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物語から伝説へ  作者: 愚者の夢
二章…王都に向かって
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二ー肆話・・・・・ライオウとの戦い 後半

 …僕の意識は覚醒し始めた。


 僕の目の前には、ボロボロに傷ついたライオウ達が、諦めた目でこっちを見ている。そして、リリア達の方を見ると、アイシャは一瞬、何か脅えた様だったが、僕に一生懸命に喋りかけてきた。


「その大きな猫さんはお父さんとお母さんなんだよ。ロロア君達が子猫さんを虐めたから、怒ってきたんだよ。」


 今までアイシャは、僕に殆ど喋ってくれなかったが、この時ははっきりと、言葉を告げた。


「サークお兄ちゃんも、虐めたらダメー!」


 僕は今の状況を整理してみる。取り敢えず、ライオウ達は傷付き、戦えるほど動けないみたいだ。そして、どうやったか分からないが、僕がやったみたいだ。そして、リリアとアイシャは無事だった。バータックさんは先程跳ね飛ばされた所から動いていない。バータックさんの元に駆け寄り、安否を確認したがかなり危険な状態だ。バータックさんを抱えて、リリア達の元に移動させた。


「「お父さん!」」


 リリア達はバータックさんの元に寄り、声を掛ける。


「う・・うぅぅっ」


 僕はリリア対して、一つ質問した。


「リリア、君は回復魔法が使えるかい? 使えるならバータックさんに掛けて。」


 リリアはハッとし、慌ててバータックさんに魔法を掛けようとした。


「ああ! お父さん、ごめんなさい! …癒しの水よ、彼の者の傷を癒し給え。」


 バータックさんの顔が穏やかになっていく。


 僕は今一つの判断をしなければいけない。


 傷付いたライオウ達をどうするか? 皆の仇として討つべきか、それとも見逃すべきか。


 確かに皆はライオウ達に無残にも引裂かれ、殺された。しかし、此方が先にライオウの子を虐待して、親を怒らせた。ライオウの生態は、家族愛に満ちていて自らが訳も無く、他の生物に攻撃を仕掛けてこない。そのことを考えると、攻撃される理由はあったと思う。だが、たとえ出会って間もなかったとしても、自分の仲間達が殺されて、しょうがないとは割り切れない。


 僕は何が正しく、何が間違っているか、迷いに迷った。


 最初に虐待した側、虐待の報復で惨殺した側、殺された敵討ちする側…


 この様な負の連鎖は何処かで断ち切らなければ、何処までも続き不幸な結果しか生まない。僕は自分の考えだけでなく、リリア達にもどう考えるか確認を取ってみる。


 僕はこのままライオウ達を見逃す、いや和解するべきだと思う。


「リリア、アイシャ、君達はライオウ達をどうしたい?」


 リリアは事情を聞いて複雑な顔になって答えた。


「わたしは…皆の仇を討ちたいと思う気持ちと、わたし達が先に手を…わたしは…どうすれば…」


 リリアは最後に涙を浮かべ、言葉を詰まらせた。アイシャはリリアに抱きつき、声を掛けた。


「お姉ちゃん、泣かないで。わたしも…」


 アイシャも涙声になり、声を詰まらせた。僕は後悔をした。二人の姉妹を泣かせてしまった事に。そして、安易に二人に聞いたことに。僕は気付いた。僕の中で無意識に罪から逃れようとしてしまった。


 二人の思いを聞いて判断するは二人の意見を尊重するのではなく、単に責任を押し付けているに過ぎない。


「ごめん…」


 僕は二人に謝った。そして、僕が全てを背負う覚悟をした。


「ライオウ達とはこれ以上争わない。もちろん、皆の仇も取らない。」


 リリアは少し落ち着きを取り戻し、聞いてきた。


「でも…」


 僕はその言葉を遮り


「皆の死は残念で悔しい。しかし、こちらにも非がある。薄情に聞こえるかもしれないが、不の連鎖を何処かで止めないと、争いが絶えない。残された家族や友人の方に憎まれ、非難されると思うが、これが僕の決めた事だよ。」


 僕は二人の目を見て


「僕はこの事から逃げない! 後からいくらでも、非難を、憎しみを受ける。だから、ライオウとは戦わない。」


 僕はこれ以降の覚悟を決め言い切った。リリアは力なく小さな声で答えてくれた。


「…はい。」


 それを確認し、僕はライオウ達の元に行く。ライオウは人語を理解するほどの知力はあるので、言葉を掛ける。


「ライオウよ、今回の件は此方の子供達が原因となり、申し訳ない。今回はこの辺で引き上げてくれないか?僕もこれ以上争う気は無い。」


 ライオウ達は、先程まで纏っていた怒りを表す雷を解除している。


「ガウッ」


 小さく吼え、返事する。


「しかし、これだけは覚えておいてくれ。貴方達が家族を思って怒りに狂うように、今回殺された人にも悲しみ、憎しみを思う人がいることを。」


 ライオウは自分の前脚に牙を立て、傷付けた。そして其処から流れ出た血が結晶となり、差し出してきた。それは、【ライオウの結晶】と呼ばれ、高価な宝玉であり、又ライオウの忠誠を表す物であった。


「これは、お詫びの気持ちなのか?」


 ライオウは首を横に振り、否定してきた。


「なら何故、これを僕に渡す?」


 手に持った結晶をライオウに返そうと伸ばすと、ライオウは僕が受け取るように、手を押し返した。


「僕に持っておけと言うのか。」


 ライオウは肯定の意味で首を縦に振る。


「分かった。ではこれは預かっておくよ。」


 そう言うと、ライオウ達はゆっくりと森の奥に去って行った。


 ◆ ◇ ◆ ◇


 追記


【ライオウの結晶】


 …世界でも数の少ない宝玉であり、魔力増強媒体となる。


 真紅の球体の中に雷が絶えず舞っている。


 結晶を作ったライオウが死ぬまで壊れることが無い。死ぬと中の雷が消え、硝子玉程度の強度なる。


 ライオウ達の世界で上下関係をはっきりさせて、無駄に争わないそうにする為の物であると考えられる。


 又、言い伝えによると、はるか昔に傷付いたライオウの子を、助けた小さな女の子が結晶を貰い、大切に持っていた。大人になり平和に暮らしていたが、ある日突然自分の町が戦火に巻き込まれた。町の外に数万の敵兵に囲まれ、これまでと思われたときに数体のライオウが敵兵を退けた。その内の一体が女の子の元に行き、安否を確認し去っていった。その後もその町が危険に曝された際にはライオウが度々救ってくれたという。

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