間違いなく俺が先にバテるのは解りきっている。
しかもこっちはあんな光弾なんか撃てやしない只の人間だから攻勢出ることも出来ない。
こっちの勝利条件はフランが飽きるまで光弾の嵐を避け続けること…最悪だ…分が悪いにも程がある。
まるでポーン一体とキングだけで全部の駒の揃った相手とチェスをしてる気分だ。
「へぇ…お兄さんやっぱりスゴいね。今まで何度か弾幕ごっこしたけど、ここまで避け続けたのは人間だと魔理沙くらいだよ。けどコレならどうかな!」
そう言ってフランは懐から何かカードのようなものを取り出す…そして。
「スペルカード!禁弾「カタディオプトリック」!」
そう言ってまた新たな光弾を放ってきた。
先程よりもかなり大きい光弾が小さな光弾をばらまきながら向かってくる…しかし、その速度はかなり遅い。はっきり言って気をつけていれば歩いていても避けられる。
「…?」
ワケが解らなかった…単純に遊び目的のフランが″遊び″を延長するためにワザと体力回復する時間を与えるような攻撃にしたのか…それもまた別の目的があるのか…
俺はひたすら考える…だがしかしその思考は…
「ぐっ!?」
突然の激痛によってかき消された。
何故なら俺の左腕が皮一枚の所まで千切れていたからだ。
「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
認識したことによって更なる激痛で叫ぶ。
何故!?俺は間違いなく避けたはず…そこまで考えた所で理解した。
あの光弾…フランがカタディオプトリックと言った技は壁や床に当たると跳ね返るのだと。つまりは跳ね返った光弾が俺の左腕に直撃したのだと。
そしてこの痛みが生んだ隙は致命的だった。
「ぐがぁっ」
小さな光弾が右足の肉を抉る。そして腹を抉り左目を潰しそして…
「かはっ!」
大きな光弾の直撃で俺は吹き飛ばされた。
こうしてい今に至る訳だが、本当に油断した…ただそれだけだった…それが文字通りの命取りになったワケだが。
フランの声が聞こえる…もう終わりなのかと…
そう終わりなんだよ…
″終わり?″
俺はコレで終わり…
″本当にそれで良いのか?″
思えばロクな人生じゃなかった…
″まだ何もなし得てないのに?″
だけど最期が可愛い女の子手で殺されるのも悪くない…
″まだ何も手にしてないのに?″
″本当に俺はこれで良いのか?″
″心臓はまだ動いてる。片足が無事なら立てる。骨があれば支えられる。そしてなにより…″
「″魂はまだ死んじゃいねぇ!!″」
「!?」
そう言って俺は叫び立ち上がり左腕を千切り捨てる!
「ゴボァ!ガハッ!ゲハッ!」
その衝撃で血を吐き咳き込む。
正直死にそうどころか今の俺は間違いなくただの死に損ないだ…だが構うか!
自然と俺は笑い始める。ズタボロの身体で狂ったように、血を吐きながら。
それほどに俺は″楽しかった″最高に楽しかったのだ!
身体はボロボロで既に死体同然、立ち上がった所で勝てる所か生きられる可能性もゼロ。
だけどここまで感情が高ぶったのは始めてだった。
「あぁ…最高だ…この感じ…本当に最高だぜフラァァァァァァァン!」
「へぇ…お兄さん…サトルも楽しんでくれてたの!弾幕ごっこ!」
「あぁ最高だよ、最高に高ぶるぜ!だけどなぁ…もう身体がボロボロでまともに動かねぇんだわ…だから次でラストになっちまう…だからよぉ…」
思えば俺の人生なんざひたすら同じ事の繰り返し、平凡その物だった…なら…最後の最期!死の間際!三途の川に片足突っ込んでるなら!!
「ラストスパートくらいド派手にやってやるぜ!来やがれフラン!お前の一撃くらい受け止めてやらぁ!」
「やっぱり面白い!面白いよサトル!本当に最高だよ!この感じ!」
俺の宣言を聞いたフランも高ぶってるのか、さっきよりも凄く楽しそうな表情だ。
あぁこれで理解した、俺もコイツも同じだったんだ…どちらも退屈だった、ただそれだけなんだ。
だからこそ退屈から…つまらない日常から解放されたかった。
俺をこの世界につれてきたヤツには感謝したいぜ…俺の中の獣を解き放ってくれたことに!
間違いなくコレが目的じゃなかっただろうが、俺にとっては最高の最期だ!
「じゃあこれで最後…だからしっかり受け止めてね」
「あぁ!魅せて見ろお前の力を!そして魅せてやるぜ俺の力を!」
「いくよサトル!禁忌「レーヴァテイン」!!」
フランのその言葉と共に彼女の手に紅い焔の剣が現れる。そしてそれが最高級の殺意を持って俺に振り下ろされた。
その姿は今まで見てきた何よりも愛らしく…そして美しく見惚れてしまう程だ。
そしてコイツが俺の死…だけどよぉ…フランに言った手前だ!派手な散り座間にゃぁこのまま喰らうのは物足りねぇ!
考える必要はねぇ既にやり方は本能が…魂が知ってる!
ならやることはたった一つ…魂を燃やせ!燃やし尽くせ!!
目の前の殺意を掻き消す程に…この世の全てを焼き尽くす程に!熱く激しい紅蓮の焔で!!
「ヴォォォォォォォォォォォォォォォォォオ!!」
叫びと共に俺の残された右腕が焔を纏う…いや、最早それは魔神の腕を彷彿させるほどに巨大な焔の塊だった。
そして…
「ヴォォォォォォォリャァァァァァァァァァァァア!!」
その拳をフランの剣に叩きこんだ。
しかし俺が憶えているのはそこまでだ。
その後何があったのかそいつはハッキリとは思い出せない。だけど薄れゆく意識の中、俺に近づいてくるフランの姿…そして首筋に感じる心地良い熱さ…それだけはハッキリと憶えていた。
人が産まれるまでは十月十日…だけどそれは本当の誕生なのだろうか?
少なくとも俺の誕生は今日この時だ。
だけどそれは人間としてじゃない。
秋山慧はこの日吸血鬼として誕生したのだ。
今回の話はここまでです
最初にも何度も書きましたが、この小説は以前別アカウントで書いていた東方紅蓮録のリメイク版です
リメイク前との違いはストーリーもそうですが、主人公秋山慧が東方を知らなかったり、戦闘狂気味だったり、若干粗暴だったりします…まぁやっぱりロリコンなのですが
ちなみに見た目に関しても茶髪の天パから、黒髪のボサボサ頭に変更してますが身長は変わらず160センチ前後で、イメージはド○フターズのビリーザキッドです
他にも色々な所を変えてますが、変更点はここまでにします
次はリメイクに至った過程ですがリメイク前自体が書いたり書かなかったりを繰り返しながら第一章を書き終えて、第二章のネタが決まらないのと、第一章のラストを変えようとしたりしている内に二次創作の方がアウトになってそのまま放置する形でやめてしまっていました
しかし、最近になって久々に新しい作品硝煙の鴉(とは言っても不定期な上にまだ二話しか書かずに放置中ですが)を書いている途中で東方紅蓮録をちゃんと書きたくなったのと、リメイク前を読んでいた友人に考えていた内容をちょろっとネタバレしたところ、また読みたいということになりrestartという形で書くことにしました
ただ以前のもの以上の熱苦しさと硝煙臭さ、そしてコメディとその裏にある狂気によるダークさを目指そうと考えてます(最大の目標は完結ですが)
全体的には熱いダーク(グロ過ぎる)ヒーロー(狂)ファンタジー(炎と鉛弾と格闘)でいこうかと…うん全然ヒーローモノでもファンタジーモノでもないね