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物語から伝説へ  作者: 愚者の夢
三章
16/32

三ー弐話・・・・・冒険者ギルドに

 …僕達はその場を出発した。

 

 少し行くと、目的地であるバータックさんに家に着いた。思っていた大きな家ではなく、普通より少し大きいくらいの家だった。

 

「期待はずれでしたかな?」

 

 バータックさんが僕に話しかけてきた。

 

「いえ、そんな事は…」

 

「いや、いいですよ。思ったより小さな家でしょう。実家から独立して自分の稼ぎで建てた初めての家ですから。色んな思い出の詰まった私の城ですよ。」

 

 バータックさんは誇らしげに語ってくれた。僕は納得し、家を眺めているとリリアが僕達を呼んだ。

 

「サークさん、お父さん早く中に入りましょう。あ! お父さん荷物忘れないでね。」

 

「私の方が後か…それに荷物持ちか。」

 

 バータックさんから哀愁が漂ってきた。

 

「年頃の娘にとってやはり父親より恋心の方が優先か。」

 

 バータックさんの呟きに寂しそうに聞こえたので

 

「バータックさん、僕が荷物を運びますよ。」

 

 そう言って、馬車から荷物を家の中に運び込んだ。

 

 それから、暫くして夕ご飯の準備が出来て各料理がテーブルに並べられた。各料理は家庭料理で派手さはないが、食欲を誘ういい匂いがしている。

 

「へ~凄く美味しそうだね。食べるのが楽しみだね。」

 

 バータックさんも料理をみて感想を漏らした。

 

「いつもより美味しそうだね。サークさんの為に頑張ったのかな?」

 

 リリアは照れながら、バータックさんの背中を叩いた。

 

「やだ、お父さん。いつもこれくらい作っているでしょう。さぁ、席について食べましょう。」

 

 皆が席について、食事を始めた。

 

「「「「いただきます。」」」」

 

 僕は近くの皿に盛り付けている料理を、自分の皿に小分けに取り、味わいながら食べた。食材の味を上手いこと引き出し、何時も食べたい正に家庭料理の極みと思える味付けがしてあった。他の料理についても同じく毎日食べられたら、幸せだと思える味だった。

 

 リリアは自分は食べずに僕の食べる姿をジッと観察していた。

 

「…サークさん、お味はどうです?」

 

 真剣な表情で僕に聞いてきた。

 

「ああ、とても美味しいよ。感想が遅くなってごめん。どれも美味しかったから夢中になってしまって。」

 

 僕の感想を聞いたリリアは笑顔になった。

 

「いいえ、食べる邪魔してすみません。お世辞でも美味しいて言って貰えて、よかったです。」

 

 僕はすぐさま否定した。

 

「お世辞じゃないよ。こんな美味しい料理は毎日食べたいくらいだよ。」

 

「それじゃ、私いつでも作りますよ。それこそ毎日でも作ります。」

 

 僕の言葉にリリアはテーブル上に手を付いて乗り掛かる様な勢いで答えた。

 

 アイシャも負けじと自分の作った料理を勧めてきた。

 

「このサラダ、わたしが作ったの~。サークお兄ちゃん食べてみて~。」

 

 サラダを受け取り、一口食べてみた。

 

「うん、これも美味しいね。アイシャは立派なお嫁さんになれるね。」

 

「わ~い、褒められた~。」

 

 その後も楽しく会話をしながら食事をした。

 

「「「ごちそうさまでした。」」」

 

「おそまつさまでした。」

 

 食事が終わり、後片付けをするリリアの手伝いをしようと食器を台所に運んだ。

 

「サークさんは休んでください。後片付けは私がしますから。」

 

「いや、手伝うよ。美味しい料理を食べさせてもらって何もしないのは気が引けるからね。」

 

「そうですか。ならお願いします。」

 

 僕とリリアが一緒に後片付けをしていると、バータックさんが僕達に声を掛けてきた。

 

「なかなかお似合いだね。新婚さん。」

 

 ガッシャーン!

 

 リリアは持っていたお皿を滑らして、床に落とし割ってしまった。

 

「お・お父さん! いきなり何言ってるの!」

 

「バータックさん! からかうにしても、もう少し考えてください。」

 

 僕は落として割れたお皿の破片を拾いながら言った。

 

「ごめん、ごめん。あまりにも自然に似合っていたから、つい言ってしまたんだ。」

 

 バータックさんの態度はあまり申し訳無さそうにしていなかった。

 

「リリアも年頃の女の子ですし、この手のからかいは可哀想ですよ。」

 

「リリアはむしろ喜んでいると思うけどね。」

 

「お父さん! 余計なことは言わないで。」

 

 リリアの一喝でバータックさんは肩をすくめ、台所から回れ右をし去ろうとした。

 

「あ~そうそう、サークさん後で話があるので時間もらえますか?」

 

「はい、わかりました。この後で行きます。」

 

「では後で。」

 

 片付けは程なく終わり、僕はバータックさんの部屋を訪ねた。

 

 コンコン

 

「バータックさんいますか? サークです。」

 

「どうぞ、鍵は開いています。」

 

 中に入ると、いつのニコニコ顔で過ごしているバータックさんではなく、真剣な表情で僕を見つめているバータックさん待っていた。

 

「お話というのは?」

 

「今回のライオウの件で改めて御礼を言います。ありがとうございました。」

 

「お礼なら、何度も聞いていますよ。どうしたんですか?」

 

「他の仲間たちには申し訳ないが、娘達だけでも助かってほんとに良かったと思っているのです。私の妻は早くに死に別れたんですが、その妻の最後に何があっても娘達は守るって約束をしました。今回は貴方がいなければ、私達は全滅してました。それを貴方は救ってくれたのです。何度御礼を言っても、何を差し上げても、私の中では報いることが出来ません。けれどせめて何かしなければ、私の気持ちが納まりません。私に出来ることで何かありませんか?」

 

 バータックさんの思いを理解したが、僕自身はそんなに大げさな事をしたつもりはない。

 

「そんなに気にしないで下さい。小さな子が転んだら、手を伸ばす。物を落とした人がいれば、拾ってあげる。困っている人がいれば、助けてあげる。そんな当たり前の事をしただけですよ。内容に大小はあったかもしれませんが。」

 

 僕も真剣に自分の思いを答えた。

 

「わかりました。でも、せめて何か御礼の品を贈らせてください。護衛代の10Gだけというのは心苦しいですから。」

 

「ええ、楽しみにしておきます。」

 

 ここで受け取りを拒否するのも気が引けるので、素直に受け取るようにした。

 

 …時間も遅くなってきたのでこの日は案内された客室で休んだ。

 

 翌日の朝、僕は下宿先になるグレンバッハさんの家を訪ねる為に出掛けようとしたが、バータックさんに呼び止められた。僕がさえ良ければ、この家に住まないか聞いてきたが、下宿先が決まっていることを伝えた。バータックさんは残念そうにしたが、すぐにいつもの表情にもどり、僕の予定を聞いてきた。

 

「サークさん、今日の予定はどうなっていますか?」

 

「予定というほどでも無いですが、お世話になる方に挨拶しに行くのと、あと冒険者ギルドの登録をしに行こうと思っています。王都は初めて来たので町の地理が分からないから時間が掛かるかもしれませんが…」

 

 バータックさんはちょうど良いと言いながら

 

「私も冒険者ギルドに用事があるので、一緒に行きましょう。ギルドへの登録ならお昼までに終わると思うので、皆で昼食を食べましょう。その後でリリア達に王都の道案内をさせますから。」

 

「ありがとうございます。けれど、そこまでして貰わなくっても…」

 

 僕の話も聞かずに、バータックさんはリリア達に出掛ける用意をする様に言いに行った。王都は住んでいた近くの村や立ち寄ってきた町とは、比べものにならないぐらい発展した町並みになっていた。メインとなる大通りはもちろん、主だった通りは平らに舗装され、レンガが引き詰められており、馬車などの車輪が滑らかに進む。通りに面した建物は全てレンガ造りで統一感のある美しい町並みである。そして、街の中心には湖と言えるほど大きな堀に囲まれたお城が優雅に佇んでいる。その姿は見るものに感動を与える。

 

「サークさん! お城が見えましたよ。」

 

 リリアが色々と説明してくれていたが、お城は別格のようで少し興奮気味である。

 

「うん、見えているよ。真っ白なお城は綺麗だね。」

 

「はい。私たちの誇りです。それにお城のお姫様はと~っても綺麗な方なんですよ。」

 

「リリアはお姫様を見たことがあるの?」

 

「お祭りなどの行事の時に遠くからでしたが拝見させてもらいました。」

 

「わたしも見たよ。すごくかわいかったよ~。わたしもあんな風になりたいの~。」

 

 お姫様の話で馬車の中は一気に騒がしくなった。僕はセシリアの近くまで来たが、あくまでも物理的な距離であって、立場や地位はまだまだ離れたところにいる。


 出発前に父さんにどうすればセシリアの手助けが出来るか相談したら、あっさりと無理だといわれた。そもそも、お城に勤める方法自体が少ない。文官か武官になるか、兵士となるかしかない。前者は貴族やコネクションがなければ先ず無理である。後者では地位が低くて一生掛かっても王家の方に謁見できないだろう。戦などでよほど大きな功績などを挙げなければ、平民である僕にとってセシリアは手に届かない存在であった。父さんから聞いた例外は、高位の冒険者になることだ。高位の冒険者にはお城からに依頼があり、功績が認められれば、士官の採用もあるそうだ。

 

 僕はその話を聞いて、冒険者ギルドに登録をしようと思った。冒険者になれば、困っている人の依頼をこなし、笑顔を取り戻してもらう。小さな事かもしれないが個人の笑顔が集まれば、皆が笑顔になる国になる。

 

「…クさん、サークさん、着きましたよ。」

 

 僕は呼ばれる声に気が付き、辺りを見回した。正面にはかなり大きな建物があり、看板には冒険者ギルドの文字。周りは様々な防具や武器の持った人々が行き交っている。

 

「ここが冒険者ギルドですか。思っていたより大きな建物で驚きました。」

 

「ここは王都の冒険者ギルドであり、この国の冒険者ギルドの総本部でもありますから、大きな建物が必要となるのです。私は二階にあるクエストセンターにこの前の依頼の報告に行ってきます。その間、リリア達をお願いします。確かギルド登録は三階で受付をしていたと思うので一緒に連れて行ってもらえませんか?」


 僕はバータックさんが前のライオウの件を報告に行くと聞き、リリア達が一緒について行くと、あの時の恐怖を思い出すかも知れないので、付いて来ないように僕に任せたことはわかったので

 

「わかりました。でも、登録はリリア達が付いてきても大丈夫ですか?」

 

「ええ、大丈夫ですよ。あ! そうだ、これを持って行って下さい。」

 

 そう言うと、バータックさんは紙とエンブレムを渡してくれた。僕は不思議そうに見ていると、説明してくれた。

 

「これは、紹介状と私達のギルドのエンブレムです。登録の際に身元確認があるので、これを出してもらえば問題ないはずです。」

 

 僕は納得し、懐にエンブレムをしまった。

 

「ありがとうございます。少しの間お借りします。リリア、アイシャ建物の中を案内してくれるかな?」

 

 リリア達に向って、声を掛けてギルドの中に入っていった。

 

 冒険者ギルドの建物は四階建てで、一階が食堂兼酒場、二階が仕事を斡旋するクエストセンター、三階が登録などの事務処理を行うオフィス、四階は総本部として分かれている。

 

 僕達は三階を目指して階段を上がっていく。

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