五ー弐話・・・・・村での聞き込み
店に入ってきたのは、サリナさんと、ユーマ君だった。二人と会うのは約半月ぶりだった。
「やぁ、久しぶり。最近、お店の方もお休みでどうしているのかなって思っていたよ。」
二人に挨拶をすると、サリナさんは不思議そうに僕の顔を見詰めている。
「あら~? サークさんに~そっくりな人です~。ユー君の~知り合いですか~?」
僕はその言葉に脱力しかけたが、ユーマ君はすかさずサリナさんの言葉を訂正してくれた。
「サリ姉、そっくりな人じゃなくって、サークさん本人だよ。」
サリナさんは僕に近づいてきて、顔をじっくりと覗き込む。
「あらら~、これは失礼しました~。サークさん、お久しぶりです~。」
サリナさんは相変わらず、天ね…独特な感性の人だと、僕は心の中で思ってしまった。ユーマ君ともサリナさんに続いて、挨拶を交わした。僕は雑貨屋のおっちゃんの聞き込みは終わっていたので、サリナさん達の用事が終わるのを待って一緒にお店を出る事にした。
外に出てから最近の様子を聞くと、二人は両親に呼ばれてこの村の近くで見つかった遺跡の調査に参加していた。二人の両親は王立研究所と繋がりがあり、時々遺跡の発掘調査に同行することがある。今回の遺跡はかなり古い遺跡で専門的な知識がいる為、サリナさんの古代語などの解析能力を期待されて呼ばれたらしい。サリナさんは王立学院を首席で卒業し、そのままお店の手伝いをするといって、色々なところの勧誘を断って今に至るそうだ。
僕は発掘している現場が魔物の出現場所の山を挟んで反対側でもあり、何か変わったことが無いか聞いてみる。
「たぶん、知っているかと思うけどこの村の近くで正体の分からない魔物が現れたみたいなんだ。その調査依頼でここに来たんだけど、何か知っていることは無いかな?」
ユーマ君は少し考えたが、心当たりは無かったようだ。
「僕達がここに来てからは特に変わったことは無いですね。サリ姉はどう?」
サリナさんも何か無いかと考え少しの間、首傾げて自分の思考に耽り、何かお思いついたようだ。
「う~ん、そうですね~ あ! そうだ。」
サリナさんは今発掘している遺跡に魔物を研究していたようなことが残っているという。詳しく内容を聞きだそうとすると、遺跡の内容は関係者以外は極秘扱いの為、ユーマ君は慌ててサリナさんの口を閉じさせた。っていうか物理的に口を手で押さえた。
「あー! サリ姉、駄目だよ。関係者以外には秘密にしておかないと駄目だって言われているんだから。」
「う~う~!」
口元を押さえるのに一緒に鼻も押さえているみたいで、サリナさんは顔を真っ赤にしながら呻っている。
「ユーマ君、そろそろ放してあげたら? かなり苦しそうだよ。」
サリナさんの顔色も赤から青に徐々に変わりかけて涙目になっている。ユーマ君は直ぐに手を離し、サリナさんを解放してあげた。
「ユー君~ お姉ちゃんを苦しめて~ そんな意地悪な子に~ 育てた覚えはないですよ~」
サリナさんは腕を組みユーマ君に顔を背けて怒っているようだが、なんだかプン!プン!っという様な擬音が聞こえてきそうな態度で年齢より幼く… いや、子供みたいに見える。僕は自分でも気が付かないうちに笑っていたようで、サリナさんの怒りの矛先が僕に向いてきた。ユーマ君を見てみると、素知らぬ顔でこちらを見ないようにしてサリナさんをやり過ごす気でいる。僕は仕方がなしにサリナさんの怒りを受けるが、やはりその幼い仕草では迫力が無いので年上の女性だと忘れて宥めてしまう。
「も~! 私~ そんな子供じゃ~ ないです~」
「まぁまぁ、そうだ。これ食べます?」
そう言って、僕は非常食で持っていたドライフルーツをサリナさんに渡した。渡されたドライフルーツを口に頬張り、幸せそうな顔をして食べている。その姿は先程までの怒りの色は無くまるで小動物課のように無邪気な姿だった。これで僕に向かった怒りの矛先は無事に収まったと安心したところ、原因を作ったユーマ君はさらりと、帰ろうと声を掛けてきた。
「サリ姉、そろそろ戻ろう。サークさん、この辺で失礼します。」
ユーマ君、それはちょっと酷くないか? と思いながらも、またそれに触れてサリナさんの機嫌が悪くなっても面倒だと思い、特に何も言わなかった。
「ああ、またね。調査の途中で顔を出すかもしれないけど、その時はよろしくね。」
「サークさん、余りこちらには近づかない方が良いですよ。関係者以外は立ち入り禁止になっていますし、護衛隊の皆さんと揉めるかもしれないです。」
「そこまで厳重にしなければいけない遺跡と聞くと逆に行ってみたいが、揉め事になるなら大人しくしておくよ。」
「そうしといて下さい。では、失礼します。」
ユーマ君は一礼をして帰っていく。右手にはこちら向かって手を振ってさよならを言うサリナさんを引っ張って。僕はどちらが年上かと思いながら眺めていた。
ユーマ君達と別れてから他の人達に話を聞いて回ったが魔物について新しい話は聞けなかった。日も傾き掛けてきたので一度ザイルさんの家に戻ることにした。家に入るとザイルさんは今夜のご飯をこちらで用意をすると言い、先に装備や手荷物などを置く為に少し離れたところの空き家を案内してくれた。空き家になって、そんなに経っていないから少し掃除をすれば寝泊りするぐらいは大丈夫だと説明してくれた。空き屋に行くと一人の女の子が掃除をしてくれていた。ザイルさんが女の子に労いの言葉をかけて、僕に紹介をしてくれた。
「サーク殿、この子はリゼットじゃ。ここの掃除をしてもらたんじゃ。リゼットの家は直ぐ近くじゃから、この村のことで何かあれば聞けばいいじゃろ。」
「わざわざ、ありがとうございます。君もありがとう。」
リゼットは頭を下げて家から出て行く。ザイルさんも荷物を置いたら夕飯を食べに来るように行って出て行った。僕は荷物を適当に置いて今日の村での聞き込んだ内容を思い返してみた。誰も姿を見たことが無く、強い魔物の死体が何度か発見されているだけだ。これだけなら本当に正体が分からない魔物がいることにはならない。村人達が不安になっているのには間違いが無いから明日は現地に行って周辺を探索してみよう。
明日の行動を決め、ザイルさんの家に夕飯をいただきに行った。家の前まで行くと美味しそうな香りが漂ってきて、夕飯を期待してお腹が鳴く。扉をノックしようと手を伸ばすと、勢いよく扉が開かれて中からコウが飛び出してきた。
「お! 兄ちゃん、遅いよ。今から呼びに行こうと思ったんだ。」
「遅くなって、ごめんな。」
僕はコウに謝って、家の中に入る。机の上にはパンとスープ、肉料理が並んでいた。席に案内されて、食事を始める。肉料理は薄切りの肉と野菜を炒めた物で香ばしく、香辛料のハーブの香りが良かった。スープは大きめの野菜と茸が入って、茸からの旨味が利いている。少し固めのパンをスープに浸して食べるとパンが柔らかく食べやすい。
食事が終わり、ザイルさんに明日は森に行くことを伝え小屋に戻っていく。
ここまで読んで頂き、ありがとうございます。
長い間あいてしまい、すみませんでした。
まだ続きを書くのでよろしくお願いします。




