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「再会?2」
「やー。久し振り」
しかし、
彼女は吉野の顔を
きょとんと見つめるだけで返事はしなかった。
「おれだよ。忘れたのか?吉野だよ」
彼女は首を傾げ、
「あのー、
どちらの吉野さんですか?」
と真面目な顔で尋ねた。
丁寧な言葉だが、
その声はサクラナの声にそっくりだった。
「冗談だろ。
おれだよ。
まだ、
あの時連絡しなかったこと怒っているのかよ」
吉野が少し興奮ぎみに喋りはじめたとき、
首に巻いたマフラーが引っ張られるのを感じた。
吉野はその方向を見た。
顔こそ良く見えないものの、
車椅子に座った白髪の老婆らしき人間が
マフラーを引っ張っているのがわかった。
「だめよ。そんなことしちゃ」
サクラナらしき人物がその女をたしなめているとき、
吉野はサクラナと思い込んでいた人物の顔をじっくりと見た。
そして、愕然とした。
『ない。右目の下の黒子がない。
ここにいるのは、サクラナじゃない』
吉野が動揺していると、
また、
マフラーが引っ張られた。
「だめ。ほら、だめよ」
それでも、老婆は引っ張るのをやめなかった。