表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
矛盾の狂気  作者: クロ
5/12

親父殿

 前の会話から10分が経過。俺は今、親父の部屋の前にいる。こうしてみると、流石国で2番目に偉い貴族。廊下が長く無駄な部屋が多い。この家を設計した奴は誰だよ。この家を潰すだけで集落が出来るぞ。……そんな事、今は良いか。そろそろ行くとしようかな。


 コッコッ  


 「入れ。」


 ガチャ


 「失礼致します。」


 「ああ、珍しい。ハイラルか、どうした?」


 大きな部屋の中は豪華な装飾が施されており、ここから10mは離れている大きな机の前で椅子に座っている男性。これが俺の親父、クロード・クラウン。40近い癖に20代にしか見えない見た目、長く伸ばした銀髪、銀色の眼。そして世界最強の英雄。25年前に起きた神と邪神の戦いに参戦し、最強の神と二人で戦いに終止符を打った人間。属性は全て持っており、能力は【絶対強者】自分が戦っている者、戦った、戦いを見た者の上位互換になる能力。そしてそれを記憶する能力。例えばアレックスの戦いを見た場合、アレックスの能力、魔力、属性、その他をコピーし、コピーしたそれの上位互換となる。そしてその上位互換を何時でも引き出す事が出来るという化け物能力だ。その力を使い邪神を倒した。正直俺以外に親父を倒せる奴はいない。まあそんな事はどうでもいいが。

 

 「今日は一つ、言うことがあって来ました。」


 「うん?何だい?」


 後この人は……。


 「家出させて頂きます。」


 「駄目に決まっているだろう!!?何を言っているんだ!!」


 親バカである。とても鬱陶しい程に。


 「家出だと?お父さん許しません!!」


 うざい、何がうざいって言い方がうざい。


 「落ち着いて下さい、親父殿。さっきのは冗談です。」


 「そうか……良かった。」


 「旅に出ます。」


 「変わらないじゃないか!!何で!どうして!」


 すげえヒステリーだなぁ。


 「俺は産まれてこの方、この国から一歩も出たことがありません。この国に産まれ、この国で育ってきました。俺はこの目で見てみたいんです、外の世界を。色々な体験をしたいんです。知っていますよ?親父殿が色々な国へ行っていた事を。」


 「それは仕方なくだ!可愛い我が子を危険に晒す訳にはいかん……。」


 ここまでは予想通りだ。これを言えば絶対上手くいく!


 「俺は親父殿を尊敬しているんです!俺は親父殿の様になりたい!民を思いやる気持ち、それを包み込む寛大さ……それは色々な人間を知れてこそ!そのためには経験を積み、他国の人間と触れ合うことが必要なんです!どうか、お願い致します!」


 「……………………そうか。」


 ……?しくじったか?なんで黙ってるんだ、おい。何か言えよ。


 「そうか……そうかそうかそうなのか……。」


 椅子から立ち、無表情で俺の場所へ歩いてくる。怖い。


 その直後。


 ダッ


 「可愛いなぁお前は!」


 「ぐぇっ。」


 5m位離れているのに一瞬で抱きついてきやがった。苦しい。


 「そうかそうかそうかそうかそうか!お父さんみたいになりたいのか!嬉しいなぁ!」


 尊敬しているのは本当だけど、やはりこの人みたいのにはなりたくない。


 「お、親父殿……苦しいので離れて下さい……。」


 「ああ!すまない!」


 本気で抱きついてきやがって……下手したら身体丸ごと持ってかれるとこだった。全く、今は一応人間なのに。


 「そうか……俺の様になりたいのか…そうだよな!そうだその心意気!その向上心!やはりお前がこの家の次期当主に相応しい!」


 ……もしかすると、俺はいらないことを言ったのかもしれない。


 「あ、そうだ。俺以外にもレイナ、ミリア、レイン、リオンも一緒に行くので。」


 「多すぎだろ!……まあ、お前の能力があれば問題ないだろうけど……。」


 因みに親父殿は俺の能力を知っている。俺の能力を知っているのは親父殿を含めて世界で二人だけ。同じ化け物同士仲良くさせてもらっているよ。


 「俺の能力なら死んでも生き返られるから。」


 「不吉なこと言うな……。」


 「冗談ですよ。では失礼致します。」


 「ちょっと待て。何ヶ月後に行くんだ?」


 「2ヶ月後、来年の初め。新年が明け、警備が甘い内に行きます。もしそれが無理だったとしても、ミリアの空間魔法で移動すれば問題ないと思っています。」


 「そうか……まあ良いだろう。あいつらのことだ。お前に付いて行きたいとか、楽しそうだからとかだろう。お兄ちゃんが付いていれば平気か……あ、そうだ。お前ら何年後に帰ってくるんだ?」


 「三年……位ですかね。」


 「まあいい。どうせだから楽しんで来い。王や民衆には上手く伝えておくからさ。」


 「ありがとうございます!では、明日は少し早いのでこれで。」


 「ああ、お休み、ハイラル。」


 ガチャ


 バタン


 ある程度理解のある親で良かった。明日はアレックスとの戦いだ。早く寝るとするか……。

書いてて思ったけど、もうこれ家出じゃないよね。まさに矛盾ですわ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ