〜序章〜 第一話
僕は、死んだらしかった。
真っ暗な闇の中を、ただただ、ぼんやりと見つめているだけだったけど、何故か、そう思った。
第一に、身体が軽かった。
第二に、直感的にそう思った。
根拠の無い事だけれど、信じられる気がした。
やがて、僕は辺りを見回し始めた。
今まで、動けるのかさえも、分からなかった。
僕…と言うのだから、男なのだろう。
性別さえも、分からない。
当然、自分が誰なのか、分からなかった。
ふと、僕は背中を見た。
「あっ」
と声を上げたかった。
振り向けなかったのだ。
声が、出なかった。手も無かった。足も無かった。
只の塊にしか、過ぎなかった。丸く、ポウと青白く光る、俗に言う、人魂だった。
僕は、くるくると回ってみたり、フワフワと漂ってみたりした。
いつの間にか、翼が僕の背中辺り、に生えていた。
その翼は、大きく、僕をすっぽり包み込むくらいだった。
「あぁ」と僕は思った。
「僕は、こんなに小さかった」
そう思って、自嘲の笑い声を上げたくなった。
でも、やっぱり声は出なかった。しかも、笑うという感覚すらも、分からなくなっていた。
翼は、少し後ろ辺りに力を込めてみると、バサリ、と動いた。
暫く、翼をバサバサと振って遊んでいた。
「元気…そうですね」