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「サクラナの家」
その1階はサクラナの母親がやっている
という飲み屋になっていて煤けた暖簾が下がっていた。
その2階はサクラナの住まいだが、
外からみる限り部屋が二つ在れば良いというくらいの広さで、
2階の窓の一つは硝子が割れたままで
内側から新聞紙が貼り付けられていた。
「ありがとう。
本当なら家に寄ってもらうのがいいんだけど、
見ての通りのボロ家だから」
「そんなの気にしないでいいよ。
じゃあ、また」
「本当にありがとう」
吉野はサクラナに
そういわれて帰ろうとしたが、
足が動かなかった。
サクラナのほうも家に入らず、
吉野の方を見ていた。
「ねえ、明後日ひま?
良かったら、○○園に遊びにいかない?」
吉野は軽い感じで誘った。
「いいよ。何時に待ち合わせる?」
サクラナは
意外にもあっさりとO・Kしたのだった。