末っ子
ーー朝
「んー…ふわぁー…」
現在午前五時、思ったより早く起きてしまった。アレックスと戦うのは七時、二時間もある。やることも何もないのに起きてしまうとは。
「暇だな…」
リオンの部屋にでも行くか…
ーーリオンの寝室
「すー…すー…」
布団を被らず、寝相が悪いのか服がはだけてしまっている。風邪をひいてしまうぞ。
さて、どう驚かそう…爆音か寝技…どちらにしよう…よし。
防音結界を創造、展開。スピーカー創造、設置。能力により聴覚を消す。
5、4、3、2、1…
「はいドーン」
バンバンバングチャッメキメキドーン
「うわあああああ!?」
スピーカーを破壊、消滅させる。聴覚を元に戻す。
「あ…兄さん!またかよ!」
因みに、これをやり始めたのは俺が15歳の頃から。コイツがなかなか起きない時に考えた方法。俺は悪くない。悪いのは起きないリオンだ。
「ぐああ…頭がガンガンする…。この鬼、悪魔、兄さん!」
「本当のことだから何も言い返せない。」
しかしこの俺を鬼や悪魔程度と列べられるとは…不名誉だ。並べるなら鬼神、悪魔王、邪神くらいではないとな。
「こんな時間に何の用だよ。」
「暇だから世間話でもしよう。」
「兄弟なんだから世間も何も無いでしょ。」
「プライバシーも無いもんな。」
「ていうか、兄さんは俺の部屋にどうやって入ってきたの?無能力者なのに。」
「創造でなんとでもでもなる。座標を定めてドアを創造し、ドアを開ければはい到着。」
「…創造ってそんなことも出来るの?」
「ああ、上達すればな。」
勿論嘘だ。創造は物以外を創ることはできない。座標を結んで移動など空間属性と創造属性を持っていなければ出来はしない。当然、両属性を持っているミリアでさえ本気で魔力を込めないとできない。
「そんなことはどうでもいい。せっかく早く起きたんだ。特訓をしよう。」
「えー!やだよ!よく考えたら俺には能力があるから魔法なんて必要ない!」
またそんなことを言う。これだから末っ子は…。
「お前、これから一生能力しか使わないつもりか?」
「当たり前だ。俺の【怨狐血真】と【暴火凶寒】があるからな!この二つさえあれば充分闘えるよ。」
「お前は馬鹿だな。」
「え?」
「もしお前の能力の弱点がバレたらどうするんだよ?ごり押しでもするのか?」
「俺の能力に弱点なんかない!」
「沢山あるぜ?【暴火凶寒】は破壊に防火防寒、空間魔法で空間を歪曲させたり消せたりもできる、風でも多少なりとも防ぐことができる。【怨狐血真】は相手が最も恐れる物に化ける能力。その最も恐れる物が害虫、小動物だったら簡単にやれる。勿論、破壊や空間でもやれる。お前の能力は魔力の消耗が激しい。十回もやられたら終わりだぞ。」
「…」
「属性のせいで攻略には少し難があるが、持っている者からすれば取るに足らない能力だ。」
「…っ!」
「だからこそ、魔法を使えるようにしなければいけない。お前は属性に恵まれている。水と【暴火凶寒】を組み合わせれば氷柱を作ったり、地面を凍らせたりもできる!能力を使わなくたって濡れている地面に雷を通せば広範囲に攻撃できるだろう。それに、厚い氷の壁を作り閉じ込めることもできる。」
「お前には魔法が必要だ。」
「特殊属性持ちにも幾らか対応できるだろう。」
「魔法が使えたって悪いことは無いだろう。」
「…そうだね。そうだよね。無能力者の兄さんだって強力な能力を持った兄貴と戦って勝った…」
「わかった!俺、頑張るよ!頑張って兄さんみたいになる!強くなる!」
「そうだ!その意気だ!」
やっとわかったか、末っ子よ。兄さん嬉しいぞ。
「そういえば兄さん、今日兄貴と闘うんだったよね…。」
「そうだけどどうした?」
「もう六時五十分だよ?」
「うん、知ってる。」
「急いだ方が良いと思うけど…。」
「わかってるよ。じゃあ、今日の夜、お前の部屋に行くから、じゃあな!」
ガチャ
バタン
「俺も行くかな…」
カチ
ガチャ
バタン
忙しい。更新、一週間、一回、目標。