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「あの日」
あの日の午後、
僕は□□の駅から○○線に乗り込んだ。
土曜日の昼間のためか、
何故か車内はがらがらだった。
でも、僕は恰好をつけて、
座席には座らないでドアのそばで突っ立っていた。
しばらくして、
ふと右の方をみると、
一つ先のドアのそばで同じ様に立っている人間がいた。
20代前半くらいに見えるすらりとした小柄な女で、
目鼻立ちの整った美人だ。
最初、
僕は
『いい女だな。』
と思ったくらいで、
たいして気にもとめなかった。
でも、
彼女がしきりにこちらに視線を投げかけるので、
僕は彼女のことが気になりだした。
そのうち、
僕はその顔に見覚えがあるような気がしてきた。
そこで、
僕はその女の顔を凝視した。
彼女も同じことを考えたのかこちらをじっと見た。
刺すような鋭い視線で。
僕らは数秒間見つめあった。
この瞬間、
僕は15年前のあのときを思い出した。