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「愛と決意と」
「どうだった?」
「まあまあね。
素人ならこんなもんよ」
「それだけ?
他に感想がないの?
遠慮しないで、はっきり言ってくれよ」
彼女は、
僕の問いには答えず黙っていた。
僕の方もこれ以上何も言わず、
彼女が答えるのをじっと待っていた。
沈黙が続いた。
それでも僕は何も言わなかった。
僕はただ彼女の答えを待っていた。
だって、僕は……。
吉野とは違う。
打算的な結婚なんてできない。
結婚する以上は本当に好きな人と結婚したい。
ずっとそう思っている。
そして……。
僕が本当に愛したのは……。
僕が本当に愛した、
彼女はどこかに行ってしまった。
だから、
30近くになっても僕は独身でいた。
そんな僕が、
ある日、
彼女をモデルにした小説を書くことを決意し、
仕事の合間を利用しては少しずつ小説を書いた。
でも、
小説を書くのは初めてなので、
思った以上に苦労した。
たいした文章でもないのに、
400字程度書くのにも数日かかる有様だった。
そんなとき……。
忘れもしない、
××**年7月1日!
僕は……。