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「罪悪感と疑問」



 入院中、

当初はサクラナのことが気になっていた。


 『もしかしたら、

あの白髪の女はサクラナではなかったかもしれない』

とも思っていた。

 しかし、

 時が経つにつれ

 吉野はそれ以上のことを考えなくなった。

 サクラナのことを考えるのが怖かったせいもあったが、

 それ以上に、

 サクラナのことを考えるのは由美に悪いような気がしてきたからだ。

 吉野は病院での由美の看病振りから、

 いや、

 意識を取り戻したときに見た由美のあのやつれ果てた顔から、

 由美が自分のことを本当に愛していることを感じとった。

 これは吉野にとって思ってもいないことであった。

 吉野は由美も自分が由美に対して思っていた

と同様に単なる結婚相手としてしか自分を見ていない

と思っていたのである。

 だから、

 これまでは

他の女のことを考えることに躊躇を覚えなかったのである。

 しかし、事故後は状況が変わった。

 由美に愛されているという意識が、

由美以外の女のことを考えることに

罪悪感を抱かせるようになったのである。

 その一方、

 何故由美が自分を愛するようになったのかが

気になりだした。

 吉野には由美が自分を愛するようになった理由に

まったく心当たりがなかったからである。

 吉野は一目惚れされるほどの美男子ではないし、

 由美に対し特に優しくしたという覚えもない。

 また、

 吉野には数度のデートと数か月の生活をしたくらいで

人を愛せるとはとても信じられなかった。

 だから、

 吉野からみれば

由美が自分を愛するなんて考えられないことだったわけである。

 こうして、

 吉野の頭には絶えず


“由美が何故自分を好きになったのか”


という疑問がつきまとうこととなった。

 実際、

 由美に直接聞いてみれば

その疑問はただちに解消されるわけだが、

 いまさら吉野の方からそんなことを聞くのは

おかしなものであったので、

 吉野の方からはそれを聞くことはできなかった。


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