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「由美の話3」
吉野はそんな由美の言葉に、
「ひどいこというな」
「まあ、怒らないで聞いてよ。
それで、私たち食事を終えたけど、
まだ別れるには時間が少し早かったのよね。
だから、
私
『ショッピングでもしたい』
って言ったの。
本当なら、
最初のデートだから飲みに行くとか、
まあ、
せいぜいどっかでお茶を飲むのが普通だけどね。
だけど、
私その時なぜかむしょうにショッピングしたかったの。
だから、
嫌な顔されてもいいと思って正直にそう言ったのよ。
そしたら、あなた、腕時計を見て、
『まだ、この辺の店はやってるな。なに買うの?』
と言って、
黙って私の買い物に付き合ってくれたの。
そして、
私の服も選んでくれたのよ。
だから、
荷物になるくらいたくさん買い物しちゃったわ。
おまけに、
ちゃんとしたブランドの路面店で値切ろうとまでしたのよ。
私、あの時は恥ずかしかったわ。
でも、何故か悪い気はしなかったの」
由美は懐かしそうに話した。