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「旧友との再会」
彼は近くのシーバル
という喫茶店に彼女を連れていった。
シーバルに着くと、
早速、吉野と弘子は近況を報告しあった。
相手が男ならこの後酒でも飲みながら
昔話に花が咲くことだろうが、
女が相手ではそうはいかない。
特に弘子の場合には。
弘子は一昨年結婚したという男の話をした。
その男が、一流大出身で、
某都市銀行に勤めているとか、
月収が100万だとか、
そんなことばかり彼女は話していた。
だが、
吉野にとっては
そんなことはどうでもよいことだった。
吉野が話したかったのは、
昔のこと、昔の友達のこと、
特にサクラナのことだつった。
しかし、
そんな吉野の思いとは裏腹に
弘子はひたすら今の彼女の生活、
そして、その夫について語り続けた。
そのうち、吉野は弘子の話しに相槌をうちながら、
サクラナのことを考え始めていた。