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「チャンス到来」

 

暫くして、

思いがけないことが起こった。

新しいクラスで仲良くなった池田

という男と一緒に下校したときのことである。

 突然、池田が、

 「おい、A組の樫、知ってるだろ?」

と尋ねてきたのだ。

 吉野はぎくっとした。

自分がサクラナに惚れていることを悟られていて、

そのことで冷やかされるのではないかと思ったのだ。

 そこで、吉野は、  

 「いや、知らないよ」

 とぼけた。  

 「ほら、髪の長い綺麗な子だよ。知らなかったのかよ。

性格は悪いって噂だけど、美人で有名なんだぜ。

よくA組に行っているから、知ってると思ったけどな」

 「あれ、それじゃあの子かな。

すらっとした小柄な子で、

目つきのきつい子かな」

 「それだよ。その子が樫サクラナというんだ。

おまえも目をつけていたのか?」

 「えっ、何のこと?おれは別にそんな奴気にしていないよ」

 吉野は最初にサクラナを知らないと言った手前こう言うしかなかった。

しかし、

池田が


『おまえも』


と言ったことから、


池田も彼女のことを好きなことがわかったので、

 「もしかして、おまえ彼女好きなの?」

と問い返した。

 「うん。一目惚れてやつかな。

 でも、ライバルが一人増えなくてよかった」

 池田はそう言うと、サクラナのことを話した。

 サクラナの家は母子家庭で、

 しかも、

 サクラナは3人姉妹の長女で、

 妹二人がまだ小学校一年と二年と幼いため

サクラナがうちのことをしなければならず、

 サクラナは大変苦労しているとのことである。             

 「ところで、頼みがあるんだけど、

聞いてくれるか?」

 「なんだよ?おれにできることか?」

 「うん。

 樫の写真を貰ってきてほしいんだ」

 「えっ。おれが?なんで?

樫なんて知らないと言ったじゃないか」

 「おまえは知らなくてもいいんだよ。

 彼女のところへ行って、友達が写真を欲しがってる

と言って写真を貰って来てくれればいいんだ。

 おれが頼むのは恥ずかしいんだ。頼むよ。

 友達だろ」

 「えーっ。嫌だな」

 と言ったものの吉野はまんざらでもなかった。

 樫と話すきっかけができたからだ。

 「頼むよ。一生の御願い」

 そう言って、池田は両手を合わせた。

吉野はしばらく考えたあとこう言った。

 「しょうがないな。わかったよ。

明日彼女に頼んでみるよ。断られても知らないよ」

 「やったー。じゃー今日はお礼にアイスでも奢るよ」

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