破戒(上)
ーーークラウン家、庭
門からずっと離れた庭の中央には大きな泉があり、水が流れている。周りには草木が規則正しく生えていてとても見映えが良い。そして、その泉の前に一人立っている少年、彼こそがクラウン家次男にしてこの国でもトップクラスの能力を持つ者、アレックス・クラウンである。
……約束の時間まであと少し。自分なりに色々考えてはみたものの、やはりハイラルを倒す方法は俺の能力のごり押しのみでは足りない。奴に勝つには俺は俺の限界を超える必要があった。俺の破壊、限界の破壊を、俺自身の能力を破壊することにあった。前の戦いでどう負けたかはわからないが、おそらく破壊を連続で使い続けた結果、俺の体力がなくなり、そこに畳み掛けたのだろう。それ以外で俺が負けるわけがないのだから。
俺は前の俺とは違う。体力も魔力量も魔力コントロールの精密さも全て段違いだ。今俺に勝てる人間など父上くらいなものだ。
……今なら行ける。気を抜かなければ勝てる。俺は俺の能力を信じていればいい……。これを突破できる力など兄貴にはない。
「…………悪いが勝たせて貰うぞ、兄貴……。」
「ほう、随分だな。アレックス。」
やっとか……。
「よお、ハイラル……。良い朝だな。俺は気分が良いぞ。何せ、よくわからない負けを拭う事ができるのだからな……。」
「いや、違うぞアレックス。お前はまた俺に負ける。負けに負けを重ねることになるんだぜ。」
「お前も言ってくれるじゃないか。」
「お前もだよ。」
「フッ…。」
「ハッ…。」
55、56、57、58、59…
08:00
勝負開始
多忙過ぎて辛い