「由美の話4」
由美は珍しく饒舌に話し続ける。
「その後、
私たち、お茶を飲みにいったの。
そこで、結構長く話をしたのよね。
あなた子供のころの話をしてくれて、
私を退屈させなかったわ。
そして、
時計を見たら、もう11時近くになっていたの」
「ふーん、良く覚えているね」
「それから、
まだ、電車もあるのに、
タクシーで私を送ってくれたわ。
それで、
私のアパートの前に着いたので、
そこで、
別れようとしたの。
そしたら、
あなた、
『部屋どこ?』
って聞いてきたのよ。
私、黙って、2階の私の部屋を指差したわ。
そしたら、
私が降りると、
あなた、
タクシーから一緒に降りてきて、
私の荷物を持ったままアパートの階段をあがり始めたのよ。
その時、
『この人、部屋にくる気かしら?』
って心配になって、
あなたを後ろから見ていたの。
そしたら、
あなた、
階段を足音を立てないようにしてそっとあがっていったの。
私の知っていた男なんか、
夜中でも、
どたどたと大きな音を立てて階段をあがっていたのよ。
私が
『他の人に迷惑だから静かにあがって』
と言ってもいうことを聞かないで」
「誰だよ?その男」
「いやーねえ。あなたの勘違い!
一人で来たんじゃないわよ。
何人かで遊びにきたの」
由美はそんな言い訳をした。