狂気の正気
ガチャ
バタン
やっと部屋に帰って来れた。にしても濃い1日だったな。もう11時だ……早く寝ねば、明日アレックスに叩き起こされる。それは嫌だ。
バサッ
「お休みなさい……。」
「……またか……。」
目覚めたそこは黒くて大きな扉の前。周りには終わりの見えない荒野。ここにはもう何百回来たことだろう。ここに初めて来たのは俺が7歳の頃。そこで色々なものを貰った。まあ、それは能力なのだが、俺がアレックスやセレナに対して使った能力とはまた別の能力。いや、能力と言うよりは呪いと言った方が正しい。なんせこれのせいで俺の頭の中で不特定多数の声が常に鳴り響いているからである。勿論今も。俺の中、俺の魂には1億5万8千64人がいる。今言った奴らは全員犯罪者で、軽いものは窃盗や誘拐、重い罪を犯したものは、強姦や大量殺人をした人間。そいつらは本当にうるさい。俺はこの10年間の間、こいつ等とずっと対話し、和解した。対話してわかったのは、こいつ等全員精神異常者だと言うことと、俺自身も異常、狂っていたと言うこと。あいつ等の言うことに理解出来てしまった。国が誇る貴族の長男たる者がこんな奴らと同レベルだったというわけだ。まあ全員とは言えないが、奴らは話してみると案外いい奴らだった。俺に対しては殺す、一緒に居たくないという感情が沸かないそうだ。あと何故頭の中で声が鳴り響いているのに他の声が聞こえているかと言うと、俺の能力でその声と他の声を分けて聞くことが出きるから。まあ結局声は聞こえて来るわけだがな。……本題に入ろう。俺は今から一人の神に会う。まあ、神は神でも……。
「入るぞ。」
邪神なのだがな。
ガチャ
扉を開いたそこは部屋と言うには少し大き過ぎる部屋。広さで言うと少し小さい公園と同じ大きさ。黒を基準に赤と白の装飾がされており、その部屋の中心には、赤い椅子に座ったピンク色の長髪の少女。名前はミラ。あれが邪神……のなれの果て。以前、戦争を起こし、親父殿と他の神に倒された邪神、それがこいつ。
ダッ
ギュッ
「久し振りいいいいい!もう扉開けるの遅いよこっちから扉開けちゃおうかと思ったよ!にしても久し振り!前会った時から10日と2時間14分57秒だよ!ああもう本当久し振り!もう怒った!罰に私にぎゅっとされろ!ってもうしてるけど。相変わらずいい匂いだね!シャンプーの匂いとハルの匂いが混ざってもう最高!これがあるから私はハルと会うのを我慢出来る!あ、違うよ?匂いがハルの魅力なんじゃなくてハルの匂いだから魅力的なんだよ!勘違いしないでね!私はハルのことが大大大大大大大大大っ好きだからハルの色々な所が大好きなんだから!」
こいつの言うハルとは俺のこと。ハイラルという名前の最初と最後をとってハル、だそうだ。
「つうか離れろ。」
「ああん!そんな所も大好きぃ!」
いや離れろよ。
「離れろ。」
「ふふーん、嫌だもんね!せっかく会えたのにここでチャンスを手放すなんてもったいない!」
「手放せ、離せ、いい加減俺をここに呼んだ理由を話せ。」
「え?そんなのハルに会いたいからに決まってんじゃん!」
「帰る。」
「ごめん、ごめん、冗談だよ!確かに私はハルにも会いたいけど、ハルに怒られることはしたくないから。」
「いや、別に俺は明日用事があるから戻りたいだけでお前と会いたくないという理由では無い。予定さえ無ければ何時だってお前と会いたいよ、ミラ。」
「へ……!?」
「本当だよミラ……愛してる……。」
「あう……。」
さっきまであんなだったのに攻められると顔真っ赤。本当に可愛いな。
「話しがズレたな。で用事は?」
「あ、いやえっと……ハルは2ヶ月後に旅に出るんでしょ?」
「ああ、そうだが?」
「私も連れてって欲しいな~って……駄目?」
「それって、俺の中から出るってことか?」
「まあ、そうなるかな……。」
「別に俺の中でもいいじゃん。なんか理由あるのか?」
「えっと……大好きな人と一緒に色々周れるって素敵じゃない?だから……。」
「駄目。お前は俺の中にいろ。」
「……。」
あからさまにテンション下がったな。フォローするか。
「今回は俺の家族と行きたいんだ。ミラとも色々な所へ行きたいけど、今回は駄目なんだ。また今度、機会があったら一緒にどこか行こう。な?」
「本当に……?」
「本当だ。俺は嘘はつくけど、約束は守るよ。」
「じゃあ約束だよ!」
「ああ、今度どこかへ行こう。」
「ハルと旅か……ぐへへ……。」
「女の子にあるまじき声だな。まあ、そういうわけだから今回は我慢してくれ。」
「うん!」
変わらないな……お前も俺も10年前から。
「じゃあ俺はそろそろ朝だし起きるよ。あいつを待たせる訳には行かないからな。いってくるよ。」
「うん!いってらっしゃい!」
ガチャ
「待って!」
「ん?なんだ?」
「大好きだよ!」
「……知ってる。」
バタン
「いってらっしゃい……私がこの世で最も、そして唯一愛おしい人間……。」
戦闘パート早くやりたい