「サクラナと湖畔でのデート3」
「この四角いおにぎりは梅干し、
その丸いのはしゃけ、
三角のはすじこ。
左の方のサンドイッチはハム、
真ん中はポテトサラダ、右は卵。
そいで、
この赤い水筒にはお茶が入っていて、
白い方はオレンジジュース。
どれでも好きなの選んで」
「どれから食べようかな?
じゃあ、まず、これにしよう」
吉野は早速ポテトサラダ入りのサンドイッチを取る
と頬張った。
サクラナは吉野の様子をじっと見つめながら、
「どう?」
と尋ねた。
「うまい」
「本当?」
「食べてみなよ。おいしいから」
吉野は
まるで自分がそのサンドイッチを作ったかのように
そう言った。
サクラナは吉野の言葉を聞くと、
吉野と同じポテトサラダ入りのサンドイッチを取り口に入れた。
「本当、おいしい」
サクラナは嬉しそうに笑った。
吉野も笑った。
吉野はそのサンドイッチをたいらげると、
「うまい。うまい」
と言いながら、
次々と目の前の食べ物を食べあさった。
まるで、
欠食児童のように。
気がついてみると、
目の前の食べ物はなくなっていた。
御腹が空いていたせいもあっただろうが
何よりサクラナが5時に起きて作った
ということがあのとき吉野をして
ああもおいしく感じさせたのであろう。
「あまると思っていたのに。
全部なくなっちゃった」
あのときの嬉しそうなサクラナの笑顔を
今も忘れられない吉野であった。