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物語から伝説へ  作者: 愚者の夢
三章
19/32

三ー伍話・・・・・城下町にて

 …皆で見送った。

 

 お屋敷の中に入るとグレンさんは、僕を中庭ヘと誘った。中庭に着くと僕に武器を構えるように言い出した。僕は何をするのかと聞くと、夕御飯前に軽く運動をするので付き合うように言われた。軽くと言っても実戦的な組み手になるのだが…

 

 僕は剣を構えて、グレンさんの前に立った。グレンさんの構えは隙が無く、何処から攻めようか迷っていると、挑発をするかのように手招きをした。このまま向かい合ったままお見合いをしていても何もならないので、誘いにのって攻撃を仕掛けてみた。

 

 ヒュッン

 

 僕の攻撃はグレンさんに見切られ余裕で回避された。僕は自分の強さにある程度は自信を持っていた。確かにグレンさんから伝わる強さは並大抵ではないが、僕の攻撃を防御をせずに避けるとは思わなかった。しかも、僕が捉えられない動きをするのではなく、演劇の殺陣のように決められた所に打ち込んだ斬撃を、決められた所に移動して避けたように不思議な感じがした。その後の攻撃もどれだけ連撃を繋げても、目にも止まらない体捌きからの斬撃であっても、完全に見切られて回避された。

 

「さて、準備運動はこれくらいで良いだろう。そろそろワシも攻撃させてもらうぞ。」

 

 肩を解しながら、僕に告げてきた。グレンさんの攻撃は一撃一撃は避けたり、防いだりと対応出来た。しかし、連続で攻撃を繰り出してくるとまるで詰め将棋のように少しづつ確実にどんな防御も出来ない状態に繋げていく。そこには武術の師匠であった祖父とは違う強さがあった。

 

 何度かの攻防の入れ替わりがあったが、それはグレンさんの匙加減一つで実践なら僕があっさりと負けていただろう。組み手はカーラさんが呼びに来るまで続いた。僕は完全に息が切れていたが、グレンさんは軽く汗をかき軽めの運動をし終えた後のようだった。結果から言うと完全に僕の負けであった。祖父のように僕以上の体捌きで、避けているのではなく、又僕以上の速度で攻撃を繰り出している訳ではないのに、何故こんなに一方的な勝敗になったかグレンさんに尋ねた。グレンさんはカーラさんを待たせると後で怖いから、夕御飯を食べた後で教えると言ってくれた。

 

 案内された部屋には二十人で食事をしても余裕のある大きなテーブルがあり、用意のされている料理も見たことの無いような豪華な物だった。昨日リリアに作ってもらった家庭的な料理も美味しかったが、この豪華な料理も美味しかった。しかし、毎日食べることを考えるとやはり家庭的な料理のほうが…と思っていたら、今日は僕が来たので歓迎の意味を込めて豪華な料理になっていると言われ、安心した。

 

 食後、グレンさんは先程の組み手が何故一方的な流れになっていたか教えてくれた。僕とグレンさんの身体能力を比べると僕のほうが高いらしい。しかし、グレンさんから見ると身体能力だけは高いが、動き自体はまだまだ雑で隙が多い。僕がグレンさんの五割増しの動きが出来ても、動作に三拍子掛かっていては、グレンさんの一拍子の動作の方が速い。だが、グレンさんの動きを習得すれば僕はまだまだ上にいけると確信した。でも、まだ分からないことがあった。いくらグレンさんの動きに無駄が無かったとしても、僕の動きを完全に読んで、見切ることは別だ。何か別の訳があるはずだと再度聞いたら、経験の差、それと目だと言われた。経験の差はグレンさんと僕とでは埋めきれない差があるのは分かる。目についてはどうだろう?詳しく聞いてみるとグレンさんは自慢気に話してくれた。

 

「ワシは昔から目は良い方だった。視力、動体視力、観察眼、洞察眼などの能力が高く、お前の祖父との組み手でも勝率四割以上だったぞ。」

 

「な!…あの祖父に四割以上ですか…」

 

 僕は純粋に驚くしかなかった祖父が生きていた時は勝率一割にならなかった。今でも一割いくかどうかだろう。しかし、グレンさんは若い頃の祖父とほぼ同等の強さを持っていたことになる。

 

「お前の祖父はワシより、力、速さ、技、どれを比べても上をいっており、唯一勝っていたのが目の良さだけだった。自分の無駄な動きを無くしていき、相手の動きの隙をつく様にしていき、当時最強と称されていたあやつと互角に戦えたんだ。それに比べたら、お前の動きはまだまだ隙だらけで自分自身を制しきれていない。」



 グレンさんは僕にまだまだ未熟だと言い放ち、また明日の朝から組み手をするので付き合うように言ってきた。僕もまだまだ上を目指すのにグレンさんからの教えは正直有り難かった。

 

「グレン師匠、これから宜しくお願いします。」

 

 グレンさんは少し照れたようだったが、僕が修行のけじめの為と言うと納得して受け入れてくれた。但し修行の時だけで、いつもはグレンと呼ぶように念を押してきた。

 

 …次の日、僕はグレンさんの修行を朝から受けてバテ気味だった。朝食の時にこれからの予定を聞かれので、先日冒険者ギルドに登録をし、当面は色んなクエストを請けようと思っていると伝えた。そこから約三時間、グレンさんの若い頃の冒険談を聞かされる嵌めになった。

 

 …グレンさんの話が落ち着いたところを見計らって、ギルドに行ってくると伝え、逃げ出すようにお屋敷を出た。昨日は巡回馬車に乗って来たが、自分の足で歩くのも良いだろうと思い色々見ながら向かうことにした。


 この辺りは住宅街らしく回りには大通りで見たような出店は無く、落ち着いた感じであった。たまに見かけるお店は宝石や服等の看板が掛かってある。

 

 暫く歩くとお城の堀…ここまで大きいと湖だな。よし! 湖と呼ぼう。実際、後から聞いた話では湖の地形を利用して城を建てたらしいが…

 

 湖面に写るお城は水面の輝きと相俟って、お城自体が光り輝く様に見える。湖の回りには散歩を楽しむ家族連れやお城の絵を描く人など様々に過ごしている。

 

 …大通りの方へ向かって歩いていくと、人が段々と増えていった。それに比例するように出店や屋台などのお店も増え、活気が出てきた。昨日は通り過ぎるだけだったが、今日は急ぐ必要が無いので、色んな店を覗きながら行こうとした。何軒かお店を回ったが、僕が住んでいた近くの町とは、比べものにならない品揃えで、見ているだけでも十分に楽しめた。

 

 次のお店に入ると、武器や防具が目に入った。どれも丁寧に手入れされており、見やすく並べられていた。今日は武器より防具を見ようと思い防具が並ぶ一画に向かおうとすると横から名前を呼ばれた。

 

 王都には知り合いは殆ど無く、呼ばれた方を向くとそこにはバータックさんがいた。

 

「バータックさん、おはようございます。いや、今の時間なら、こんにちはかな?」

 

「ええ、こんにちは。サークさん、何かお探しですか?」

 

「探すって程ではないですが、冒険者ギルドに行く途中で色々と見て回ろうと思って、立ち寄ったんです。」

 

「そうですか。あ! そうだ。今、少し時間ありますか?」


「別に急いでいないので大丈夫です。」

 

「御礼の件です。ちょっとついて来てもらえますか?」

 

 バータックさんは僕をお店の奥へと案内してくれた。

 

 途中、関係者以外立入禁止の立て札があったが…

 

「バータックさん、お店の奥に勝手に入って良いのですか?」

 

 僕は少し不安になり、バータックさんに話し掛けたが、バータックさんは一瞬何の事か分からないような顔をしたが、すぐに思い付いたように答えてきた。

 

「あぁ、大丈夫ですよ。ここは私のお店ですから。」

 

 案内してくれた奥の部屋は、表の賑やかな雰囲気とは違い落ち着い雰囲気があった。その部屋に並べられている武器や防具は表の物とはランク自体が全く違う。

 

「サークさん、気に入ったのがあれば、御礼と言うことで差し上げます。」

 

 バータックさんは満面の笑顔で言ってくれた。しかし、どれを見てもかなり高価そうで、気軽に貰える物ではなかった。暫く防具を見ていたが、どれも高価で迷っていると、部屋の片隅に古い感じの黒いコートがあった。近付いて見てみるとコートと中に上下の防護服が組合せてあり、鎧などと違って動き易そうな装備品だった。他の商品と違い値札もなく、使い込まれた感じはあるが、何故か気になった。

 

「バータックさん、この黒い防護服一式は値段が付いていないですが?」

 

「最近、倉ごと仕入れた際に、中にあった装備ですね。鑑定が済んでいないので、値段はまだ決めていないです。実際その装備は下手な鎧より守備力が高いとはとは聞いています。」

 

 バータックさんの説明を聞いて、少し残念に思いながら答えた。

 

「そうですか。それならやはりいい値段が付きそうですね。」

 

 バータックさんは首を振りながら軽く否定してくれた。

 

「いや、これは中古品扱いなので安くなるとは思います。気に入られたのなら中古品になりますが、貰って下さい。」

 

 値段がわからないが他に並んでいる商品の値段は高すぎて気が引ける。これならバータックさんの言葉を信じて、少しでも安いと思えるので決めることにした。そうでもしないと、いつまでも帰してもらえなさそうだった。

 

「じゃ、これを頂きます。」

 

「それでは早速装備してみて手直しするところが無いか見て見ましょう。」

 

 そう言うと、バータックさんは他の店員さんを呼出し、僕の装備の手伝いをするように指示した。僕は自分で出来ると遠慮したが、店員さんは何故か若い女の子が2人きて、遠慮して逃げ出そうとした僕を、あっさりと捕まえて楽しそうに僕の着替えの手伝いをしてくれた。バータックさんは僕のそんな様子を見ながらいつものニコニコ顔で待っていた。…そんなバータックさんに少し怒りを覚えた。

 

 装備してみるとサイズが自動で調整されて、全く違和感がない。コートを羽織っても、暑くもなく快適な温度になっている。これはやはりかなり高価な品かも知れないと思いバータックさんに返そうと思ったが、先に返さないように釘を刺された。

 

 バータックさんにお礼を言い、冒険者ギルドに向かうことにした。

 

 

 

 

 

 追記

 

 ある店員がバータックに話し掛けてきた。

 

「オーナー宜しかったのですか? あの装備で小さなお城が領地付きで買えますよ。しかも、使われている素材だけでなく掛かっている魔法や製作の技術の事を考えるとそれ以上の価値があります。」

 

 バータックは静かに答えた。

 

「良いんだ。私達の命の恩人であり、そして私の目に狂いが無ければ、歴史に名を残す程の活躍をするだろう。そんな人物が家の装備を使っているとなれば、これ以上の名誉はない。」

 

「私にはわかりかねますが、オーナーがおっしゃるなら間違いはないでしょう。」

 

 ある店員は理解出来ないがオーナーの言葉には絶対の信頼を寄せている為、納得はした。

ここまで読んで頂き、ありがとうございます。


投稿が遅くなってすみませんでした。


これからも続きを書くのでよろしくお願いします。

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